JPDA権利保護委員会
Vol.32「デザイン契約」&「JIDAデザイン保護」 2012年3月29日
委員長 丸山和子(担当理事)

 

これまで、デザイン制作業務に必要な知財の知識にはどのようなものがあるのか…?と言う視点をベースにしてレポートを続けてまいりましたが、中でも、大きなポイントに「契約」があります。今回は「デザイナーにとっての契約」をテーマにして、11月7日の権利保護委員会開催セミナーに講師として来てくださった峯 唯夫弁理士に 《読み易く、でも勘所はしっかり抑えて》 書いていただいた原稿です。
「無から有を作り出す行為」と言えるデザインの仕事に対して、デザイナーは「契約」をどのように捉えれば良いのか・その重要性がどこに有るのかが、解りやすく示されています。

活動報告ではD-8創作証使用実施例とJIDA(社団法人 日本インダストリアルデザイナー協会)でのデザイン保護活動とが掲載されています。

 

情報発信
 

デザイナーにとっての契約 ―契約が身を守るー
特許業務法人レガート知財事務所 知的財産コンサルタント・弁理士 峯 唯夫

■契約とは?
デザイナーの皆さん。皆さんは仕事をするとき「契約」をしていますか。「契約なんて難しいことはやっていない。」という人はいますか。
「契約」をしないで仕事をしている人はいないはずです。
「えっ? 契約書なんて書いた覚えはないよ。」という人も多いでしょう。契約書を書かなくとも「契約」はしているのです。
「契約」というと難しく聞こえますが、平たく言えば「約束」です。
依頼者から仕事の依頼を受け、皆さんが「引き受けました」と言わなければ仕事は始まらないですね。これも「契約」です。
契約というのは、「この仕事をやってください」という申込と、「引き受けました」という承諾で成立します。口頭でも「契約」です。しかし、口頭だけでは契約内容を後日確認することができません。そこで、書面としての契約書を作成するのです。
仕事をすれば必ず契約をしているのです。

■契約の重要性
口頭でも契約だ、ということではありますが、口頭で決められることって限られます。たくさんの項目を挙げても覚えていられません。
皆さんはどのような事項を決めて仕事をしていますか。どのような成果物を制作して納めるのか、その納期はいつかということは必ず決めているでしょう。「対価」はどうですか。見積書の提出・承認というステップは踏んでいますか。
商品の売買などであればこれらを決めればほぼ足ります。細かいところは民法に書いてあるからです。しかしながら、デザインの制作という無から有を作り出す作業を行う皆さんの場合、これだけでは足りません。そして決めなかったことをどうするか、民法には書いてありません。発注者と受注者双方の話し合い、そして合意に基づいて決めなければならないのです。
デザイナーにとって契約(書面での契約)が重要な理由はここにあります。しっかり決めておかないと、後で痛い目に遭うのはしばしばデザイナーです。

■無から有を作り出すということ
では、無から有を作り出す人は、どのような事項を決めておく必要があるのでしょうか。
無から有を作り出すというデザインワーク、これはデザイナーの人たちの「知的生産活動」です。完成したデザインは知的生産活動の成果物であって、これを支配する権限は制作したデザイナーにあります。
デザイナーはこの成果物(デザイン)を依頼者に提供(納品)します。
「提供する」とはどういうことでしょうか。
通常、成果物であるデザインは、紙に表現されて依頼者に渡されます。「デザインが表された紙を渡す」ということと「デザインを渡す(譲渡する)」ということは意味が違います。デザイナーは「紙を渡す」ことによってデザインを「提供」しますが、「デザインを支配する権限」まで渡したことにはなりません。
例えば、「ウイスキーのボトルラベル」のデザインを依頼され、「ラベルデザインが表された紙(及びデータ)」を渡した場合、依頼者はそのデザインを「ウイスキーのボトルラベル」に使用する権限は取得する、と考えてよいと思いますが、それ以外、例えば「ウイスキーの箱」に使用する権限は取得していない、デザイナーに残っている、ということです。

