JPDA権利保護委員会
Vol.37「デザイン料と知財権の対応」&「ロイヤルティ支払い方法」 2012年8月27日

 

これまでVol.33、Vol.34と 〈デザイン契約で気をつける点についてのアドバイス〉 を連載してまいりましたが、契約を取り交わす上で認識しておくべき 【デザインに関わる様々な権利】 を、解りやすく箇条書きに整理していただきました。関係する項目を照らし合わせるチェックリストとしてもお読み下さい。

併せて、JPDA知財塾で使用しました参考テキスト:「ライセンス契約に於けるロイヤルティ支払いの方式」を掲載いたします。

(編集・文責:権利保護委員会 委員長 丸山和子)
 

情報発信 A
 

「デザイン契約で気をつける点」についてのアドバイス(その3)・成果物の権利としての取り扱い
「デザイン料と知財権の対応」ー契約書作成のためのー

特許業務法人レガート知財事務所 知的財産コンサルタント・弁理士 峯 唯夫


シリーズ最終回の今回は、デザインワークにおいて発生する成果物に関する権利の取り扱いについてお話しします。


イラスト作成:委員/徳岡 健

1.成果物の種類
パッケージデザインの分野において、デザインワークの成果物としては以下のものが考えられます。

★そして、これらは主にカッコに記した権利として保護の対象になります。
(1)デザインのコンセプトないしは方向性についての提案
(2)包装材の構造(特許・実用新案)
(3)包装材の形状(意匠)
(4)パッケージの表面デザイン(意匠)(ラベル、包装紙、ショッピングバッグ等を含む)
(5)ロゴのデザイン(商標)
(6)キャラクターのデザイン(著作権)


これらの成果物はいずれも「知的財産」であり、(1)を除いて「知的財産権」として保護の対象になります。なお、(1)を除いて、と書いたのは(1)は以下のいずれにも当てはまらない場合が多いためです。また、(4)は鑑賞の対象になるものであれば、著作権で保護される場合もあります。

いずれの権利の対象であるかにより、契約書における取り決めの内容も変わってきます。以下、権利の種類別に契約の留意点を解説します。

 

2.特許・実用新案・意匠
■権利の帰属を決めよう

発明をした人やデザインをした人は、特許を受ける権利、意匠登録を受ける権利を自動的に取得します。この権利を持っている人だけが特許権や意匠権を取得することができます。

★デザイン契約において、選択肢は3つです。
(1)デザイナーが権利を持ち続けてデザイナーが意匠権を取得する。
   デザイナーは発注者に実施権を許諾する。
(2)デザイナーが発注者に権利を譲渡して発注者が意匠権を取得する。

(3)デザイナーと発注者が権利を共有し、共同で意匠権を取得する。
いずれを選択するのかを契約書で決める必要があります。

契約書では、「特許を受ける権利」「意匠登録を受ける権利」と個別に書いてもよいのですが、「産業財産権に関する権利」又は著作権を含めて「知的財産権」というように書く場合もあります。
意匠登録等を受ける権利は、実際に創作をした人(デザイナー個人)が取得します。受託者がデザイン会社(法人)の場合、デザイン会社は意匠登録等を受ける権利を持っていません。

★発注者が意匠登録等を受ける権利の取得を希望する場合には、デザイン会社に対して、デザイナーから意匠登録等を受ける権利の譲渡を受けるよう要請する(契約で義務づける)必要があります。

■権利の対価を決めよう
デザイナーが発注者に権利を譲渡する場合〈上記(2)、(3)〉、権利の対価を決める必要があります。多くの場合、デザイン料に権利の対価が含まれている’ような’扱いとなっているようですが、デザイン料と権利の対価は別物というのが正しい考えです。

★発注者側から見ると、デザイン料を払っても権利は付いてこない、ということです。
★上記(1)の場合は実施料(ロイヤルティー)を、(2)の場合は譲渡対価を決めます。

■条件を決めよう
重要な条件は、デザイナーが提示したデザインを発注者が改変できるのかどうか、改変できる場合はデザイナーに知らせる必要があるのか、ということです。

 

3.著作権
■権利の帰属を決めよう
著作物を創作した人は、自動的に著作権を取得します。手続は不要です。著作権がないと、著作物を自由に複製したり、翻案(例えばキャラクター図柄に基づいてキャラクターグッズを製作する)したりすることができません。したがって、パッケージデザインに関する著作権の取り扱いを決めなければなりません。

★デザイン契約において、選択肢は3つです。
(1)デザイナーが著作権を持ち続けて、デザイナーは発注者に利用する権利を許諾する。
(2)デザイナーが発注者に著作権を譲渡して発注者が著作権を取得する。

(3)デザイナーと発注者が著作権を共有する。

著作権は意匠権等と異なり、法人が著作者になることを認めています。これを法人著作といいます。
著作者が法人等の従業員であり、法人などでの業務として創作した場合、著作者(著作権者)は原則として「法人等」となります。したがって、インハウスデザイナーやデザイン会社のデザイナーが創作した場合、著作権者は企業・デザイン会社です。他方、個人で開業しているデザイナーの創作であれば、デザイナーが著作者となります。
★だれが著作権者であるかを確認する必要もあります。

■権利の対価を決めよう
デザイン料を払っても権利は付いてこない、という点は著作権も同じです。
★発注者としては、デザインを安心して使用するためにも契約で著作権の対価を記載する必要があるでしょう。

■条件を決めよう
(1)譲渡する権利の範囲
著作権は多数の権利の束です。契約では「一切の著作権を譲渡する」というような記載が多いと思いますが、気をつける点は翻案権の扱いです。

★翻案権も譲渡するときにはそのことを明記しなければなりません。

(2)発注者が使える範囲
例えば、「包装紙」のデザインとして創作されたデザインを、発注者はデザイナーに無断で「包装用袋」に使えるか、ということです。法律的にはどちらも著作物の複製であり、「複製権」でカバーされています。しかし、デザイナーとしては納得できないこともあるのではないでしょうか。デザインの対価は労働に対する対価というよりも、デザインが発注者に提供する貢献に対する対価ということができます。発注者が多くのアイテムにデザインを利用すれば貢献度は高まります。

★そこで、発注時に予定された以外のアイテムに利用できるのか、その場合追加の費用は発生するのか、などを決めておく必要があります。

(3)発注者による改変
デザイナーが提示したデザインを発注者が改変できるのかどうか、改変できる場合はデザイナーに知らせる必要があるのか、ということです。

★一般に「著作者人格権(同一性保持権など)は行使しない」という規定が設けられますが、これとは別に改変の程度、条件を規定しておく方が安全です。

 

4.商標権
商標権は、市場における商品・役務の識別標識である商標を保護する権利です。
商標(マーク)「創作」を保護するものではありません。そのために、デザイナーが苦労して創作したロゴマークであっても、デザイナーに「商標登録を受ける権利」というものは認められていません。誰でも出願して権利を取得できるのです。
また、ロゴマークは意匠登録の対象ではなく(欧州ではデザイン登録されます)、著作権の対象である「著作物」ではないと考えられています。「鑑賞の対象になる」ものであれば著作権で保護される可能性がないとは言い切れませんが、現状、著作権での保護を認めた判決例はないようです。
鑑賞の対象ではない点において、ロゴマークは、同じく文字を素材とした「書」とは事情が異なります。

以下のロゴマークにつき、最高裁は「いわゆるデザイン書体も文字の字体を基礎として,これにデザインを施したものであるところ,文字は万人共有の文化的財産ともいうべきものであり,また,本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであるから,文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは,一般的には困難であると考えられる」と判示した高裁判断を支持しています(東京高等裁判所平成8年1月25日判決、平成6年(ネ)第1470号。最高裁判所平成10年6月25日判決、平成8年(オ)第1022号)。

私はこの判決に疑問を持っていますが、商標登録との棲み分けの問題もあります。ロゴマークの創作は法律では保護されていないのです。


そうであっても、創作物であることは間違いありません。


★そこで、著作権に準じて発注者がデザインを改変するときの条件、特に色彩の取り扱いについて、取り決めをしておくことが好ましいと思います。
★また、ロゴマークを「商標」としてではなく商品の模様として使用する場合(例えばTシャツやバッグの模様として使用する場合。)には、追加の対価が発生することを定めることも検討する必要があると思います。
 

