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Vol.103「著作権の引用と認められる場合」

デザイン制作において、提案デザインの知財としての安全性(侵害にあたらないか)を心掛ける必要があります。これまで、意匠権に関わるテーマをお伝えしてきましたが、本号では、著作権の引用の範囲について、基本的な知識を伝えたいと思い、著作権の引用と認められる場合についての入門編の寄稿をお願いしました。

<著作権法上、どのような場合に「引用」として他人の著作物を利用することが許されるのか>(本稿より)をテーマに、裁判例における引用の要件と共に、事案に沿った要件の考え方について説明されています。著作権法を身近なものとし具体的に向き合う第一歩として、ぜひお読みいただければと思います。


(2018年6月1日 編集・文責:デザイン保護委員会 担当/丸山 和子)

◆このページに限らずVol.1~これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。 
無断転用はお断りいたします。引用の場合は引用部分を明確にし、出所の明示をお願いいたします。

 

情報発信

他人の著作物を「引用」として利用が許される場合について

弁護士 小畑 明彦 (第二東京弁護士会)

引用」は、日常生活において頻繁に行われています。ブログで他人の意見を取り上げて批評したり、有名な作家の小説の一節を引いて感想を述べたり、ホームページに他人が撮影した写真を掲載して紹介したり…例を挙げれば枚挙にいとまがありません。

このようにたいへん身近な「引用」ですが、「引用だから問題ない」と思っていたところ実は他人の著作権を侵害していた、ということも少なくありません。個人のブログで閲覧者が少なければまだしも(法律的に許されるというわけではありませんが)、例えばパッケージデザインのように世の中に大量に出回ると、著作権侵害の問題は大きくなってしまいます。

そこで、著作権法上、どのような場合に「引用」として他人の著作物を利用することが許されるのか、について述べたいと思います。

著作権法32条1項の「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定しています。

かつて、有名な<モンタージュ写真事件>の最高裁判決(第一次上告審・最高裁判所昭和55年3月28日判決)では、「引用」が認められるための要件として、
①引用する側と引用される側とが明瞭に区別できること(明瞭区別性)、
②引用する側が主、引用される側が従の関係にあること(主従関係
が挙げられていました。

<上告人 白川義員氏の写真>

<被上告人 マッド・アマノ氏の写真>

原審の判決は、被控訴人(上告人)の写真(上掲<上告人 白川義員氏の写真>)を白黒写真に複製したうえ、右上に自動車タイヤの写真を合成して本件モンタージュ写真(上掲<被上告人 マッド・アマノ氏の写真>)を作成し、自己の写真集および週刊誌に複製掲載した控訴人(被上告人)の行為は、引用に当たり被控訴人(上告人)の著作権を侵害しないとしましたが、上告審の本判決は、上記の要件を踏まえ引用に当たらないなどとして原審の判決を破棄し、事件を原審に差し戻しました。

しかし、前記の著作権法の条文から、上記の要件を読み取ることはできませんし、これらの要件だけで「引用」に該当するか否かを判断できるのか疑問のあるところです。

その後、絵画(原画)の縮小カラーコピーに関する<絵画鑑定書事件>の控訴審判決(知財高裁平成22年10月13日判決)は、鑑定証書に添付するための縮小カラーコピーを作製したことが複製権侵害となるか否かが争われた事案で、縮小カラーコピーの作製は「複製」に当たるとしても、「引用」として許されると判断しましたが、その理由の中で引用の要件について、

①引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、
かつ、
②引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであること、
が必要であり、引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない、としています。

そして、ごく最近の裁判例(東京地裁平成30年2月21日判決)では、映画製作・配給会社である被告がTV局である原告のニュース素材の映像をドキュメンタリー映画(下掲写真)に利用した事案で、被告が同映画においてTV局の名称を表示しなかったことについて、「公正な慣行」とは認められず引用は成立しないとし、最終的に原告の著作権を侵害すると判断しました。

