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Vol.12 ニューヨークシティマラソン

9.11の事件のため、中止になるかと思っていたニューヨークシティーマラソンが、今年も例年通り十一月の第一日曜日に行われました。私は三年前ニューヨークに来て以来、毎年ボランティアとして参加していて、今年で四回目です。部署によって少の違いがありますが、大抵は朝8時か9時に最終ゴール地点のセントラルパークに集合。まず割り当てられた仕事の大まかな説明を聞いた後、T-シャツ、雨風避けの膝下まであるビニールコート、それにサンドイッチと水が支給されます。今年はあんな事件があったから、さぞかし警備が厳しいだろうと、その辺にいるお巡りさんに尋ねたところ、「警官400人に私服警官が200人くらい。FBIも来ているよ」という、超豪華警備陣。

他のボランティアの人と話しながら、待つこと数時間。やがて遠くのほうから、パラパラとヘリコプターがこちらに向かってくると、「そろそろ先頭ランナーが近づいてきたな」と思います。最初に入ってくるのは、車椅子での参加者。早くにスタートするので(聞くところによると朝6:00くらいにスタートするらしい)、12時近くになると最初の車椅子ランナーの人がゴールインします。その後1時くらいになると、男子の先頭ランナーがゴール。少し遅れて女子の先頭がゴール。その後2時から4時位の間に沢山の人ががゴールになだれ込んで来ます。私たちボランティアの第一番の仕事は、この入ってきたランナー達を「ほめまくること」です。ランナーは疲れています。長〜い距離を走りまくってきたので、ゴールしたときはヘロヘロです。そこでボランティアは彼等を「Congratulations! You did it! You made it! Good job! Nice work!(おめでとーございます!やりましたね!すごいですね!)」とほめてほめて、ほめちぎります。彼等のリアクションも様々で、私たちに握手を求める人、「イエーイ!」といってパチンと手を合わせる人、逆に「君達のおかげだよ。君達は素晴しい」と私たちをほめてくれる人、そしてドサクサに紛れて私にキスした、イタリア人のセクハラランナー等など。

最初の年、私の係はフィニシュラインのすぐ後ろでした。このとき驚いたのはゴール間近、あるいはゴールした後、やおらゲロゲロ吐く人がたくさんいたということでした。この光景を見て初心者の私は「ひえ〜」とただただ驚くばかりでしたが、こんなことは見慣れている、あるいは自分もそういう目にあったことがある、主催者のニューヨークロードランナーズの人々は、あらかじめ用意してあった砂をシャカシャカ蒔いて、何事もなかったかのごとく手際よく片付けていたので感心。

去年はランナーを探している迎えの家族、又は家族とはぐれてしまったランナーに、どこへいけば会えるか指示する伝言係でした。私が「迷子はいないか」と見渡していると、そばに5〜6人のグループがいました。その中の一人がランナーのガールフレンドらしかったのですが、しばらくして彼が登場。皆に「おめでとう、よく頑張ったよね」などとほめられている中、いきなり彼女の前にひざまずき、ジャージのポケットからおもむろに小さい箱を取り出し開けると、なんとそこにはダイヤモンドの指輪が...「結婚してください」とプロポーズする彼に他の人は、「えー、こんな時にこんなところでプロポーズ!!!?」と驚くばかり。「オーマイガット」を連発する皆の前で彼女は泣くしで、周りで見ていた私たちも唖然。

ところで私は生まれつきのスポーツ音痴で、運動神経ゼロ。走ったことなどほとんど無く、今まで走った最長距離が、1キロメートルという情けなさ。この1キロ走った時でさえ、心臓が壊れるかと思ったくらいです。こんな私が何故マラソンのボランティアをすることになったかというと、三年前、当時新しい男性との出会いを求めていた私の友人が、「こういうところでボランティアをすれば、爽やかスポーツマンみたいな人と知り合えるかも」などと言い出し、しかし当時は私もヒマだったので「ナルホド」と彼女の提案に素直にうなずき、二人でサインアップしました。当然、こんなよこしまな心をもつ私たちに、爽やかな出会いなどあるはずもなく、でも毎年他のボランティアの人達と、朝早くからワイワイ騒ぐのが楽しくて、今まで続いているのです。

 

追伸:前回のワールドトレードセンターの話で登場した、私の会社のレベッカのボーイフレンドのお兄さんは、結局見つからないまま家族が死亡届けを出しました。ショックの大きい彼のために、レベッカは少しの間会社を休んで、彼となるべくたくさんの時間を過ごすことにしましたが、二週間くらい前に復帰したいとの電話がかかってきました。そのとき聞かせてくれた話ですが、ある日二人で海岸を散歩していると、「彼が『ねえ、どう思う?』って聞くから振り返ると、ダイヤのリングを差し出しながら、『ずっと一緒にいたいと思う?』ってプロポーズしてくれたのよ〜ん」とのこと。ニュースでも聞きましたが、あの事件以来婚約するカップルが急激に増え、ダイヤモンドの売れ行きが伸びるという、まさに風が吹いて桶やが儲かる現象が起きているそう。悲しい事件でしたが、唯一の救いは、人々が他の人に対して深い思いやりを持つようになった、ということではないでしょうか。