JPDA権利保護委員会
Vol.16「意匠登録によるパッケージデザインの保護」2010年11月8日 委員長 丸山和子(担当理事)

 

前号で、韓国デザイン法の改正動向をレポートいたしましたが、それでは現在の日本の意匠法はどの様な保護制度をとっているのでしょうか。パッケージデザインについての意匠登録がどの様に実施されているのかについて、「形状デザイン」と「模様を中心としたデザイン」の登録例の紹介と、その登録図から、具体的な保護対象の取り扱いの方法を弁理士の永芳太郎氏に解説していただきました。
又、Vol.11で「意匠権の効力、意匠出願のメリット」のタイトルで 特許庁意匠課の川崎課長からの寄稿”意匠出願のすすめ“を取り上げています。意匠権の基本的な位置が書かれておりますので、併せてお読み頂ければと思います。

活動報告では、「JPDA知財塾(仮)開講予告」を載せてあります。

 


情報発信
 

意匠登録によるパッケージデザインの保護
みずの永芳特許事務所
所長・弁理士 永芳太郎

意匠制度は、平成10年の抜本的な法改正で、権利期間が15年から20年に延長され、意匠の特徴部分の保護を強化する部分意匠制度や、類似する意匠の保護を図る関連意匠制度が導入されました。
また、平成18年改正で、本意匠と同日に出願する場合に限られていた関連意匠の出願日を、本意匠の公報発行の日前まで延長する等、製品開発の実情に合わせた修正がされ、審査期間も平均で出願から約7ヶ月(2010年版年報)と短縮されてきています。
この意匠制度を活用してパッケージのデザインの保護を図っている例を紹介します。(各図の数字は意匠登録番号です。)

1.パッケージの形状デザインの登録例

(1)パッケージ全体意匠としての登録
パッケージの形状自体に新規な創作がある場合、模様を付さない形状のみの意匠として登録を受けることで権利化が図られています。

[図1]パッケージ形状についての全体意匠(1183976)

 

[図2]ミシン目に特徴があるパッケージの全体意匠

1216939


(2)部分意匠を活用したパッケージデザインの保護
部分意匠制度の導入後は、創作の主要な部分について、部分意匠を活用して権利化を図る事例が多くあります。

① 前記 図2の全体意匠が、模様の有無や類否にかかわらず同形状(特徴あるミシン目を含む直方体形状)の箱に効力が及ぶ権利となっているのに加えて、図3の部分意匠では、更に箱の形状にも影響を受けず、ミシン目部分が共通している箱の意匠に効力が及ぶ権利として、強い保護が図られています。

[図3]ミシン目部の形状のみについて権利化した部分意匠

1255624

② 創作部分以外の要素に影響を受けない部分意匠を利用して、特徴ある形状部分のみや、孔部のみの形状について登録を受けている例があります。

[図4]

1351716 1269327

③ 次の図5では、部分意匠を総合すると、容器の蓋部の開閉態様、容器本体の形状、蓋部が容器の縁にあるか中央部にあるか、等がいずれであっても効力が及ぶ権利が形成されています。

[図5]容器蓋部の部分意匠

1260124(本意匠)・1260288(関連) 1260125(本意匠)・1260289(関連)

 

(3)公知の形状からなる意匠の登録
一定の容量を確保するための容器の形状には、デザインの自由度にも制限があり、各部の形状として既に知られた形状が選択されることも多いのですが、組み合わせた全体の形状に新規な美感(視覚的な効果)があれば登録を受けることができます。
図6の事例では、「細口円筒形状の容器胴部に横方向の細溝を等間隔に設ける」という概略構成について共通するものの、それぞれの具体的な形状が評価されて別個の意匠として登録されています。

[図6]等間隔の横溝を有する包装用容器の登録例

1038330 1233709 1245966 1256056

 

(4)コンセプトの権利化は図れない
意匠登録の保護対象は、デザインコンセプトではなく、コンセプトに基づいて創作された具体的な形状(形状によって表される美感=視覚的な効果)にあるので、図7のように、コンセプトが共通していても類似する意匠とはならず、また、称呼、観念は判断の要素とならないので、それぞれ別個に、類似しない意匠として登録されています。

[図7]

1184921 1184922 1196065 1232956

 

