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  JPDA権利保護委員会
Vol.30「取り消される商標」&「創作証まもなく運用開始」2012年1月26日
委員長 丸山和子(担当理事)

 

前からお伝えしてきました創作証制度が、まもなく試験運用開始です。会員の皆様に、この制度についてのアンケートにご協力頂けましたこと改めて御礼申し上げます。アンケートにお書き頂いた具体的な質問・疑問は此処までこぎつける大きな力になりました。制度の詳細な説明は協会広報誌PD13号に掲載となりますので、ぜひお読みいただければと思います。本号では制度の趣旨と登録申請の概要をお知らせします。

情報発信では、すでに登録されている商標があるからと言って、登録を諦める必要がないことを「使うことに意義がある」観点からのお話です。「商標を登録する意義」Vol.21の続編としてお届けします。

 

活動報告A
 

D-8創作証試験運用まもなく開始となります

◆日本デザイン団体協議会(略称D-8)[構成団体]
  • 社団法人 日本ディスプレイデザイン協会(DDA)
  • 社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)
  • 社団法人 日本クラフトデザイン協会(JCDA)
  • 社団法人 日本インテリアデザイナー協会(JID)
  • 社団法人 日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)
  • 社団法人 日本ジュウリーデザイナー協会(JJDA)
  • 社団法人 日本パッケージデザイン協会(JPDA)
  • 社団法人 日本サインデザイン協会(SDA)

日本デザイン団体協議会の各協会からの委員で構成される「D-8デザイン保護研究会」で進めてきました「創作証制度」が試験運用の段階に入ることになりました。今年12月迄を目安としての試験運用を通して、マーク使用者のご意見を反映させ、この制度をより趣旨に相応しいものになるように経過を見守って行きたいと考えています。受付体制が整いました時点で、「開始のご案内」をいたします。規約をお読みいただき、創作者名登録をぜひ申請してください。

■創作証制度の趣旨
「デザインには知的財産権があることの共通認識を広めていく運動」です。創作証の使用者の一人ひとりが自身の責任の基に、この制度を育てていく事になります。

創作証制度の生まれた背景

提案したデザインが採用されなかったにもかかわらず最終的には無断で使用されたり、類似したデザインが、知らぬ間に市場に出ているといったケースに、歯止めをかけるためのものです。画家が絵にサインを入れるように、デザイナーが自己の責任の上で自分の創作物に、その証としてのマークを貼る行為を広めていこうという活動です。
デザインには匿名性が求められます。この創作者が見えない状態が、「無断での使用、流用をしてはいけない」という意識をクライアントとデザイナーの双方に育ちにくくしている要因と考えられます。
デザイナー個々がオリジナリティを大切にし、尊重し合えば、クライアントに対する場合にもその効果が生まれてくるのではないかと考えます。そして、創作証を貼る行為が、「知的財産権の対象としてのデザイン」という明確な立場を広めて行く機能を持つものに育って行くことを願って、この制度を作りました。

今後の課題
創作証の信用度を増すためには、趣旨の社会的周知と制度の誠実な活用が必要ですが、「モラル・自己責任」の認識の低さ、意図的な虚偽表示は、知的財産権による保護環境の整備の可能性を、デザイナーが自ら閉ざしてしまうことになります。
この運動は、「デザイナーの誇りを護る」「創作者を認め合う」といった精神論だけに終わるものではなく、知的財産としてのデザインの権利の帰属が抵抗なく話し合える状況と、それが公平な契約の締結につながる流れを作るためのものでもあります。

望む着地点
創作者の権利保護」の先に、消費者に対するクオリティ表示から製品の品質保証の役割を果たせるものとして育つことで、マークの積極的な利用状況が生まれて、経済の活性化にも貢献できる存在として広く社会一般に受け入れられる事になれば、まさしく知的財産としての役割「新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため」(知的財産基本法第一条)を果たすことであり、その流れが「創作者の社会的地位の向上」に繋がって行くことに期待し、望むべき姿としています。

■登録申請
創作証の使用にあたって、まず創作者名の登録申請が必要です。詳しい手順はダウンロード整備ができ次第お知らせします。

  • D-8創作証規約・申請書は協会HPからダウンロードできます。
  • 申請は無料です。
  • 登録申請は年度に1回(時期は随時)、有効期限内は何度でも、ご使用頂けます。
  • 有効期限は1年間(4月~翌年3月)、ただし試験運用期間は2012年12月まで。
  • 創作者名の登録申請はD-8会員(JPDA会員はD-8会員でもあります)に限ります。
  • 申請者の創作物であれば、貼ることの制限は基本的にありません。
  • 創作証はデータ(カラーとモノクロ)で交付となります。
  • 創作証には、登録者の個別番号が付きます。
  • データの使用方法は、交付時にご案内します。
詳しくは、「広報誌PD13号」、「協会サイトのトップページから」、「権利保護委員会の次号Vol.31」で創作証のいろいろを掲載予定としていますので、順次ご覧いただければと思います。
 

情報発信
  3年使っていない登録商標は取り消せる
益子 博 中央大学理工学部講師

1.不使用登録商標の取消制度
先行する他人の気になる登録商標があった場合、これと同一または類似の商標を使用できるようにするためには、その登録を取り消してしまうという方法があります。商標法には意匠法や特許法にはない「不使用取消審判」という制度があり、登録商標が3年以上使われていないと、審判手続によって登録を取り消すことができるのです。これを利用すれば、邪魔な他人の登録商標を排除することができます。自分の商標を積極的に活かすために、この制度について検討してみることにしましょう。

