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Vol.9 地下鉄でのお楽しみ

ここ何年かでニューヨークはどんどんきれいで安全な街になり、それと同時に地下鉄もきれいになりました。80年代落書きアート大全盛の頃に比べたら、信じられないくらいに。と同時に「あれがニューヨークらしかったのに」とも思います。そして新車両も登場。登場したての頃は「ねえ新しい地下鉄に乗った?」などと喜んでいましたが、新しいといったって感じとしては千代田線くらいのもの。地下鉄に関しては、東京のほうが何倍進んでいるか判りません。車体だけでなく駅の構内もずいぶんマシになりました。以前はどの駅も夏は全館暖房でしたが、一昨年くらいからいくつかの主要駅に冷房も入りました。最もこれも最初はちゃんと機能しなかったというところが、いかにもニューヨーク。

日本で電車や地下鉄に乗るとドアーの所に、「手をはさまれないようにご注意ください」とカニさんのイラストなどが書いてありますが、ここニューヨークではヒトはドアーよりも強し。その証拠に「DO NOT HOLD DOORS」つまり「ドアーを押さえないでください」と書いてあります。どういうことかというと、たとえば地下鉄が来ます。すぐ来るときもありますが、信じられないくらい待たされることもあります。来ないことだってあります。ですから乗るべき地下鉄が来たら、駆けこんででも乗り込まなくてはなりません。そのときに良く見かける光景ですが、男女のカップルの場合男性がまず駆けこんで、後から来る女性のために力ずくでドアーを押さえて待つのです。これはなにも夫婦や恋人同士だけでなく、母とその息子や友人同士でもやります。中にはヨタヨタと走ってくる私のために、「早く!」といいながらドアーを押さえてくれる、親切な見知らぬおじさんもいます。

こうして無事乗り込める人もいれば、志半ばで挟まれる人もいます。そういう人のために駅員は仕方なくほんの一瞬ドアーを開けます。すると乗れなかった人がどやどやと乱入します。また人が挟まれます。またドアーを開けます。もっと人が乱入します。かくしてピンポーン、ピンポーンという音とともにドアーは何度も開閉され、なかなか出発しないので乗っているこちらとしてはイライラするし、地下鉄もますます遅れるという悪循環が起ります。

さてやっと閉まって出発。しかし車内を見渡すと混んでいるのは入り口付近だけで、中は比較的余裕があります。つまり乗ってから順繰りにつめて行けばこんなことにはならないのですが、私たち日本人のように「限られたスペースの中でコンパクトに暮らす」、ということができないため、こういうことが起ってしまうのです。でもお年の方や赤ちゃん連れのお母さんにはさっと席を譲りますし、チビな私が重そうな荷物を持っていると、「座る?」といって譲ってくれます。こういうところはアメリカ人のとても良いところ。

ところでどこの駅にもかならず一人二人ミュージシャンがいて、これがなかなか現れない地下鉄を待つときの、いいヒマ潰しになります。最近見かけた中で面白かったのは、14丁目ユニオンスクェア駅にいたランバダおじさん。持参のカセットで日本でも以前流行ったランバダを流し、それにあわせてパートナーと踊るのですが、良くみるとこれが人形。周りに人の輪ができるほどの大ウケでした。47丁目ロックフェラーセンターの所によくいる二人組みは、片方がギターでもう片方がバイオリン。電車の線路を隔てて別々のホームに向かい合って座りデュエットするのですが、途中電車が入ってきて音が中断されても演奏し続け、電車が去った後はちゃんと音があっているという素晴しさ。

私は地下鉄の構内では、トーゼン誰でも勝手に来てパフォーマンスをしたり、楽器を引いたりしていいものと思っていましたが、なんとこんなところで演奏するにもちゃんとオーディションがあるという、驚きの事実をつい最近知りました。聞いた話によると、係の人の前で演奏して見せ、オーケーが出た人にだけ許可書が発行され、それなしでは構内での演奏活動はできないそう。良く考えてみればこれだけ目立ちたがり屋の多いニューヨークですから、そうでもしないと構内はミュージシャンだらけで、収拾がつかなくなるでしょう。

そしてこれは日本に何年遅れることになるか解りませんが、トークンが次第にプリペイドのサブウェイカードに変わっていきました。そしてこれも「やっと」という感じですが、カードの自動販売機も登場。最も最初の頃は使い方がよく解らないのか、機械を信用していないのか(私もそうでしたが)、またはお釣が1ドルコインで来るの嫌なのか(25セントと似ていて紛らわしい)、ブースにならんで買ってる人もたくさんいました。

現在ニューヨークの地下鉄・バスは均一料金の$1.50。$15で一回おまけのついた11回カードが買え、$4で一日フリーパス、$17で一週間のフリーパス、$63で一ヵ月のフリーパスが買えます。このカードはバスも使えますので、日本と比べたらとてもお得。おまけに治安がよくなったためかなり夜遅くまで、週末などは夜中過ぎても安全に乗れる様になりました。