判決は、引用の要件に関し、著作権法32条1項に規定の文言に沿って、

①「引用」については、著作物の利用行為が「引用」との語義から著しく外れるような態様でされている場合、例えば、利用する側の表現と利用される側の著作物とが渾然一体となって全く区別されず、それぞれ別の者により表現されたことを認識し得ないような場合などには、同条項の適用を受け得ない、
そして、
②「公正な慣行」に合致し、また「引用の目的上正当な範囲内」で行われたことについては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合考慮すべきである、
とし、上記の絵画鑑定書事件の控訴審判決において示された、様々な要素を総合考慮する考え方を踏襲しています(ただし、このように出所の表示を「公正な慣行」要件に含めることについては批判があります)。

<被告映画/タイトル>

<被告映画/著作権侵害とされた部分(一部)>

このように、最近の裁判例では、かつての<モンタージュ写真事件>の要件①(明瞭区別性)は、「引用」の語義の範囲内か否かという要件の中で維持されていますが、要件②(主従関係)は、「公正な慣行」と「引用の目的上正当な範囲内」であることについて、様々な要素(利用目的、利用方法や態様、利用される著作物の種類や性質、著作権者に及ぼす影響の有無・程度など)を総合考慮する方向に変容しているといえそうです。

最近の裁判例のように、「公正な慣行」と「引用の目的上正当な範囲内」であることについて、様々な要素を総合考慮して判断する方向性は、一般論としては、フェアユース規定がないわが国において、引用の規定を柔軟に解釈し、妥当な結論を導く可能性があると考えられます。
しかし、前掲の東京地裁判決などの実際の裁判例に対しては、引用の規定を柔軟に解釈しているとはいえないという評価もありそうです。

他方、<モンタージュ写真事件>の最高裁判決から最近の裁判例まで、引用が認められるために明瞭区別性が必要であるとしていますが、そうであるとすると、前出の<モンタージュ写真事件>のように、引用される著作物を自己の著作物の表現と一体化させて提示する、いわゆる取込型の引用はすべて「引用」として認められないということになります。

例えば他人のデザインを自己のパッケージデザインに一体化させるような利用は、引用として認められず、取り込む著作物の著作権者の承諾がなければできないことなります。

取込型の引用については、一定の場合に「引用」として認めるべきであるとする見解があり、パロディの法的なあり方も含め、議論されているところです。今後、パッケージデザインなど具体的な事案ごとに考え方の方向性が示されることが期待されます。
以上

 

活動報告

D-8(デザイン8団体協議会)デザイン保護研究会 /2017年度第4回参加

日  時: 2018年4月18日(水)18:30〜20:30
会  場: (公社)日本サインデザイン協会会議室 (東京都千代田区神田和泉町2-9 富士セルビル4F)
JPDAからは、デザイン保護委員会委員長・徳岡健、監事・時田秀久が出席。
オブザーバーとしてJDPA(一社)日本デザイン保護協会より本多誠一事務局長出席。

以下は、各協会からの参加委員数。
・DSA(一社)日本空間デザイン協会より1名。
・JIDA(公社)日本インダストリアルデザイナー協会より1名。
・JAGDA(公社)日本グラフィックデザイナー協会より1名。
・JJDA(公社)日本ジュエリーデザイナー協会より1名。
・JCDA(公社)日本クラフトデザイン協会より2名。
・JPDA(公社)日本パッケージデザイン協会より2名。
・JID(公社)日本インテリアデザイナー協会より1名。
・SDA(公社)日本サインデザイン協会より2名。

D-8デザイン保護研究会委員長(SDA)の司会にて会議進行。
<議事概要>
・創作証の活用状況について各団体よりの説明のあと、より活用しやすい存在に向けての意見交換。
(議論の内容については従来から言われている、より法的な背景を持つものにしたいとの見解が殆ど。)
・2014年に作成・配布した各団体の報酬・契約ガイドラインに関して情報共有に向けての意見交換。
・クリエイティブコモンズ、フリーライセンスについての実情報告、トラブル事例等 各団体より報告。
・今後の議論の深化のために各団体の実情を中心とした意見交換の機会を多くしていきたいとの発言があり、各団体異論なし。
・JIDA委員より、JIDAの活動として「DPホットライン」の紹介と、先般開催したJIDA&弁理士会の勉強会についての紹介があった。

次回は6月20日(水)18:30よりSDA事務局会議室にて開催予定。
(以上報告/JPDA・時田秀久)

引き続き、記事へのご質問・ご意見・ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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