JPDA権利保護委員会
Vol.33「契約で気をつける点」&「SDAデザイン保護」 2012年4月27日
委員長 丸山和子(担当理事)

 

実際に契約を結ぶ場合に、気を配らなければならないことはたくさんあります。互いに納得の行く契約を取り交わすにはどうすればよいか・・・そのような時の「契約書の読み方」としても、理解しやすく書かれています。必要な契約項目を順番に挙げながら、パッケージデザインに的を絞って仕事を発注する側と引き受ける側の双方が互いに確認すべきことが具体的に説明されています。

活動報告では、D-8デザイン保護活動メンバー発信第2回としてSDA(公益社団法人日本サインデザイン協会)からの報告を掲載しています。順次、デザイン8団体の各協会の状況をご紹介していきます。

 

情報発信
 

「デザイン契約で気をつける点」についてのアドバイス(その1)
特許業務法人レガート知財事務所 知的財産コンサルタント・弁理士 峯 唯夫

前回、契約が身を守る、というお話しをしました。 今回は、契約書を取り交わすときに気をつける点を、パッケージデザインに特定してお話しします。ここまで言い出せない、ということも書いてあります。企業の方には、これらの点にご配慮頂きたいと思います。

イラスト:徳岡健/権利保護委員

1.仕事の内容
(1)業務内容
一口にパッケージデザインといっても、例えば以下のように様々な内容があります。
・パッケージのコンセプト開発
・パッケージ形態のデザイン開発
・パッケージに表示するビジュアルデザインの開発
これらのどの範疇の業務を対象とするのかを明確にする必要があります。
また、デザイン案をいくつ作成するのか、最終納品(採用点数)は幾つかも明確にしておく必要があります。

(2)成果物
何を成果物(納品物)とするかを特定する必要があります。
一番多いと思われるパッケージに表示されるビジュアルデザインの開発であっても、図面(カンプ)でよいのか、電子データを必要とするのか、その場合データ保存形式はどうするかなど。
※データの使用範囲について・・・別稿でお伝えします。

(3)情報提供
クライアント企業はデザイナーに対して、デザイナーが業務を行うために必要な情報を提供する必要があります。一般には「必要な情報を提供する」というように記載されますが、デザイナーの立場から見ると、前記に加えて「デザイナーは必要な情報を要求できる」という規定も欲しいと思います。
また、デザイナーは「提供された情報の中で仕事をする」ということも規定した方がよいでしょう。例えば、「情報」ではグラフィックデザインを「紙容器」に印刷するとなっていたところ、容器をプラスチックに変更する、ということがあれば、発色などに違いが生じ、デザインがうまく表現できないこともあり得ます。その責任をどっちが取るの、ということです。前記のような規定があれば、デザイナーが責任を負うことはなくなります。
なお、この情報提供は、後でお話しする「守秘義務」にも絡んできますので注意してください。

(4)スケジュール
一般に、納期が規定されます。しかし、デザイナーが仕事をする条件が整うのは、必要な情報が整ってからです。クライアントからの情報提供が遅れた場合、納期が遅れても仕方がないこともあるでしょう。
スケジュールでは、納期だけでなく情報提供の期限も規定することが必要だと思います。

2.仕事の終了
(1)成果物の提供
いつ仕事が終了するのか、いつまでクライアントはデザイナーに「無償」で修正を求められるのか。そして、デザイナーはいつ対価を請求できるのか。これを明確にしなければなりません。
委任契約(次回説明します)であれば、デザイナーがクライアントに成果物を提供した時点で仕事は終了し、デザイナーは対価を請求することができます。しかしながら、クライアントがその成果物に納得しないときは、修正を求められることもあります。
すなわち、「成果物の提供時」=「仕事の終了時」とならないことがあります。そこで、契約書において、クライアントはいつまでに成果物を確認し、その結果をデザイナーに報告する、と規定する必要があると思います。

(2)デザインの修正
慣習上、無償で対応せざるを得ない修正はあると思います。
しかし、クライアントの都合で大きく変更された場合、例えば平面に表すことを前提として制作したデザインを曲面に表すことにしたことに伴う修正、表示する素材の変更に伴う修正など、提供された情報が変更された場合、は追加費用が発生するはずです。そういうことも決めておいた方がよいでしょう。
※瑕疵担保責任(請負契約)、善管注意義務(委任契約)・・・別稿でまとめます。

3.守秘義務
守秘義務契約がなければ、クライアントはデザイナーに安心して情報を出すことができません。
言葉は難しそうですが、中味は簡単です。クライアントから提供された情報を他人に話すな、ということです。
しかし、クライアントから提供された情報はデザイン事務所の所員が共有することになるでしょう。したがって、所員全員に「箝口令」を敷く必要があります。これは、事務所の勤務規則で定められている場合もあると思いますが、個別の事案毎に事務所内で「守秘義務契約」を作成し、これをクライアントに提出することにより、事務所の情報管理をアピールする手法もあると思います。

4.不採用案の扱い
不採用案の扱いはものすごく重要です。
協会の契約書サンプルでは、不採用案が「明確に報酬に含まれない場合」はデザイナーのものだ、となっています。
でも、デザイナーのものになったところで、デザイナーは他に使えるのでしょうか。
個別の事情に基づいたデザインです。他社に使えることはほとんどないのではないでしょうか。
そのあたりも考えて、不採用案をクライアントが使用することを認め、そのときの対価を決める、という方向もあるのではないかと思います。

(次回に続く)

