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Vol.37 Blue State

初の黒人大統領誕生という、歴史的な結果に終わり、盛り上がりに盛り上がった去年のアメリカ大統領選挙。私はこれまで、政治経済に興味がなく、ましてやアメリカの政治なんて、「どーせ人の国だし」と思っていました。しかしグリーンカードをもらってしまい、永住が決定した今、アメリカの未来は私の未来となり、それに加えてこの大不況。遅ればせながら今回の選挙で、政治に目覚めることになりました。

元々私の周りには、政治を語るのが好きな人たちがいっぱいいます。まずは、ニューヨーク通信、22話と23話に登場の、レイチェルばあちゃん。ばあちゃんは今年二月八日に、98歳のバースデーを無事迎え、未だ健在。もちろん去年の投票にもいきました。レイチェルはCNNをいつも見ていて、テレビでコメントしている政治家に対し、一々「That’s good.」とか「Oh, shutup!」とか反応しているから面白い。もっとも自分より25歳年下のジョン・マケインを、「あんな年寄りに何が出来る!」とこき下ろすのには、まいりましたが...

そしてばあちゃんの友人のリリアン。この人も80代だというのに現役の活動家で、今だにナントカ反対デモとかに参加している、すごいばあさんです。極めつけは、大学での専攻が政治学だった、私の彼。当然政治については詳しく、一言も二言もあり、超うるさい。が、私の疑問にはとりあえず全部答えてくれるため、それはそれでなかなか便利。そしてレイチェルは、彼と政治の話をするのが好きです。

さてご存知の通り、アメリカには民主党と共和党という、二大政党がありますが、共和党を支持するのは、富裕層と保守派で、民主党はリベラル派。州によって、この比重はかなり違います。民主党のカラーがブルーである事から、民主党寄りの州をブルーステイトと言い、リベラルなニューヨークは、もちろんブルーステイト。だから私の周りはほとんどが民主党ですが、何事にも例外はあります。どういうわけかうちの会社は、投票権を持つ五人中、なんと三人もが共和党...

この話を人にすると誰もが、「何でこのブルーステイトで、そんな事があり得るわけ?だいたいあなたの会社、クリエイティブ系じゃない?」と、納得いかない様子。ごもっとも。私はグリーンカードは持っていても、アメリカ国民ではないため、選挙権はありません。しかし常日頃、ばあちゃんたちに鍛えられ、今や心は民主党。だから、過去二回の選挙で、同僚三人がブッシュに投票したなんて、恥ずかしくてとても人には言えない。だいたい今回の選挙で、McCain/Palinバッジをつけていたのも、この三人だけだったし(かっこわりー)。

残るもう一人の同僚は、たぶん民主党と予想できるものの、よくわからないのがうちの社長。彼は人がよいので、我が社の共和党員に対し、「大丈夫。きっと君たちの思う通りになるよ」と言いながら、自分の意見は一切言わない。いったい彼はどっちなんだ?

ある日、みんながそれぞれの用事で出払った隙に、何気なく社長に向かい、「あのー、この会社ではみんな、マケインに入れるんですか...ねえ?」と尋ねたところ、彼はハーーーーーーッと長〜いため息をつき、
「ミカコ、残念なことだが、この国には間違った人がたくさんいるんだ。とても恥ずかしくて、とても恐ろしい。次期大統領がマケインになったら、この国は終わりだから、君は日本に帰りなさい」
何だ、彼は民主党じゃん。あの三人の気迫に押されて、言えなかったってことね。あー、よかった、ほっとした。 「ヘー、うちの彼氏も同じこと言ってますよ。そうなったら私たち、日本に逃げますから」 「よし!そしたら僕も行くぞ!三人で東京で、英会話カフェを開こう。そしてこんなアホな国に残った奴らを、せせら笑ってやるのだ!」 と、いきなりやる気のジョイント宣言。

開票当日、私は四年前と同じく、レイチェルばあちゃんを尋ね、二人でしばらくテレビを見ていました。もしかして今回がばあちゃんの最後の選挙かもしれないから、どうしても民主党に勝ってほしい!そして、「オバマになったら、電話するね」と言って、自分のアパートに戻りました。

言うまでもなく、その夜はものすごい騒ぎでした。歴史的な出来事に加え、今私が住んでいるのはハーレム。オバマ氏の母校コロンビア大も、目と鼻の先。初の黒人大統領誕生の瞬間、ビルの中では「うおーーーーーーッ」と言う歓声があちこちで起こり、通りを行く車はクラクションを鳴らしまくり、ヘリコプターは飛び交い、夜中だと言うのに道ではドラムが響いて、人々は踊る。こうして私たちの英会話カフェ in Tokyo案は、白紙となりました。

翌朝、人々は記念にニューヨークタイムズを買いあさり、もちろん私も買いました。路上も地下鉄の中も、ハッピーなムードでいっぱい。しかし我が社に入っていくと、そこはニューヨークとは思えない暗〜い雰囲気。社長は私にコッソリと、「あんまり喜んじゃダメだよ」とささやく。が、そんなん知らんとばかりに、私は買ってきた新聞の一面を、さっと自分のデスクの上に掲げたのです。ザマーミロ。

その日の夜は、ニューヨークのシンボルであるエンパイアステートビルまで、ブルーにライトアップされました。この不況、いつになったら終わるのか、乗り越えられるのか、不安でいっぱいではありますが、Yes, we can!で、がんばりましょう。


おまけは、「私たちの未来は...」と題した、友人から回ってきたジョークメイル。選挙中、私の一番のお気に入りだったサラ・ペイリンが笑えます。



(2009年3月)