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Vol.17 Obese

ニューヨークへ来て、今年で早くも五年目になりました。様々なカルチャーショックに打ち勝ってきましたが、今だにどうしても、ど〜しても納得できない事があります。それは「なぜこの国はこんなにも喫煙に厳しく、肥満には寛容なのか」ということです。今現在、たばこはひと箱約$8。アメリカにお越しのさいは、成田の免税店でたばこをかってくる事をお薦めします。

ニューヨーク州ではパブリックスペースは禁煙(ただし路上はオッケー)。レストランでもテーブル席での喫煙は禁止ですが、イタリアンレストランとかフレンチレストランとか、もともと喫煙者が多く、しかもこの嫌煙運動をバッカバカしいと思っているところは、例外もあります。喫煙はこれまでバーカウンターのみ許されていましたが、これも禁煙になるという法律が決定。理由はバーで働く人の健康のため、ということです。私はノンスモーカーですが、このニュースを聞いてさすがに、「へ?」と思ってしまいました。だってじゃあ、工事現場で働く人とか、ゴミを集める人とかはどうなの?塗装の仕事とかだって健康に悪いはず。何か納得がいかないんですね〜、このアメリカの異常な嫌煙運動。確かに健康に良くないかも知れませんが、「だったらこの異常な数の肥満者はどうなんだ!」という事で、実は私は今デブに対して、ヒジョ〜に厳しいのです。

私が働いているのは、普通のアメリカのデザイン会社です。同僚達の体型もそれなりに太め。オフィスのキッチンには、頂き物のチョコレート、誰かが買ってきたドーナッツ(それも一ダース)、誰かがわざわざ焼いてきたチョコチップクッキー(激甘)、ナッツ類やポップコーンと、いつでもおやつがテンコ盛り。日本にいた時はポップコーンなど、ニ年に一回くらいしか食べた事がなかったのですが、「その不足をここで取り戻さなきゃ」などと皆にヘンな励ましをされて、勧められるまま食べていたら、一年後体重は2キロ増。しかし「エ〜ン、太ったヨ−」と嘆く私に向けられるのは、オフィスメイトの冷たい視線...
「太った!?へ−、つま先にでもお肉がついたのかしらッ!」
そりゃ〜、あなた達とはくらべものにはなりませんわ。しかし私のこの「太った」発言は、マジで皆をイラつかせたようだったので、仕方なく独り静かにダイエットを決行。ダイエットといっても、これらのおやつを食べるのをやめただけでしたが、それでもちゃんと体重は元に戻りました。

少し前のタイム誌でこのアメリカの肥満問題に触れていましたが、統計によるとアメリカの成人の35%がオーバーウエイト、26%が極度の肥満で、つまり人口の61%が何らかの形で太っているという事です。この26%の、体型がコマ状になってしまった巨デブの人たちをObeseといいますが、街ではこのような人たちに、本当にしばしば遭遇します。健康という事から見れば、こっちの方がよっぽど問題では。そこで私は知人のアメリカ人に、
「今たばこが8ドルくらいでしょ。だったらドーナッツいっこ5ドルなんてどう?」
と提案したところ、
「え〜、5ドルのドーナッツっていったら、こ〜んなに大っきくて、クッションみたいにフッカフカかなー」
も−、人の話をよくお聞き!私は5ドルのドーナッツを作るとはいってないぞ。今あるドーナッツを5ドルにしろといっているのだ。なのに彼の頭の中は、「クッションみたいにフッカフカのドーナッツ」に占領されてしまったため、その後の私の話なんて聞いちゃいないのです。

先日、ファストフードを食べ過ぎて巨デブになったおじさんが、「牛肉だから体に良いと思って食べていたら、こんなになってしまった!」と、マクドナルドやバーガーキングなどを訴えてましたが、この一件で私のデブ嫌いは頂点に達しました。全くこんなくだらない事に、真面目に取り組まなくてはいけない食品会社に、心より御同情申し上げます。また航空会社では将来、あまりに巨大化した乗客には、二人分の座席料金を請求するという事ですが、それというのも寄せられる苦情ナンバーワンが、「隣の人が肥っていて、非常に狭かった」というものだからだそうです。これに関して私の会社では、
「じゃあチケットを買う時、身長体重、胴回りをいうのかな」
「でも『買った時は痩せていたのに、その後異常に太りました』とか言う人もいるかも」
「一体どうやって判断するの?」
と、疑問は深まるばかり。

ところで、「肥っている人は自己管理能力ゼロという事で、出世できない」というのは有名な話ですが、「それは日本でも同じですか?」と聞かれた事があります。「いいえ日本には、スモウレスラー以外に、あんなデブはいません」と答えた私なのでした。