社団法人日本パッケージデザイン協会   E-mailによるお問い合わせ
  個人情報の取扱いについて
JPDAトッップページへ 著作権およびリンクについて


Vol.16 FDNY

今のニューヨークでヒーローといった時、それはスーパーマンでもスパイダーマンでもなく、ワールドトレードセンターのテロ事件で、多数の死者を出しながらも大活躍した、Fire Department City of New York(ニューヨーク消防局)、通称FDNYのファイヤーファイター達です。毎年ハロウィンの仮装では、その時に話題になったり人気だったりした人が、仮装の対象になりますが(数年前は、クリントンとモニカ・ルインスキーだった)、去年も今年も子供に大人気なのは、このファイヤーファイターと、同じく大活躍したNYPD(New York Police Department=ニューヨーク市警察局)のコスチュームです。

ニューヨークでは、ある職業がある一定の人種で占められることが多くあります。例えばクリーニング屋は中国系、デリは韓国系、ダイナーはギリシャ系、ニューススタンドはインド・パキスタン系、弁護士はユダヤ系の人といった具合。そして、ファイヤーファイターやポリスの大多数を占めるのは、アイルランド系の人たちなのです。

実は私は9.11の事件よりずっと以前から、ファイヤーファイターの人を見る度に、「かっこいーッ」などど騒いでおりました。というのもファイヤーファイターというのは
1)ユニフォーム姿である→凛々しくて、カッコイイ
2)人命に関わる仕事である→使命感に燃えていて、カッコイイ
3)訓練で、ビシッ!バシッ!と鍛えられている→逞しくて、カッコイイ
それに「アイルランド系のルックスが好きだ」という、私の超個人的な好みも手伝って、「キャー、かっこいーッ」(シツコイ)、となってしまうのです。ニューヨークのファイヤーファイターには、「消防士」というよりこのファイヤーファイターという呼び方が、よくきまります。

しかしそう思っていたのは、私だけでなかったことが判明。ある日会社の同僚に「ねえ、ファイヤーファイターの人たちって、すっごくかっこよくなあい?」と聞いたら、「えー、とーぜんよ。だって使命に燃える熱〜い男たちだもん」という答えが、即答で返ってきました。そしてなんとなんと、彼等をモデルにした、アイドル顔負けのカレンダーもあるのです(http://www.fdnyfirezone.org/store/store_index.html)。このカレンダーはここ数年前から製作されているそうで、収益金は火災の予防に使われてきましたが、今年発売の2003年の収益は、ワールドトレードセンターの犠牲者の家族のためにも使われるそう。悲しいことに今年のカレンダーになった12人のファイヤーファイターのうち3人が、あの事件で命を落としました。また、ワールドトレードセンターがバックに写っていたものは、違うショットと交換されました。

ところでファイヤーファイターの人たちは、交代制で消防署に寝泊まり、共同生活をおくっています。食事も自分達で作るので、時々スーパーで5〜6人のファイヤーファイター達が、山盛りのひき肉やらポテトやらベーコンなどを、カートいっぱいに買い込んでいるのを見かけます。そして信じられないことですが、こういう近所の買い物に、消防車を自家用車代わりにしてやってくるのです。これは法的に認められていることなのかどうか解りませんが、つまり彼等は消防車に乗ってスーパーに来るのです。また私の友人が以前目撃したことですが、駐車中の消防車の中から、一人のファイヤーファイターがマイクで何やら叫んでいたそう。よくよく聞いてみると、どうも彼の友人を見つけたらしくて、その人に向かい「オーイ、お前元気かー」などと叫んでいたそうです。

私には今のところファイヤーファイターの知り合いはいませんが、近所の消防署の前を通った時、ハーイと何回か挨拶をされたことがあります。テロのあとその前を通った時、その消防署から犠牲になった人達の写真が貼ってありました。私は私に挨拶してくれた、ファイヤーファイターの名前を知らないのはもちろんのこと、顔もうろ覚えだったので、その前を通る度に、「何となくこの写真に似てるみたいだけど、でも違うような気もするし...」と、複雑な思いをしていました。何ヶ月かたったある日、そのファイヤーファイターが働いているのを見かけた時は、他人事ながらほっとしました。

今年の9月11日は、色々なところでセレモニーがありました。それと同時に、あの日の映像を偶然写した、フランス人のフィルムメーカーの作品「9.11」も、初めて民放局で放映されました。日本でも放映されたので、御覧になった方もたくさんいると思います。こちらでは事件の半年後に、ケーブルテレビで放映されたので、今回が二回目です。これはもともと、新米のファイヤーファイターが九ヶ月の訓練期間を終え、一人前になるまでのドキュメンタリーフィルムでした。そのドキュメンタリーの主人公になるはずだった、新米ファイヤーファイターのトニーの顔が、番組の最初にはただの若い男の子なのに、最後の方、事件後しばらくあとにとったと思われるインタビューでは、ちゃんとファイヤーファイターの顔になっていました。「あの事件のおかげでこいつは、九ヶ月どころか、九時間で一人前になっちゃたよ」という、先輩ファイヤーファイターの言葉が印象に残りました。