― この後に下記の項目等が取り上げられて続きます。―

■契約のタイプ

(1)業務委託契約
・民法に規定がない。以下の何れかになる。
(2)請負契約
・仕事の完成
・瑕疵担保責任
(3)委任契約
・受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
・報告義務

■対価及び費用(諸経費)
(1)対価の支払い方法
・納品時に一括
・分割(着手時・中間時・納品時)
・ロイヤルティ
・納品時+ロイヤルティ

(2)費用
・費用の範囲
・費用の請求方法
・費用の支払時期

■成果物の使用範囲・使用方法
・パッケージ以外への使用の可否、使用条件
・改変の制限

■知的財産の扱い
(1)意匠・特許
(2)著作権

■その他
(1)再委託の可否
(2)製造物責任
(3)解約

 

活動報告
 

連載「D-8デザイン保護研究会メンバーからの各協会のデザイン保護事情」
第2回:SDAデザイン保護研究部会・委員/D-8デザイン保護研究会・委員長
    藤井将之(株式会社コトブキ サイン事業推進室長)

◆SDAに於けるデザイン保護活動
公益社団法人日本サインデザイン協会(SDA)は、サインデザインの向上と普及を目指して、1965年に発足しました。
本協会は、サインデザイナーはもちろん、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナー、照明デザイナー、建築デザイナー、景観デザイナー、およびこれらに関する教育機関、研究機関、関連企業など、多様なメンバーにより構成されています。
現状、サインのデザイン保護意識はそれほど高くないように思います。おそらくこの要因はサインの「標準化」と「オリジナリティ」のバランス関係にあると思います。公共サインについて言えば「見やすく、分かりやすい」サインにするための色や文字サイズ、書体など一般的なルール化がなされ広く認知されています。特に公共性の高い場所に設置されるサインに利用されるピクトグラムやレイアウトなどは標準化し統一することが望ましいとされており、これらの素材はライセンスフリーで公開されているためそれらの転用はそもそも保護の対象にはなりません。

〜JIS化された「一般案内用図記号」〜

また、サインの成果物は目に見えるモノだけではなく、情報システムであったり、地域や施設のアイデンティティを高める仕組みであったり、利用者の感情に訴求するストーリー構成であったり、空間を豊かにする設えであったり、単体のモノでは表せない成果物も数多く存在します。この目に見えない部分のデザインが近年ではサインデザインの重要な要素にもなっており、それらを保護することは手続き上現実的ではなく、デザイン保護の関心が高まらない要因であったのかもしれません。

◆サインに関するデザイン保護の課題
サインの業務は一般的に 『製品製作(製品設計)・表示原稿作成(デザイン・配置計画)・印刷業務』などの工程を経てモノに至ります。それらはある程度閉じられた業者内で分業化されてきた傾向があり、個々のモラル意識のなかでデザイン保護が進められてきました。 しかしながら近年ではサインの対象範囲も広がり、インターネットの普及から素材を容易に入手できることで新規参入の業者も増え、さらに「デジタルサイネージ」に見られるように業態も複雑化しています。近年SDA賞に応募される作品には空間デザインやディスプレイ、コミュニケーションなど垣根を越えた分野の作品が増え、同時に「○○っぽい」といった、誰かまたは何かに似ているデザインが増えているようにも思います。こういった行為が業界を発展させてきた側面もありますが、創作活動の市場価値が低下する原因にもなっているように思います。市場価値が下がれば創作活動そのものに関心がなくなるため、『デザイン保護活動』への関心を高める必要があるように思います。

◆SDAの知財保護活動
あまり知られてはいませんが、サインデザイナーが頻繁に用いる地図データにもすべて「著作権」があり、インターネットのデータをそのまま活用することはもちろん、複製・改ざんも認められておりません。これら地図をトレースし利用する場合にも手続きが必要な場合があります。地図を利用する際は各自治体から独自に作成したるデータを利用するか、国土地理院の承認を得て利用しますが、このような例が他にも数多くあります。このようにサインデザイナーが知っておくべき知財知識を、SDAでは書籍として発行しています。


知的財産権:知っておきたいデザインルール
2005年3月発行 500円(税込)
知的財産権と聞くと、なんだか難しい法律を思い浮かべてしまいますが、サインの表示で日常的に使っている企業のマークやロゴタイプもその対象となるもので、サインデザインにとっては屋外広告物法などと並んで最も関わりの深い制度です。
このハンドブックでは、知的財産権の中でも特にサインや屋外広告物に関わりの深い項目をまとめています。難しい法律用語は極力避けて内容も基本的なものだけに絞り込んでいます。より詳細な内容が知りたい方のためには、関連のホームページアドレスや参考文献名、相談窓口の連絡先等を記載してあります。デザインの権利に対する意識を高めていただくとともに、日常業務の中で活用していただければ幸いです。
日本サインデザイン協会 調査研究委員会 武山良三

◆D-8創作証活動報告
SDAでは「創作証」の試験導入がスタートしています。2011年12月より会員へのメール、郵送物に解説資料を同封し登録が始まっております。
今後積極活用をして、「創作証」の普及に努めてまいります。

文責:藤井将之
 

  引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp
 

最新号:Vol.42「D-8創作証って何?」2013年01月25日
バックナンバー:
    Vol.30〜「取り消される商標」、「D-8創作証」(2012年2月〜)
    Vol.18〜29 「JPDA知財塾」、「デザイン業務で学ぶ契約」ほか(2011年1月〜12月)
    Vol.8〜17「特許庁意匠課 見学ツアー」、「デザイン保護ハンドブック」ほか(2010年2月〜12月)
    Vol.1〜7「デザイン保護」、「著作権と意匠権」ほか(2009年7月〜12月)