■どんなことを決めるのか
決めておくべきこと、そのなかでもとりわけ重要なものを上げると以下のようになります。
・どの時点でデザイン料が支払われるのか
・どの時点でデザイナーの作業が完了するのか
・依頼者による検収など
・複数のデザインを提案したとき、不採用になったデザインの扱い
・デザイン料にはどこまで含まれているのか
・追加の費用が発生せずに依頼者ができること
・追加の費用が発生するデザインの利用の仕方
・著作権は依頼者に譲渡されるのかどうか
・依頼者はデザインを修正できるのか
・意匠登録を出願する場合、だれが出願するのか。

■下請法
「下請法」という法律をご存知でしょうか。この法律では、発注者は受託者に対して、発注内容、対価などを記載した書面を交付しなければならず、仕事の完了から60日以内に費用を支払わなければいけないなどが定められています。そして、著作権などの知的財産権の譲渡に関しては「委託した給付の内容に含んで知的財産権を譲渡させる場合には,下請法第3条により交付を義務付けられた発注書面(3条書面)にその旨を記載し,知的財産権の譲渡対価を含んだ下請代金の額を,下請事業者との十分な協議の上で設定して発注する必要があります。」(公正取引委員会HP、「下請法Q&A」)とされています。

 

活動報告
 

D-8デザイン保護研究会メンバーからの各協会のデザイン保護事情
第1回:JIDA職能委員会・職能部会・部会長 堀越敏晴(有限会社シーダブリュエス 代表)

◆JIDAに於けるデザイン保護活動
日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)は1952年創立、今年11月に60周年を迎えます。JIDAでデザイン保護のあり方などを管掌しているのは、職能委員会です。デザイン8団体には、デザイン協会と称する団体と、デザイナー協会と称する団体がありますがJIDAは後者で、インダストリアルデザイナーの職能団体という定義になっています。
この職能とは、インダストリアルデザインという職務を遂行するために必要な能力、そして職務の果たす役割と理解されています。したがって歴史もあり、委員会活動の内容も広範囲にわたるため、現在では職能委員会は内容別に二つの部会に分けられています。
職能部会では、知的財産権やデザイン契約、報酬など、もうひとつのアクレディット部会は、デザイナーの資格制度形成に向けて、教科書の制作、検定試験セミナーの開催などを行っています。

タイトルにあるデザイン保護に関わるのは職能部会ですが、抱えるテーマは幅広く、まず、インダストリアルデザイナーに求められる今日的スキルの研究、契約書式の整備など会員からの要望がある案件の検討と試案作成、産業財産権、著作権など創作物の保護に関わる研究と発言、デザイン契約と報酬に関する調査研究・ガイドラインの作成、関係官庁からの問い合わせへの検討と回答、そしてそれらに関わるセミナーの開催などを行っています。
また、近年行われていませんが、フリーランス会員の実態調査なども行ってきています。さらに、産業財産権とその権利化についての相談窓口として、弁理士資格を有する委員によるDP(Design Property)ホットラインという制度を設けています。そのほか、学生会員と企業との産学協同事業や、会員向け企業コンペにおける知財の扱いに対し要望をまとめる、協会に対する知財関連のクレーム対応、そして画面デザインと意匠登録のあり方など、毎年のように新しい案件が出てくる中で、職能部会のより一層の拡充が望まれている状況です。

文責:堀越敏晴

◆D-8創作証使用報告
[展示場所] 2012年春・第73回東京インターナショナルギフトショー/主催:(株)ビジネスガイド社
協賛として、8団体からはJIDA、JPDA、SDAが参加している。




[D-8創作証の表示されたデザイン]
●シニアグラス ●爪切り 
●テーブル小物 ●POP
プロダクトデザイン:堀越敏晴
イラスト作画:兼子満衣
写真は、西館JIDAブース内に展示されたもの。

 

  引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp
 

最新号:Vol.42「D-8創作証って何?」2013年01月25日
バックナンバー:
    Vol.30〜「取り消される商標」、「D-8創作証」(2012年2月〜)
    Vol.18〜29 「JPDA知財塾」、「デザイン業務で学ぶ契約」ほか(2011年1月〜12月)
    Vol.8〜17「特許庁意匠課 見学ツアー」、「デザイン保護ハンドブック」ほか(2010年2月〜12月)
    Vol.1〜7「デザイン保護」、「著作権と意匠権」ほか(2009年7月〜12月)