Vol.6 ある日の事件
ある日曜日、部屋で友人からの電話待ちをしていました。割と几帳面な人なので、かけてこないなんておかしいなあ、でも週末だから出かけているのかもね、と思いながらアパートの外に出るとビルのフロントドアーに、「電話線がダメージをうけて一時的にディスコネクトされています。当局としては最善かつ迅速な対応を試みております。」という電話局からのお知らせが貼ってありました。オーマイガットなことばかり起るNew Yorkに二年も住んでいると、もうこんなこと位では驚きません。そのうち直るでショ、と歩き始めるとなんとそのブロックにあるすべての建物に、同じ紙が貼ってあるではありませんか。ここにきてさすがに「これはちょっとフツーじゃないかも...」と思い始めそしてその予感は大当り。私の電話はそれから四日間通じなくなりました。
一日目はとにかく何がなんだか解らなかったので、親しい友人と東京の家族には公衆電話から連絡してその旨を伝え、様子を見ていました。二日目には一部で電話が不通というニュースが入り、貼紙もポツポツと剥がされていたので、明日くらいには直る かもと楽観。さすがに三日目位には不便を感じ、四日目ともなると怒りバクハツ。 四日目の夕方、仕事から戻ってくるとアパートの前に近所の人達がいたので、「電話が通じなくてスッゴク困っているんですけどー。」と訴えると、地下で作業中の電話局の人を呼んでくれました。そしてその人からの説明で全貌が見え、怒りを通り超して呆れ果ててしまいました。
なんと原因はその時ストライキに入っていた電話局の労働組合の中の心無い人達が、こうすれば話し合いが自分たちに有利にしかも迅速に進むだろうと、電話配線のボックスの鍵を壊して乱入し、無差別にその中の線を切ってしまったという信じられないもの。その結果マンハッタンの東側14丁目から29丁目にかけて、約700軒で電話が不通になってしまい、東15丁目にある私のアパートも被害に遭ってしまいました。
何しろスト中なので、電話局に抗議の電話しても、「ストライキ中につき応答できません。」というレコーディングが流れるだけで、怒りをぶつけることすらできません。 どうせやるんだったら、ホワイトハウスとかウォールストリートとかにすればいいのに、私達みたいなか弱い一般人を狙うなんて!結局組合に入っていない人が駆り出され、まず切られた電話線を直してから、被害のあった家を一件一件訪ねて部屋のジャックとちゃんとつながったか確認する、ということになったらしいのですが、トーゼン誰もそんなこと知らせてくれない。あの親切な近所の人達のおかげで助かりました。
「あのねー、そういうことになったんだったら、ちゃんと言ってくんないと解んないでしょーが。」、と一言文句を言うと、「でも昼間行ったとき留守だったから。」という、膝から力が抜けるような答え。だったらどっかに書いといてよ。「ワタシは一人暮しの上、昼間働いているんです!」と主張すると「でも今日の作業は終わったから明日の昼間にしてくれる?」だーかーらー、昼間はいないんだってば!あまりに私がピーピー騒ぐので、かわいそうになったのかメンドくさくなったのか、渋々直してくれました。作業員のおニイさんによると「朝4:00から復旧作業で、もうクタクタ。」とのこと。
その翌早朝、突然ドアのベルが鳴るので何かと思って急いで出ると、「電話局ですが お宅の電話通じてますかぁ?」ああ、もういーかげんにしてほしい。 こういうことが起る度、会社の同僚達は "Welcome to The New York City." と言ってニッコリと私に微笑むのです。
追伸:
前回のエッセイで「サバイバーという番組をテレビで放映していて、割と人気がある」 ということを書きましたが、これは「割と」どころかCBS局のこの夏の大ヒット作でした。今手元にあるニューズウィークによると13回あるエピソードの12回目の視聴率 は堂々の全米第一位、2870万人が見ました。ハマったのは私だけではなかったのね。 表紙も最後に残った4名ですが、優勝者は最終回の翌日になんと新聞の一面を飾りま した。
最終回は一体何人視聴者がいたのか解りませんが、当日は各地で「サバイバーパーティー」(要するに誰かの家に集まって、皆で一緒に番組を見て騒ぐ)も開かれ、すっかりお祭りムード。その後もCBSはことあるごとにこの人達をテレビに登場させているので、今や彼等はちょっとした有名人。プレーボーイ誌から「ぜひヌードに」という要請をもらっている人もいるそう。
また前回、当時残っていた6人のプロフィールも書きましたが、記憶に頼って書いたのでチョット間違っていました。大勢に影響はないと思いますが、万が一日本で放映された場合「平田さんていいかげん」と思われてしまうので、ここに訂正いたします。
男性は30代の医師、30代のゲイの会社経営者、70代の元海軍特殊部隊員、女性は20代 のリバーガイド、20代の可愛い美大生、そして母であり妻でもある逞しい30代のトラック運転手でした。なお優勝者は私の予想通りの人でした。
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