Vol.23 シルバーパワー イン ニューヨーク
ニューヨークでは八月末の四日間、共和党全国大会が開かれたため、その期間中ますますセキュリティーが厳しくなりました。お巡りさんはそこら中にいるわ、道でマシンガンを持った人を見かけるわという異常ぶり。
「ただでさえテロの標的になってて、おちつかない毎日なんだから、そんなのどっか目立たない田舎でやってよ〜」
という私にアメリカ人の隣人のジェームスは、
「『我々は何も恐れていません』ってアピールしたいんじゃないの?それにこれは僕の考えなんだけど、逆にニューヨークが適していると判断したんだと思うよ。だって 9.11以来皆非常事態に慣れているし、警察官だってどこの州よりも訓練されてるでしょう。何か起ったら他の州じゃ対応出来ないよ」
そうなんですかね。確かに9.11以降ニューヨークでは、美術館に行ってもヤンキースタジアムに行っても手荷物検査が義務付けられ、飛行機は国内機でさえ身分証明書の提示を求められ、そのうえ私のような観光客でない長期滞在ビザ持ち外国人は、アメリカ再入国の際指紋も写真もとられてしまう。まったくやりにくいったらありゃしません。
ところで私の周りは、大半が反ブッシュ派です。というか、ニューヨーク州は元々民主党派の州で、前回書いた同じフロアに住むレイチェルお婆ちゃんも、かなり年期の入ったアンチブッシュ。何しろ、パパブッシュのころからのブッシュ嫌いなのです。
実はあの文章を書いたすぐ後、永年連れ添った夫のエラに末期ガンが発見され、彼は六月にあっけなく亡くなってしまいました。子供がいないため、93歳で一人暮らしになってしまったレイチェルが寂しくないよう、周りに住む私達は、ほとんど毎日彼女のアパートを訪ねおしゃべりをしていますが、彼女は相変わらず元気いっぱい。
四年前の大統領選挙の時レイチェルは、
「何であんなバカが大統領になったのか納得いかないけど、まあ次の選挙の時はもう自分はこの世にいないだろうから、あのバカが再選されようとされまいと、知ったこっちゃない」
と思ったのに、意外にも自分はまだまだピンピン生きていて、そしてブッシュは再び出馬。お婆ちゃんの怒りは頂点に達し、29日にセントラルパークで行われる、反ブッシュのデモに参加を表明。しかしデモの日が近づいても、肝心のセントラルパークの使用許可がなかなかおりず、イライラ。それでも怒りに燃えるお婆ちゃんは、
「許可なんかおりなくても、私はとにかく行く」とむちゃくちゃやる気。
「大丈夫?危なくないの?」
と心配する私にケロリと、
「あらだって、友人が一緒だもの」
いやしかし、お婆ちゃんのお友達は、やっぱりお婆ちゃんなんです。
結局セントラルパークの使用許可が降りなかったため、当日はユニオンスクウェアから共和党大会が行われるマディソンスクェアガーデンまで、ブロードウェイを大行進。昔から(それも第二次世界大戦中から)仲良しの、ルースお婆ちゃんとリリアンお婆ちゃんも一緒でした。恐るべしニューヨークのシルバーパワー。この街に永年住んでいると、お婆ちゃんたちだってこんなにタフになってしまうのだ。
デモの前日会社で聞いた話によると、当日の参加者は二十五万人の予定。ヤンキースタジアム五個分の人数です。最終的な人数は、五万人とも五十万人ともいわれてましたが、結局どれが本当の数字だったか解らずじまい。デモを見学にいった南アフリカ人の友人は、
「とにかくもの凄い人、人、人。あんなに人がブロードウェイにいるのを初めてみた。私なんかとても、自分の国に対して、あれだけ抗議するパワーがないわ」
万が一警察の御厄介になった時は、私達が身柄を引き取りに行く予定でしたが、お婆ちゃんは無事戻ってきました。それも、
「オーガナイズの仕方が、今イチだった」
と文句をいいながら。93歳のこのパワー、私達も見習いたいものです。
(2004年9月) |