2.登録商標の使用実態
特許庁と知財研が行った登録商標の使用実態調査によりますと、現に使われている登録商標の割合は、全体の30%程度にすぎず、実にその70%は使われていないという結果がでています。また、登録商標が使われていたとしても、実際に使っているのは指定商品(または役務。以下同じ)中のごく一部であって、残りの多くはほとんど使われていないという現実があります。同一区分(類)内の商品はすべて指定できますから、出願人の心理としては、幅広く指定しておいてストック的に権利化しておきたいと考えるのはむしろ当然かもしれません。さらに、登録商標と実際に使っている商標が微妙に違っていることもよくあります。登録商標と使用商標が違っていると、登録商標の使用とは認められません。

3.使うことに意義がある商標
このように、多くの登録商標が使用されているとはいえないこと、使われていたとしても登録商標の使用とは認められないことがあることなどから、先行する他人の気になる登録商標があったとしてもそれだけですぐにあきらめる必要はありません。不使用取消審判制度を利用して、使われない邪魔な登録商標を取り消してしまいましょう。商標は使うことに意義がありますから、登録を取り消すことで使いもしない商標を整理することは奨励されこそすれ非難されることではないはずです。

4.「Magic」事件
実際に使われていた商標が、登録商標の態様とは違うとして問題になった事件を紹介します。「Magic」という登録商標が使われているとはいえないとして不使用取消審判を請求され、それが認められて登録を取り消されたケースです。

X(原告)は化粧品に「Magic」という登録商標をもっていました。Y(被告)は、Xの「Magic」は3年以上使われていないとして、特許庁に不使用取消審判を請求しました。特許庁は、被告の請求を認めて原告の「Magic」の登録を取り消す旨の審決をしましたが、Xはこれを不服として東京高裁に審決取消訴訟を提起しました。結論は、裁判所もまた原告は「Magic」を使用しているとは認められないとして、「Magic」の登録は取り消されてしまいました。

5.「Magic」の使用態様
登録した「Magic」をそのままの態様で使っていれば問題ありませんが、実際に使っていた商標は「ALOE MAGIC」で、「ALOE」と「MAGIC」を上下2段に横書きしていました。Xは他社に「Magic」の通常使用権を許諾し、その使用権者が「ALOE MAGIC」の表示で化粧品を販売していましたから、Xは「Magic」を使用していると主張しました。
登録商標「Magic」、使用商標「ALOE MAGIC」

6.裁判所の判断
裁判所は、「ALOE」と「MAGIC」が2段に表示されているとしても、「その全体が外観において極めて緊密な一体性を有している」と評価し、称呼においても「ALOE MAGIC」は「アロエマジック」と一連によどみなく称呼し得るとして、「ALOE MAGIC」の文字全体に自他商品識別機能があると述べ、登録商標の「Magic」を使用しているとは認めませんでした。

7.社会通念上の同一
「ALOE MAGIC」が使用されているからといって、登録商標の「Magic」が使用されているとはいえないとしたわけですが、その理由は「社会通念上同一」ではない、というものです。登録商標と使用商標が違っている場合、どこまでが登録商標の使用と認められるかは、社会通念上同一といえるかどうかで決まります。登録商標と「類似」することではなく、「社会通念上同一」であることに注意すべきでしょう。
平成8年の商標法改正の際に、社会通念上同一の商標の具体例が公表されていますので、その一部を以下に紹介します。

■登録商標の使用と認められる事例
(1)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標





(2)平仮名、片仮名およびローマ字を相互に変更するものであって、同一の称呼および観念を生ずる商標



(3)外観において同視される図形からなる商標


(4)その他、社会通念上同一と認められる商標



     (2段併記のときに上下で観念同一、その一方の使用)


■登録商標の使用と認められない事例
(1)平仮名および片仮名とローマ字の相互間の使用


(同一の称呼で別異の観念) 


(2)その他、社会通念上同一と認められない商標
(一定の観念を生ずる文字と図形)


8.不使用取消審判の積極的利用
不使用取消審判はだれでも請求することができます。取消を免れるためには、取消を請求された商標権者側が、登録商標を指定商品に使っていたことを証明しなければなりません(商標権者から許諾を受けた者が使用した事実でもよく、「Magic」事件でもXは、通常使用権者が使用していたと主張しました)。
したがって、気になる他人の登録商標があったとしても、その登録商標が3年以上使われていないと思われるときは、この制度を利用して登録を取り消せば、同じ商標を自社商品に使用できるようになります。また商標は、意匠のようにいったん公知になると新規性を失って拒絶される、ということはありませんから、これを出願すれば商標権を取得できる可能性もでてきます。取消を請求された商標権者側は、実際に使用していなければ証明することができないのですから、この制度は邪魔な他人の登録商標を排除できる強力な武器となるでしょう。
万一登録商標が使用されていたとしても、指定商品中に使われていない商品はないか、使用商標が登録商標と社会通念上同一でないと認められる余地はないかなど検討してみる価値はあるのではないでしょうか。

以上
<「Magic」事件H13・6・27東京高判H12(行ケ)422>
 

活動報告B
 

★権利保護委員会★
第六回 2011年12月26日(月)18:30~20:30 於:JPDA事務局会議室

〈議題〉
●創作証制度の試験運用開始の告知方法の検討。
●「知財権と契約」セミナー(11/7実施)アンケートから読み取れる、対応すべき事項について検討。
●デザイン保護研究会での活動について。
●これからの権利保護委員会活動について。
 

  引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp