Japanese English
金沢のデザインフィロソフィーを学ぶ

JPDA 金沢デザイン会議 2016

開催日:平成28年10月7日(金)
会 場:金沢美術工芸大学(石川県金沢市)
出席者数:152名

これまで毎年各地で開催されてきたJPDA全国会議が、今年から「JPDAデザイン会議」として生まれ変わりました。デザイン団体としてのクリエイティビティと公益社団法人としての公益性(あまねく人々と社会に貢献する)に加え、会員が交流できる、面白くてためになる場を目指しました。
記念すべき第一回は、伝統工芸の街として知られる金沢で開催、テーマは、「金沢のデザインフィロソフィーを学ぶ」。金沢美術工芸大学を会場に、総勢152名が参加、大学キャンパスをステージに、次につながる可能性を存分に感じさせる会議となりました。

■第1部 基調講演&パネルディスカッション
1)基調講演
講 師:森 仁史氏(柳宗理記念デザイン研究所 シニア・ディレクター)
金沢デザイン会議の幕開けに登場したのは、日本の工芸・デザイン史を専門とし、金沢美術工芸大学で教育にも携わってきた森仁史さんです。パッケージデザインを軸に近代から現在に至る日本のデザインと工芸を概観しながら、パッケージデザインの位置づけや「伝統」という言葉に内包される意味合いについて論じました。

「明治時代から化粧品やお菓子や薬品など民生用の製品が国産化され国内市場に競争があった日本では、印刷物を中心に広告活動が活発に行われ、その結果、印刷技術も進み、グラフィックデザイナーもお互いに刺激を受けあう状況がありました。しかし工業製品のデザイン体験は非常に少なかったし、パッケージもグラフィックデザイナーの延長線上の仕事としてしか着目されていませんでした。しかし、戦後の日本の社会を支え、企業の急激な成長を可能にしていったのは、これらインダストリアルデザインやパッケージデザインだったと思います」と、様々なデザインへの展開を振り返ります。
グローバリゼーションが当然とされる現代において、地場産業の継承という方向で、地域に育っていたものづくりの手法を現代社会にマッチングさせる試みや、伝統的なスタイルだけではなく、日本のものづくりが持っていた日本的な個性に対して改めて注目すべきという視点にも言及。「伝統とは不変ではなく、現在の我々の感じ方次第でまったく変わってしまうもの」、「我々が過去をどう見るのか、伝統をどう捉えるのかが問題なのです」と語り、「我々の祖先や先輩たちが何百年間も日本人として背負ってきたものをどう捉え、また、新たなものとどう格闘してきたのか、その歴史をどう見るかは非常に大事な仕事なのではないかと思います。ですから皆さんは、過去のことから自分なりに新しいものをつくったり、新しい提案をすることに躊躇する必要はないと思います。こうした提示を踏まえて何をなさるのか、どう素晴らしい結果につなげるのか考えていただければと思います。」と講演を締めくくります。

2)パネルディスカッション
パネラー:森 仁史氏×山村慎哉氏(漆工芸家、金沢美大教授)×畝野裕司(JPDA理事、金沢美大教授)
パネルディスカッションは畝野裕司JPDA理事がファシリテーターを務め、基調講演で登壇いただいた森さんと漆工芸家の山村慎哉さんをお迎えして行われました。山村さんが漆の技法や制作方法を自身の作品の紹介とともにプレゼンテーション、その後は3人でお話しいただきました。

山村さんは、螺鈿、蒔絵など漆の工芸的技法を用いて現代的な装飾とシンプルで美しい形態を生み出す漆工芸家として知られています。多様な加飾材料を用い、「伝統的な技法ではありますが、現代的な部分を取り入れながら展開していかなければならない」と語ります。
ディスカッションでは、工芸と未来、機械生産と手仕事、工芸に対する日本独自の考え方などについて活発な意見交換が行われました。

■第2部 学生によるデザインプロジェクト発表
1)産学連携プロジェクト「Nプロジェクト」活動報告
2014年3月に始まった「Nプロジェクト」。近隣の大学生有志が参加して、石川県北部の能登半島を拠点に若者向けの新しい日本酒をプロデュースしています。能登、農業、日本酒の3つの頭文字から「N」を冠し、近隣大学の学生たちと地元の米農家や酒蔵が連携して、「耕作放棄地の開墾」「酒米づくり」「日本酒づくり」を通して能登地域の活性化に取り組んでいます。コンセプトは「若者が能登も農業も日本酒も盛り上げる」。耕作、生産、商品開発からデザイン、販売に至るまで実際に携わった活動内容が報告されました。

2)金沢美大視覚デザイン科学生デザイン制作展「石引商店街のお店の課題を解決するパッケージ」
視覚デザイン科3年生による、商店街の魅力を引き出し、課題を解決する作品のプレゼンテーションが行われました。担当教授である畝野裕司JPDA理事から課題説明の後、学生20名が2分間ずつ自身の作品を発表。豆腐店や和菓子店、傘店など地元商店街ならではの地域色豊かな商品をどう見せ、メッセージを伝えて盛り上げていくのか。学生たちの地域商店街に対する真摯な思いが伝わるプレゼンテーションに、デザイン会議参加者も、新鮮な気もちで耳を傾け、目を凝らしていました。

■第3部 懇親会
懇親会では、JPDA会員と学生が大学食堂で自由に語り合いました。「Nプロジェクト」制作の日本酒「Chikuha N」を片手に、金沢の地産食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打ちながら約1時間、年1回の会議での再会を喜ぶ人、学生たちと新鮮な語らいを愉しむ人、デザイン談議に熱中する人など、思い思いに有意義なひと時を過ごせた、和やかな時間となりました。

担当委員会:国内交流委員会・中日本委員会

最近のレポート