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Vol.35 Welcome to the United States of America ー 中編

インドなまりの英語を聞いたことがありますか?独特のイントネーションがあり、非常に判りにくいものです。私の弁護士となったゴーコル・キーシャンはインド人で、当然インドなまりの英語を話す。その上「超」がつくほどの早口。興奮するとその速度はさらに増し、私にはもうお手上げ。そこでゴーコルと話すときは、電話をスピーカーに切り替え、同僚のレベッカにも聞いてもらうという策に出ました。

ある日レベッカと一緒に、ゴーコルに質問していたのですが、彼のあまりの早口に、ネイティブアメリカンの彼女でさえ混乱し、同じ質問を何度も繰り返す。そしてそんな私たちにイライラしだしたゴーゴルは、更なる早口で機関銃のように話しだしたのです。「あのー、Mr.キーシャン、ちょっと待ってくださいよ〜」といったって聞きゃしない。終いにはレベッカがスピーカーに向かって、「ゴーコル!スローダウン!スローーーーダウンーーー」と叫び、やっと静まった。「こいつどっか壊れてるんじゃねえか」と、私はうんざりし、なのにゴーコルの助けなしには、グリーンカードは来ないのだ。でもこんな辛い思いをしていたのは、私だけじゃないのです。

私より少し前に申請していた、グリーンカード奴隷仲間の一人、香港チャイニーズのビッキーは、某有名デパートのデザイン部勤務で、このデパートが彼女の保証人になってました。当時彼女は会社ともめていて、それというのもある書類に会社がサインしてくれず、その書類なしには次の申請の段階に進めなかったからなのです。グリーンカードのプロセスにはいくつかの段階があり、それを一つ一つクリアしていかないと先に進めない。会社がサインしたがらなかったのは、彼女の給料に関する書類で、弁護士からの「移民局を納得させるために、書類上実際の金額より、水増してもよいか?」という申し入れを、大会社故に認めなかったからなのです。

うちの会社のように小規模かつ社長がいい加減だと、数字であろうが私の社内での役職名であろうが、申請に有利ならコロコロと変えてくれますが、会社が大きいとそういう融通が利かない。このためビッキーは二年もの間会社ともめ、結局はその書類をカバーするための資料を、何十万も出して買うことで、やっと解決しました。「あの資料だってあの時点では、有効かどうか判らなかったのよ」という彼女は、それから数年後グリーンカードを手に入れました。懲りたデパート側は彼女以降、グリーンカードの保証人にはならない決定を下しました。

別の奴隷仲間、シンガポール人のフイから、「君の弁護士、どう?」とメイルをもらい、「すごいインドなまりで早口だけど、とりあえず質問には無料で答えてくれる(弁護士によっては、電話の質問でさえチャージが来るのです)」と返信すると、彼は自分の弁護士ともめているという。弁護士自身の「事務所の引越」という理由で、フイの書類作成が遅れに遅れ、そのおかげで申請が9.11のテロ事件以降になってしまい、その後の対応もきわめて遅いというのです。

この9.11、グリーンカードを待つ人にとっても、最悪の事件でした。あれ以来移民法が強化され、ただでさえ遅いプロセスが滞り、その結果私達は長い間待つはめになったのです。フイは「本当だったら、もう最初のプロセスなんて終わってたはずなのに、9.11以降になったおかげで後何年待てばいいんだ!」と嘆き、そして驚いたことにその後怒鳴り合いのけんかの末、彼をクビにして新しい弁護士を雇ったのです。

フイはいつもニコニコ穏やかな人で、コンピューターエンジニアからデザイナーになったため、システム関係が大得意。いうことを聞かなくなった私のマックを、半日かけて蘇生させてくれたこともあるほど優しくかつ忍耐強い。怒ったところさえ想像できないあのフイが、アメリカ人の弁護士を怒鳴りつけたとは。「あんまり頭に来たから、いい加減ちゃんと仕事しろって怒ったんだよ。そしたら向こうが大声で怒鳴りちらして来たんだけど、怒った僕の声の方が数倍大きかった」らしい。フイは私より一年くらい早くグリーンカードが来て、「Green and Free」というパーティーを開きました。グリーンなもの(緑茶とか)を持ち寄るパーティーでした。

私はゴーコルの機関銃英語に応戦する一方で、DG氏の悪行をニューヨーク弁護士協会に訴えるべく、その書類も作成。彼が怒った経緯を細かく説明し、弁護士が書いたとは思えない、人種差別表現を含む彼からのメイル、間違いだらけの書類をプリントアウトして添えた書類は、厚さ一センチほど。後日弁護士協会から送られてきた、DG氏側の言い分によると、「DG氏が感情的にミスヒラタを怒鳴ってしまった日、それは9.11の数日後であり(確かにそうだったけど、だから何?)、DG氏のオフィスは混乱のさなかで(だったらなんで、そう説明しない?)、精神状態も普通ではなかった」そうだ。

それからまた、一年以上経過して、私の怒りもあきらめに変わった頃、弁護士協会から正式に報告があり、それによれば協会側よりDG氏に正式に注意勧告が行き、DG氏のバックグラウンドに「以前顧客に対し、違反行為をした事がある」という、ペケをつけてくれたらしい。しかし去年の火事といい、なぜ私はこういうことに巻き込まれるのか?

(2008年11月)