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Vol.31 Hearing

必要書類を記入した私はワシムに付き添われ、それをチャイナタウンにある市民裁判所に提出しました。そして出廷の日が決定し、その出廷依頼を管理会社にcertified mailという、受け取り証明付きの郵便物で郵送。これは相手が受け取った時にその証明として、return receiptというのが私のところに送られて来るシステムです。が、聴聞会の前日になっても、これが来ない。どうもいやな予感...

そして最初の聴聞会。これをヒアリングといいますが、私は当然目まいがするほど緊張。ワシムもさすがにいつものヘンテコな粗品Tシャツではなく、ちゃんとボタンダウンシャツなどを着ている。でも顔は相変わらず、眠そうなままだ。しかし今の私に頼れるのは、この男しかいない...頼むよ、ワシム。

私が行った市民裁判所の法廷は、カトリックの教会にちょっと似た造りでした。まず正面に裁判官だの弁護士だのが座る一段高い場所があり、柵で仕切られてあります。順番を待つ人は柵の後ろの席に座り、名前が呼ばれたら中に入り、裁判官の前で意見を述べるなり、質問に答えるなりするのです。

開廷の時間が近づくと柵内のドアから、スーツを着た弁護士たち、ケープをまとった裁判長が登場。と、その時、やおらワシムは立ち上がると、弁護士の一人に手を振りながら近づき、親しげに話し始めたのでした。そして、私に手招き。おそるおそる前にでると、
「彼はモレッティ氏。ハウジング課の弁護士で、こっちの見方をしてくれるんだ。こちらはミス・ヒラタ」
などと私を紹介してくれるじゃありませんか。う〜ん、こいつは結構頼れる男なのかも。やはり人間、顔で判断してはいけないのだ。

そして待つこと二時間。結局管理会社もオーナーも現れず、このケースは相手の敗訴になり、工事を始めないといけない日、始めなかった場合のペナルティーなどが書き込まれた書類をもらい、ヘロヘロに疲れながら出社。心配してくれてた皆に経過を報告し、とりあえず最初のヒアリングは終わったのでした。

が、これで済まないのがニューヨーク。一週間くらいして私は、宅急便の封筒を受け取るのです。差出人は、ある弁護士事務所。中を開けるとそれは、管理会社の弁護士からで、今度は相手から私に出廷依頼が来たのです。理由は「オーナーが出廷しなかったのは、ミス・ヒラタからの依頼が出廷日を過ぎてから届いたために、出廷が不可能だった。よって、もう一度審議を御願いしたい」という、超フザケタ内容。つまり相手は、わざと私からのメイルを受け取らず、時間を稼ぎ、弁護士を雇って対策を練っていたのです。

ワシムに連絡すると、「だろうと思った。とにかくその日は忘れずに、裁判所に行くこと」といわれ、二回目の出廷。ここで登場した、オーナー専属の嫌らし〜オバハン弁護士が、「火事になったのはオーナーが火をつけたわけじゃなから、彼のせいじゃない。今は保険会社からの支払いを待っているので、それが来ないと工事が始められない」などとぬけぬけと言い、ホームレスになった私達の人権など完全に無視。しかし、裁判長はこの申し入れを受け入れ、最初の工事命令の日やペナルティーは、全て取り消されてしまったのです。

これに納得いかないモレッティ氏と裁判長の間で、ほとんど怒鳴り合いのディスカッションにまで発展しましたが、私達の言い分は聞き入られず、結局今度はこれに対する私からの a・david in oppositionというのを出し、これを覆す依頼をするという、早くもケースは泥沼状態。

そうこうしているうちに、ジェシカもミウリカばあちゃんも、意を決してこのlegal actionを提出し、それにメアリーばあちゃんも加わり、三回目からは四人で出廷。ヒアリング当日ジェシカは極度に緊張し、今にもその場に倒れそうなくらい。最初はメモを取る手も震えていた私でしたが、「馴れる」というのは恐ろしいことで、三回目ともなると「火事はオーナーのせいじゃないって言ったって、修復は彼の責任でしょ!」などと、裁判官の前で相手の弁護士に意見するのも平気になって来る。

しかし相手は、今月一杯は弁護士の都合がつかないとか、来週はユダヤ教の祭日だとか(ニューヨークの不動産・弁護士業界はユダヤ人が動かしているのだが、なんでこんなことが言い訳になるわけ?)、なんだかんだ言いがかりをつけて出廷日をのばし、全く先が見えないまま七月も終わり。そして事態はある日、全く予想外な方向に展開したのです。

(2007年11月)