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Vol.15 宿敵 ボストンVSニューヨーク

その昔アメリカ東海岸にあった大きな都市は、フィラデルフィア、ボストン、ニューヨークの三つでした。そしてその後ニューヨークだけが大出世して、世界に名だたる大都市になりましたが、残された二つの都市、特に古い港町ボストンにとって、これは面白くない出来事。これだけが原因ではありませんが、ニューヨークとボストンとの間には、根ぶか〜いライバル意識があるのです。これは東京対大阪と言うよりも、東京対ヨコハマの関係に似ているような気がします。

「まあそのライバル意識っていうのは、主に今はスポーツに関してなんだけどね」
ニューイングランド地方で生まれ育ち、今でも家族のほとんどがボストンにいるビルは言います。大のスポーツファンの彼が「マイ・チーム」と言う時、それは野球のボストン・レッドソックスであり、アメリカンフットボールのニューイングランド・ペイトリオッツであり、バスケットボールのボストン・セルティックスなのです。今年のスーパーボールでは、このニューイングランド・ペイトリオッツが初制覇し、ボストン市民は狂喜乱舞。その様子を見て私の会社のニューヨ−カーのジョーは、「あーまったく!ニューイングランドなんて、大ッ嫌いだ!」とイライラ。

ジョーはその昔、近所の親戚友人を三十人ばかり集めてマイクロバスを借り、わざわざレッドソックスの本拠地フェンウェイ球場に、ニューヨークヤンキースを応援に行ったこともあるのです。そしてその帰り道のこと。
「道が解んなくなって、そのへんの人に聞くんだけど、俺たちの車がニューヨークナンバーなもんだから、ボストンの奴らバカにしてウソばっか教えるんだよ。散々ぐるぐる回って、やっとチャイナタウンに着いてシーフードを食べたんだけど、あれはウマかったー」
そう、港町ボストンは、シーフードが物凄く美味しいのです。

ヤンキース対レッドソックス戦というのは、日本でいう巨人対阪神戦のようなもので、チケットは早い内に売り切れ。ヤンキーススタジアムの外では、BOSTONとSOXをもじって「BOSTON SUCKS(ボストン サックス=ボストンサイテ−)」というTシャツが売られ(もちろんフェンウェイ球場では、「YANKEES SUCKS」というシャツを売っています)、球場の中には「I HATE YANKEES!(ヤンキース、大ッ嫌い!)」というプラカードを掲げた、ボストニアン御一行様。そのボストニアン達に、「おめーら、人のホームグラウンドに、そんなカード持ってくるんじゃねーよ!」とキレまくり、カードを奪ってビリビリと破り捨てるニューヨ−カー達。

この二つのチームが、これまた因縁の仲。今から80年以上も前の1920年、レッドソックスのオーナーは、当時バンビーノというニックネームだった選手を、ヤンキースに金銭トレード。そしてそのお金を、自分が手掛けていたブロードウェイのショーに注ぎ込み、ショーはヒットしたものの、トレードされた選手の恨みか、その後はツキに見放され、なんと1918年のワールドシリーズ優勝を最後に、一回も優勝していないのです。これは「Curse of the Bambino(バンビーノの呪い)」といわれる有名な話ですが、このバンビーノというのはあのベ−ブ・ルースのこと。こともあろうにレッドソックスは、ベ−ブ・ルースをヤンキースに、それもお金で売っぱらってしまったのです。

そんな歴史があるため、レッドソックスの優勝はボストン市民の悲願。今シーズン始めのレッドソックスは、勝率七割という負け知らずの快進撃。しかし「今年こそは優勝を...」という市民の願いも空しく、ここのところ負け癖が出てしまい、一位のヤンキースに5ゲーム差をつけられています。アメリカンリーグの東地区は大体ヤンキースとレッドソックスが首位を争い、シーズン中盤までは1ゲーム差とか1.5ゲーム差とかで競り合っているのですが、中盤を過ぎたあたりでいつもレッドソックスがグズグズと負けだすパターンが多く、「今年もバンビーノの呪いは存在した!」と、ヤンキースファンは喜ぶのです。去年などは結局13.5ゲーム差で、ディビジョンシリーズにも出られないありさま。先日はかつての大打者、テッド・ウィリアムスも亡くなってしまいました。ヤンキースファンの私ですが、今年くらいはボストンに花を持たせてあげてもいいかな、と思っています。

追伸---WTCのその後
ワールドトレードセンターの跡地もきれいに片付き、先日そこに建設するメモリアルパークと、新ワールドトレードセンターのデザイン案が発表されました。確か5〜6案くらいありましたが、ニューヨ−カーの反応はというと、「どれも好きじゃない」。それと同じころ、「新ワールドトレードセンターの建設は必要か?」というアンケートもありました。面白いことにYESと答えたのがブルックリンでは65%だったのに対し、クィーンズ・ブロンクスではたったの35%。つまりYESとNOの割合いがひっくり返っているのです。理由に関しては特に発表されていなかったと思いますが、私が思うに、ブルックリンからはワールドトレードセンターがよく見えたので、ブルックリンの人はことのほか寂しいのでは。かつて私が住んでいた、ブルックリンのアパートの窓からもよく見えました。