情報発信 B
 

「ライセンス契約に於けるロイヤルティ支払いの方式」

この資料は、JPDA権利保護委員会実施の「第三回JPDA知財塾」(2011年7月14日)参考テキストとして委員会が下記の文献を参考にまとめたものです。
【参考文献:「ロイヤルティ料率データハンドブック」2010年8月31日初版(財)経済産業調査会編】

●ロイヤルティ設定方式
A)実施料方式…ライセンス実施製品等の出来高にリンクしない
  (代表的な方法は、一括払い実施料方式=固定額支払い方式)
B)継続実施料方式…出来高にリンクする
  (代表的なものは、ランニング・ロイヤルティ方式

 

●一括払い実施料
ライセンサの立場
[メリット]
契約時にまとまった金額が収入となるため、研究開発費の回収等ができる。
[デメリット]
ライセンス対象製品の事業拡大の恩恵が無い。

ライセンシの立場
[メリット]
ロイヤルティ支払いの為の実施状況等の報告を定期的にする必要が無い。管理コスト上の利益、売上増による利益を一方的に享受できる。
[デメリット]
契約時の負担が大きい。

 

●一括払い実施料と類似する方式
イニシャルペイメント方式
継続実施料との併用
ライセンス対価の一部の対価を含むもので、研究開発費の一部負担金、ノウハウ開示に伴う一時支払対価、将来支払われる経常実施料の一部前払い金等が考えられる。
継続実施料の一部前払い頭金として規定される場合、特に「頭金」と定義される場合がある。

マイルストーン・ペイメント方式
製品の開発段階に応じて、あらかじめ取り決められた開発段階の達成に従って一括してライセンサに支払われる成功報酬的な性格の支払い。 医療・バイオ業界において製品開発完了の前の段階からライセンス契約をする場合に多く見られる。

 

●実施高実施料(出来高払い方式)
料率実施料(パーセンテージ・ロイヤルティ)
売上高や正味販売価格等のロイヤルティベースの一定比率で規定された金額をロイヤルティとする。
算定の金額の変動に応じてロイヤルティの金額も変動するのでライセンシにとって原価管理しやすい。

従量実施料(パークオリティ・ロイヤルティ)
一単位当たりについて一定金額をロイヤルティとする。
ライセンサにとっては原価率等の変動に関わらず安定した利益が得られる。
ライセンシにとっては契約時に原価率の開示の必要性も低くなる等のメリットがあるが、原価管理がしづらくなる面がある。

※継続ロイヤルティ料率は、一括払い方式と併用され、最初に一時金を受け取り、その後さらに売上に従ってランニング・ロイヤルティを受け取る方式が使われることが多い。
「頭金」はライセンサが既に負担した諸費用の一部を回収する役割を担うため、通常返還不能とする契約条件となることが多い。

 

※その他、継続ロイヤルティ料率のパターンに分類される方式として、代表的なもの。
●逓減・逓増実施料方式
販売高に応じてロイヤルティ料率や単位当たり実施料額を変動させる方式。
逓減方式
販売高等が増大するにつれてロイヤルティが低減する方式で、ライセンシにとって有効。

逓増方式
対象市場の拡大がまだ充分で無く、事業活動時点のライセンシの原価負担を軽減させるために導入されることがある。市場がまだ未成熟、もしくは発達段階にある製品のライセンス契約で、この逓増方式はライセンシ・ライセンサ両者にとってリスク分担機能がある

ミニマム・ロイヤル方式
売上高に係わらず最低保証対価を取り決める。
特に独占的ライセンス契約の際に導入されるべきもの。
(ライセンシが対象製品を販売しない場合、あるいは販売高の見通しが不明確な場合、ライセンサはロイヤルティ収入を獲得できないリスクが生じることから導入されることが多い。)
 

  引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp
 

最新号:Vol.42「D-8創作証って何?」2013年01月25日
バックナンバー:
    Vol.30〜「取り消される商標」、「D-8創作証」(2012年2月〜)
    Vol.18〜29 「JPDA知財塾」、「デザイン業務で学ぶ契約」ほか(2011年1月〜12月)
    Vol.8〜17「特許庁意匠課 見学ツアー」、「デザイン保護ハンドブック」ほか(2010年2月〜12月)
    Vol.1〜7「デザイン保護」、「著作権と意匠権」ほか(2009年7月〜12月)