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Vol.3 スポーツエンターテインメント
イチローがアナハイムへやってきました。日本で長年リーディングヒッターの座を守ってきた彼がメジャーでどんな活躍をするのか、こちらでも注目の的です。チームメートの佐々木、アナハイムエンジェルスの長谷川と、日本人プレーヤーが顔を揃えるこの試合は、こちらに住む日本人向けに観戦ツアーも組まれました。アナハイムは私のアパートから車で30分ほど。まだ肌寒いナイトゲームは避け、日曜日のデーゲームを観にエンジェルスのホームスタジアム「エジソンフィールド」へ出かけてきました。
「エジソン」とは電力会社の名前。世界を騒がせているカリフォルニアの電力危機の当事者です。ナイトゲームだったら、いつ停電になるのかと不安な観戦になったかもしれません。こちらではスタジアム名などによく企業の名前が冠されています。昨年のNBAの覇者レイカーズ等のホーム「ステープルスセンター」はオフィス用品ストアの「ステープルス」、NHLのマイティダックスのホーム「アローヘッドポンド」はスプリングウォーターのブランド「アローヘッド」、また来年からアカデミー賞授賞式の新たな会場となる「コダックシアター」などなど。スタジアム名はあらゆるメディアで連呼され、広告としての効果のほどがうかがえます。
スポーツイベントにつきものなのが国歌です。決して特別な試合に限らず、毎試合必ず歌われます。歌うのは名もない歌手ではありますが、無伴奏で朗々と歌い上げられるアメリカ国歌は、力強く威風堂々としていてスポーツイベントのイントロにいかにもふさわしく、否が応でも気分を高揚させてくれます。前の席の背に足を投げ出して思いっきりリラックスしまくっているアメリカ人達も、このときばかりは皆、帽子を取って立ち上がり、国歌を聞き入ります。一瞬、空気が厳粛になりながらも、サビのところになると口笛や歓声で盛り上がるあたりはアメリカ流。やはり「君が代」とは違います。
スタジアム観戦にはTVでは味わえない楽しみがあります。試合前やイニングの合間に、突如、小型のバズーカ砲のようなものを担いだオネエさまが登場し、スタンドに向けてズドンと発射。放物線を描いて観客の手にキャッチされたプラスチックのケースの中にはTシャツが入っていました。スタンドは狂ったように?っちへ撃って」とアピール合戦。たかがTシャツ、どんなデザインかどんなサイズかもわからないのに、どうして人はこういうときになると、とりあえず欲しがるんでしょう。
快晴下のスタジアムは、このためにアメリカンフードがあると言わんばかりの環境。屋外で堂々と飲めるビールとスナックが最高のご馳走です。ポテトチップの売り子は通路から手を上げている客めがけて、アメフトのパスさながらに袋を投げ入れます。さて、お代は…? 結局、同列の客の手から手と渡って売り子へ届いておりました。バケツのような容器を抱え足下にまき散らしながらポップコーンを頬張る客、毒々しいブルーの綿菓子、スーパーサイズのコーラ。健康的な環境と不健康極まりない食。まぎれもなくアメリカの風景です。
私の席の左隣は家族連れ、右隣はTシャツ短パンのお兄ちゃん、マリナーズ側のスタンドですが、両隣とも地元エンゼルスファンに陣取られました。アメリカ人は知った人であろうとなかろうと、すぐ話かけてきます。同じチームのファンと知って、私の頭の上で両隣のアメリカ人同士が喋り始めました。彼らはエンゼルスにヒットが生まれるたびにエスカレート、何とも居づらい状況になってきました。日陰だった私達の席でTシャツ短パンのお兄ちゃんは、寒さに身をかがめたり立ち上がって踊り出したり。同じスタジアム内でも日陰と日向は夏と冬のような気温差があります。最初からそんな薄着しなきゃいいのに…と思うのですが、冬でもこういう格好して平気な顔をしているアメリカ人がいっぱいいるのです。
イチローの打席に控えめに拍手をしていた私に気づいた左隣の家族連れの奥さんが、「スズキって自動車会社の名前みたいネ。」と私に聞こえる程度の小声でボソッ。この日は凡退が続いたイチローに少々欲求不満気味の日本人観客でしたが、そうこうしているうちにエンゼルスの長谷川がリリーフ登板。私もこの時とばかり人一倍大きな拍手で迎え、両隣のエンゼルスファンにアピールしましたが、その長谷川はボッコボコに打たれ、「早く次のピッチャー出して!」と隣りの奥さんが叫び出す始末。点差が開いたおかげで佐々木の登板もなく、日本人にはイマイチのゲームでしたが、試合の面白さ以上に、アメリカ人のスポーツ観戦のポジティブな楽しみ方を満喫した1日でありました。
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