Vol.38 Tropicana Discovers Some Buyers are Passionate about Packaging

タイトルが長くなってしまいましたが、これは今年二月のニューヨークタイムスの記事のタイトル。「トロピカーナは、パッケージに情熱的な消費者がいることを、発見した」とでも訳しましょうか。何があったかというと...

去年やっとグリーンカードをもらい、日米間を難なく往復出来る身分になった私。おかげで今年のお正月は、四年ぶりに日本で過ごすことが出来ました。お正月休暇を終えてニューヨークに戻り、空っぽの冷蔵庫を満たすべくスーパーにでかけたところ、ジュースの売り場に見たこともないオレンジジュースが大量山積み。いったい何事?とよーくよーく目を凝らすと、トロピカーナのデザインが変わっていたのです。それもかなり大胆に。

協会のニューヨークツアーに参加された方は覚えておられると思いますが、あの時トロピカーナのデザインをしているスターリング社を見学しました。ディレクターのサイモン・リンスさんが、こういう誰にも認知されているビッグブランドを変えることが、どんなに大変で冒険なことか、トロピカーナ、ハーシーズチョコレートなどを例に挙げて、説明してくださいましたよね。「へー、あんなこと言っておきながら、こんなことしちゃうんだ」と、ジュースのケースの前で、しばし呆然。

翌朝出社すると、みんな「トロピカーナ見た?」と大騒ぎ。私を含め大多数は、嫌い派。理由としてまず、ジュースのグラスがあまりにクローズアップされているため、一目見てなんだか解らない。第二にフレーバーの区別がはっきりしなくて、解りづらい。それに「やっぱりトロピカーナは、トロピカーナじゃないと」と、リンスさんのご説明通り、ビッグブランドを変えるのは容易ではない。おまけにあたらし物好きの日本人と違い、アメリカ人は保守的なんです。

その当時我が社に来ていた大学生のインターンにまでも、「何あれ、ヘンなの!」と、ボロクソにこき下ろされたこの新パッケージ。すぐあとにこれがスターリング社ではなく、アーネルという別の会社のデザインということが解りました。パッケージのブログでもめちゃくちゃ嫌われ、「トロピカーナはそのパーソナリティーを失った」とまで言われている。デザインした人かわいそー。そして二月にトロピカーナーは、デザインを旧デザインに戻す決定を下したのです。新デザインも大胆でしたが、これもまた衝撃的。

これを聞いた時、まず頭に浮かんだのが、80年代にNew Cokeを発売してやはり消費者に大ブーイングを浴び、急遽前のコカコーラをCoke Classicとして発売した事件。そしてこのタイムスの記事の冒頭でも、その出来事に触れています。曰く「24年かかって、ペプシコ(トロピカーナの発売元)版ニューコークができた」

この記事によれば、デザイン一新に関して、手紙、メイル、電話で消費者からのすごい数の苦情よせられ、その内容は「醜い」「バカみたい」「安っぽい」「その辺のプライベートブランドのようだ」と、私がデザイン担当者だったら、憤死もの。そしてこういった消費者の意見が、すぐさまメーカーに伝わるようになった背景に、コンピューターとインターネットの普及があります。

「かつてこういった自分の意見を述べるためには、会社の水飲み場に行くか、カクテルパーティーに出向くかしないとならなかったのが、今やインターネットのおかげで毎分カクテルパーティーなのだ」と、あるPR会社のエクゼクティブの言葉。この記事の中で、フェイスブックやトウィッター(今や日本にもあるんですってね)を通じて寄せられた苦情がもとで、お詫びをした別の例なども挙げられています。元々自己主張の強いアメリカ人。こんな便利な機能を、使わないわけがありません。

とんだ目にあってしまったアーネル社、社長のアーネル氏はインタビューに「トロピカーナは、するべきことをしたまでだ。消費者の反応の大きさには驚愕したが、それだけトロピカーナが消費者に注目されているということで、嬉しい」と答えています。

「我々は、旧パッケージと消費者の間にある絆を、軽く見ていた」と、北米トロピカーナの社長キャンベル氏。「新デザインが拒否されたことを、無念に思いますか?」との問いには、「自分は正しいことを、革新をしたと思っている。今回失敗したからって、この先も革新することは止めないよ。」としながら、「でも消費者が言うことには、耳を傾けないとね」とも。

参考までに、この記事のリンクを貼ります。ここで新旧パッケージデザインも見られます。

http://www.nytimes.com/2009/02/23/business/media/
23adcol.html?_r=2&ref=business


あれから三ヶ月経った今、トロピカーナのパッケージは八割方元に戻りました。唯一新しいパッケージから残ったのは、オレンジを半分に切った形のキャップ。これだけはリデザインされたときも、「カワイイ」とみんなに好評でした。うちにひとつ、この新パッケージがあります。将来幻のパッケージとして、コレクターズアイテムになるかな。

(2009年5月)