2.模様を中心としたパッケージデザインの登録例

(1)全体意匠と部分意匠
パッケージの全体イメージの模倣に対抗するための全体意匠の登録と共に、創作の主要な部分について部分意匠として登録を得ることで、権利の充実が図られています(図8)。

[図8]全体意匠と部分意匠の登録例

1286023 1285904(本意匠) ・ 1287261(関連)

上記の図8では、部分意匠によって創作の特徴部分を権利化し、さらにその関連意匠を加えることによって、波形状の大小にかかわらず類似する意匠と解されることを明らかにしています。

 

(2)関連意匠による模様の意匠の保護
類似する意匠の範囲が把握しにくく、とくに狭く解釈されがちな傾向のある模様の意匠については、関連意匠の登録を得ることによって権利範囲の明確化が図られています。図9では一部構成の変更、図10では本体の縦横構成比、模様の態様に変更があっても、全体として類似する意匠であることが確認されています。

[図9]関連意匠の登録例 ①

1370744(本意匠) 1371006(関連) 1371007(関連)

 

[図10]関連意匠の登録例 ②

1178988(本意匠) 1179167(関連)

 

(3)色彩の取り扱い
色彩は、万人が自由に使用できるものであって、その選択について保護すべき創作性は認められないので、特定の色彩の使用について保護を受ける(独占して使用する)ことは難しく、また、色彩のみの変更は、関連意匠として登録されている事例(図11)にも示されているように、類似する意匠の範囲とされています。

[図11]

1351058(本意匠) ・ 1351425(関連) 1389175(本意匠)・ 1390262(関連)

 

(4)文字の取り扱い
意匠法においては、「文字」についても、誰もが自由に使用できるべきものであって、「文字本来の機能(言語の伝達手段)を失っているものは模様としての創作性を認める余地がある」(昭53(行ケ)30号「カップヌードル事件」)とされるものの、基本的には意匠の構成要素とはされず、以前は、出願図面中から削除する必要がありました。
現在は、文字を含むままの図面によって出願し登録を受けることができますが、類否判断の要素としての評価は高くなく、文字自体の形状が意匠の構成要素として評価されるよりは、レイアウトが評価される程度の扱いとなっています。

[図12]文字の有無にかかわらず類似する意匠(関連)である例

1277130(本意匠) 1277438(関連)

 

[図13]主として文字のレイアウトが評価されている登録例

1253904(本意匠) 1254350(関連)

 

(5)マーク、キャラクターなどの保護
部分意匠を利用することで、権利範囲が類似する物品に付されたものまでである限界があり、マークやキャラクター自体を保護するものではありませんが、付する本体の形状や付する位置にあまり制限されない保護を得ることができます。

[図14]

1148959(包装用箱) 1354812(シール) 1335628(ステッカー)

 

以上

(なお、それぞれの図版は、主要な図面のみを掲載していますので、全体の形状等については、意匠公報で確認してください。)

 


活動報告
 

JPDA知財塾(仮)開講予告

これまで、50名程度の規模のデザイン保護の勉強会(知財セミナー)を実施してまいりましたが、そういった形とは別に、少人数での学習会を実験的に開講する企画を進めております。
同じテーブルで講師を囲み、互いに身近な疑問を出し合いながら小規模ならではの意見交換を基本に、フレッシュな知識として学んでいける場になればと願っています。参加者に時間的な無理の無いよう、3ヶ月に一回、計4回でワンクールの予定です。
内容・参加募集などをまとめまして、近日中に詳細をFAXにてご案内いたします。

☆権利保護委員会 開催☆
第五回 2010年11月5日(金)18:30〜21:00 於:JPDA事務局

 


  引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp
 


最新号:Vol.42「D-8創作証って何?」2013年01月25日
バックナンバー:
    Vol.30〜「取り消される商標」、「D-8創作証」(2012年2月〜)
    Vol.18〜29 「JPDA知財塾」、「デザイン業務で学ぶ契約」ほか(2011年1月〜12月)
    Vol.8〜17「特許庁意匠課 見学ツアー」、「デザイン保護ハンドブック」ほか(2010年2月〜12月)
    Vol.1〜7「デザイン保護」、「著作権と意匠権」ほか(2009年7月〜12月)