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JPDA権利保護委員会
Vol.3「デザイナーの権利」 2009年8月25日 委員長 丸山和子
担当理事 時田秀久

今回の情報発信
意匠権は製品を保護する事が目的のため、どちらかと言えば、企業の方を向いているように感じていました。でも、創作者(デザイナー)の保護にも、きちんと対応しています。せっかくの制度を有効活用するためには、何を変えていければ良いのか・・・。著作権と意匠権を対応させつつ、意匠権におけるデザイナーの権利をテーマにした川崎芳孝氏の寄稿をお届けします。


  著作権と意匠権における「デザイナーの権利」

特許庁審査業務部意匠課・課長 川崎芳孝

 これまでの関堂先生、丸山委員長の発言を受けて、もう少しデザイナーの権利について考えてみましょう。
 人が著作物を創作したとき、老若男女を問わず著作権が自然発生し、その人には、著作者人格権として氏名表示権(著作権法第19条)を有することは皆様ご存じのとおりです。
 それでは、人が意匠法の対象となるパッケージデザインを創作したとき、その人には、どのような権利が生じるでしょうか。

 意匠法では、著作権と同様に創作をした時点において、特許庁への出願手続等をせずとも創作者に「意匠登録を受ける権利」が自然発生します。もちろん、特許法においても「特許を受ける権利」が生じます。
 皆さん、この権利を聞いたことがありますか?
 実は、この権利は、デザイナーにとって大変重要な権利なのです。
 なぜならば、デザイナーがクライアントから受け取るデザイン料には、納品したデザインに関する「意匠登録を受ける権利」を譲渡した対価も一般に含まれているといえるからです。
 このように、創作者に自然発生する「意匠登録を受ける権利」は、著作権と同様に他人に譲渡できる財産権だということを意識すべきです。
 ただし、この「意匠登録を受ける権利」は、著作権とは違って模倣品に対し、差し止め、損害賠償等することができませんので注意が必要です。

 次に、著作権法に規定される「氏名表示権」は、意匠法ではどのように考えられているのでしょうか。
 実は、特許法、意匠法等に大きな影響を与える国際条約、すなわち、一般に「パリ条約」と呼ばれる国際条約に、以下のような規定があります。
「発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する。」(パリ条約第4条の3)
 この規定は、特許法を念頭においた記載ですが、もちろん意匠法等にも適用されています。  
 この条約の規定に基づき、意匠法施行規則では、「意匠登録証には、次に掲げる事項を記載しなければならない。」(第16条)とされ、その中の第4号で「意匠の創作をした者の氏名」を記載しなければならないと規定されています。
 ここで、重要なことは、デザイナーの創作したデザインについて、「意匠登録を受ける権利」をクライアントに譲渡したとしても、創作者の氏名は譲渡されない、ということです。 
  これは、著作者人格権は譲渡できない、という考え方と同じといえます。
 実際の意匠登録証の写真ご覧いただければわかるとおり、「意匠権者」の欄には、クライアントの名前が記載されますが、「意匠を創作した者」の欄には、デザイナーの名前が記載されています。もちろん、意匠公報にもデザイナーの名前が記載されています。

 個人的には、市場に出る商品のみならず、商品の広告、パンフレット、ホームページ等にも、意匠登録番号とともにデザイナーの名前を表記し、創作者を尊重する商慣行が広く浸透することを望んでいます。

【意匠登録証】サンプル
赤矢印が意匠を創作した者の欄
※画像をクリックすると「意匠登録証」の
 拡大画像が表示されます。
【意匠公報】サンプル
赤矢印が意匠を創作した者の欄
 


読者のご意見

この委員会のページに、広くご意見をとお願いしましたところ、早速いただく事ができました。お寄せ下さいました、ご本人の了解の元に掲載させていただきます。様々なお考えが、このページの上に積み重なって行くことを、そしてご意見の交換も進めて行ければと思います。

  権利保護委員会Vol.2のページを見て

東日本個人会員・宮地睦明 2009年8月11日

 パッケージデザインが著作物とみなされること が難しい、意匠権で保護すべきとの特許庁審査業務部意匠課・課長 川崎芳孝 氏のご意見でした。
「全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっている」のかどうかが論点とのご指摘ですが、現場を預かるものとしてそのまま受け入れるには抵抗があります。
 ファービー人形の場合にしても、量産されたなかの一つに著作物としての価値があるかどうかと問われれば我々も「それはないでしょう。」といわざるを得ないのでしょうが、キャラクターデザインとしての、たとえば原画などは著作物ではないでしょうか。
 ではイラストはどうか?パッケージに使用されている毛筆のロゴはどうか?
 有名書家が書いたロゴには著作権があり、一般の無名の書家が書いたものは著作権を認めないというのでしょうか?
 写真はどうでしょうか? パッケージ用に取られた写真に限って著作権はなく、カメラマンが趣味で撮った写真には著作権が生じるという矛盾が見えてきます。
 それらを統合して創作するもっともクリエイティブな作業を担うデザイナーの作品が著作物ではなく、それらを構成するエレメントを作ったスタッフ(いわば助っ人役)のほうには著作権があるという 矛盾に納得がいきません。
 以前、読んだことのある著作物の定義の中で「たとえ落書きであってもその絵(作品)が(社会的な)価値を生むかもしれない、という点から、それは著作物である」という記述を見たことがあります。
 そこで、パッケージデザインを教えている学生には、「日常で生まれるなにげない作品にもその作品が生まれた瞬間から著作権が生じる。だから大切に!」と教えてきましたし、創作活動という行為はそれほど貴重で尊いものであるということを伝えてきました。

 今回の内容はデザイナーを志す若者にとって酷な宣告です。我々がもっと働きかけていかなければならない問題ということが判ってきました。
 また、企業と交わすパッケージデザインの契約書には、どれを見ても堂々と著作権云々と書かれています。
 これはどういった考え方が基になっているのでしょうか? 今回の内容での解釈によると、デザイナーとクライアントが著作権について契約を交わす必要はなく、そこで使われている有名人によるロゴや写真やイラストについてのみ著作権問題が生じることになりませんか?
 クリエイターの皆さんで、パッケージデザインのみならず、デザインの著作権の獲得に努力していきましょう。
 


編集後記

JPDA権利保護委員会では、デザインを巡る法的保護整備の現状の理解と、実際のデザイン現場での問題点の掘り起こしを並行して勉強していく事で、望むべきデザイン・デザイナーの保護の在り方を見つけていこうとしております。
このページは、短絡的に著作権を求めるために設定したものではなく、知財権を理解し現状から未来を見るための、方向のコンパスになって欲しいと立ち上げたものです。
確かに創作する側として、著作権による保護を求めたい場合が多々有ります。そのためにも、まず著作権の正しい認識が必要だと思われます。併せて意匠権における「デザイン創作者の意匠登録を受ける権利」をクライアントと共に再認識する作業も重要なテーマだと判りました。
委員会のページを一般公開にしたことも、JPDA会員のみならず広くデザインに関わる皆様と一緒に問題を考えていきたいと思ってのことです。
心もとない活動状況と思われますでしょうが、どうぞご一緒に考えて進んで頂けますよう、読者の皆様に、改めてお願いいたします。引き続き、様々なお立場からのご意見をお待ちしています。どうぞ下記アドレスまで。(丸山和子)

MAIL:info@jpda.or.jp

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