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Vol.8 ギフトレシート

11月後半のサンクスギビングに始まり、クリスマス、ニューイヤーと続くこの時期をこちらではホリデーシーズンといい、この期間人々はギフトショッピングに走ります。日本でいうお歳暮やお年始の、家族・友人版です。とにかく皆大量のショッピングをするので、デパートやおもちゃやなどでは50%オフセールをしたり、また日曜日のニューヨークタイムスには、大量のクーポン券が入ってきます。私もアメリカの大学に通っていた時、「クリスマス、家に来ない?」と誘ってくれた親切なクラスメイトの御両親に、思いがけずとても沢山のギフトを頂いて感激したという思い出があります。

そのようなシーズンが終わった頃の、ある朝のこと。会社のデザイナーの一人(女性、独身、やや年配)が「ねぇ、ちょとコレ見てよ!」と私の目の前に一枚のシャツを広げて見せました。う〜ん、シャツ、ですね。バナナリパブリックの。「友達がくれたんだけどね」ハイ。「ポリエステルよ!」So?「ワタシはポリエステルなんかじゃないの!」あーハイハイハイ、わーかりました、わーかりました。アナタは自分が「シルクなオンナ」っていいたいワケね。いいじゃないの折角友達がくれたんだったら、ありがとうって着れば。そんなことばっかり言ってるから、アナタっていつまでたってもヒトリなのよ!と心の中で言いかけてから、「でも、ということは...私にもこういうヤナ部分があるに違いない。いけないいけない、気をつけなくちゃ」と人のフリ見てしばし我が身を反省。しかし怒りの納まらない彼女は、「とにかく昼休みにお店に返しにいく」などと言い始めるではありませんか。えー、いくらあなたが押しの強い女だって、まさかそんなこと...でもなんと、それがちゃんとできるんです。

つまりこういう仕組になっているのです。ある人が誰かさんに、カルバンクラインの$100のシャツを買ったとします。その際お店の人に「ギフトレシートを添えてください」とお願いします。すると金額がバーコード表示になっているレシートを、同封してくれます。そして受け取った人が万が一、サイズが合わない、同じ様なものを持っている、色が嫌い、ただ単に嫌いなどという場合、このレシートと品物を持ってカルバンクラインに行くと、そこで同じ金額の別の商品にとり替えてくれるか、またはお金は返してくれないのでとりあえずストアクレジットという形にしてもらい、後日そのお店に出直して、同じ金額分のショッピングができるのです。そしてたとえそのシャツの購入先が、オクラホマであろうがネブラスカであろうが、ちゃんとニューヨークのお店で取り替えてもらえます。なかなユニークなシステムですが、これは比較的最近できた制度だそうです。またもしこのギフトレシートが入っていなくても、そこのお店のタグがちゃんと着いていれば返品または交換可能だそうですが、この場合「買ったときは$100だったのに、返品しにいったらセールで$50になっていた」とか、逆に「その日限りのセールで50%オフで買ったものが、返しに行ったら元の値段に戻っていた」などというコンランも生じます。

それだったら最初から商品券でも送って、好きなものを買ってもらえばいいんじゃないのと最初は思いました。しかしよく考えてみれば、贈り合うのが商品券になってしまったら、クリスマスの朝ツリーの前に集合して、包み紙をビリビリと音をたてて開ける楽しみもなくなってしまいますし(私たちのように、綺麗にセロテープを剥がすなどということを、しないのがアメリカ人)、それと同時にプレゼントを買って贈るという楽しみもなくなってしまう。かといって、自分にゼッタイに似合いそうもないピンクのフリフリブラウスを、よりによってボーイフレンドのママから貰ってしまい、この先一生着ないであろうこのブラウスを、タンスの引き出しを開ける度横目に見て、毎回自責の念にかられるのも困りもの。なんか回りクドイ方法ですが、一応贈る人と贈られる人の、両方の立場を守ってくれているシステムです。

それにしてもこれに限らずアメリカ人は、買ってきたものの思っていたように機能しなかったとか、やっぱり気が変わったなどとよく返品をします。私も窓にプラントを取り付ける枠を買いに行ったとき、「これが家の窓枠に合うかどうか、解んないんですが」と売り場の人に言ったところ、「合わなかったら返してください」というので、「でも開けちゃって構わないいんですか?」ときくと「全然」といわれました。そしてそこにある商品をよく見ると、誰かが開けたのを包み直して単にセロテープで留め直したものがゴロゴロしていました。これが日本であれば、こういった状況に対応できるパッケージでも出てきそうですが、何しろ皆大らかなので気にしない。

これも私がアメリカの大学に行っていた時のことですが、年末に「来年のカレンダーをデザインする」という課題がでました。このときあるクラスメイトがどこかのファッションメーカーのカレンダーをデザインしたのですが、それはそこの商品をカラーコピー機の上に綺麗にレイアウトして撮った作品でした(マック以前の話)。そのとき教授が「これ全部君の洋服?」と聞くと、「いいえ、デパートで買いましたがコピーをとったあと返品して、そのストアクレジットをクリスマスショッピングにあてました」と得意気に彼女は答えました。教授も教授で「それはグッドなアイデアだ」と感心。そういえば音楽会に着ていくドレスを、その次の日に返しに行った子もいましたっけ。「タグを外さないで着るのが大変だった」そう。私の知人も先日天井に付ける大きなファンを買いましたが、いざ箱をあけて説明書を読んでみると意外にメンドクサイことが分かり、そのまま閉じて返しました。という訳で、アメリカで何かを買った場合、先人が触れた可能性が大いにあるので、壊れていないか、汚れていないか、またネジなどの部品が不足していないか、よく確かめたほうが良いかと思います。