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Vol.108「フォントについての勉強会・トラブル回避/実施報告」

当委員会は、委員自身の知識の蓄積を目的として、これまでも講師を囲んで小規模の勉強会を重ねてきました。デザインを巡る法的保護の理解と共に、実際のデザイン現場での知財に関わる問題点を掘り起こし勉強していく事で、目指すべきデザインの保護の在り方を見つけていこうとしております。

今回は、パッケージデザインの重要な要素の一つである「フォント」について、使用許諾の大切さ、使用時に起こりやすいトラブル、変形や加工の許される範囲、フォント作成について等々を、フォントワークス株式会社・Monotype株式会社の2社からセールスマネージャーをお迎えしての勉強会を実施することができました。

本文の活動報告で、実施内容・参加者の意見を掲載しています。
併催の情報発信は、次回のセミナーの予告をお届けしています。

(2018年12月10日 編集・文責:デザイン保護委員会 担当 丸山 和子)

◆このページに限らずVol.1~これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。

無断転用はお断りいたします。引用の場合は引用部分を明確にし、出所の明示をお願いいたします。

 

情報発信

予告!ストックフォトに関するセミナーを、来年2月7日(木)に開催

<アマナイメージズに聞く! ストック素材を安全に利用するために>

参加ご案内・申し込み受付等の詳細は、年初の1月10日頃に改めてお届けします。

<セミナー概要>

日 程: 2月7日(木) 18:00受付開始 18:30開講 20:30終了
講 師: 株式会社アマナイメージズ 取締役 佐々木 孝行 氏
会 場: DIC株式会社 本社2F 大会議室/東京都中央区日本橋 3-7-20

主 催: (公社)日本パッケージデザイン協会 デザイン保護委員会
参加者: 会員及び一般 (募集定員数/80名)
参加費: 1.000円

 

デザイン保護委員会主催のパッケージデザイン知財セミナーでは、クライアントとデザイナー双方が知財権に関して、正しい知見を共有し、実務に落とし込んで行くことこそが、デザイン及びデザイナーの価値を高め、「デザインを強くする」との信念のもと、毎回、実務に関わる身近なテーマを取り上げています。

今回は、パッケージデザイン、クリエイティブに携わる者にとって今や、無くてはならない存在となった「ストックフォト」をテーマに取り上げました。このテーマについては過去に開催した知財セミナー参加者アンケートにおいて、常に開催希望の多かったテーマで、デザイン保護委員会内でもその必要性を痛感して来たテーマです。

「ストックフォト」はネットからダウンロードするだけ、と言う利便性ゆえ、運用上、様々な課題が見受けられます。そこで、ストックフォト業界を代表する企業である、アマナイメージズ社様のご協力を得て、法律上の視点と実務レベルの視点の両面から、ストックフォトを安全に利用するためのポイントを解説いただく予定です。実際のトラブル事例も含め、より実務をイメージいただける内容をお届けする予定です。多くの皆様の参加をお待ちいたします。 (文:デザイン保護委員会 担当理事/高田 知之)

 

活動報告

ミニ・セミナー <フォントについて> 委員会内部勉強会を実施しました。

<勉強会の内容>
-パッケージデザイナーがフォントを使用するに当たっての注意点等ついて-
・商品名、ブランドロゴに使用する場合
・意匠登録や商標登録する場合
・輸出用の商品に使用する場合
・変形や加工について
・トラブルの事例
・フォントデザイナーの存在

当日の会場は、東洋インキ株式会社様よりご提供いただき、京橋エドグラン内29階大会議室にての快適な勉強会となりました。
参加者は、講師3名、委員6名、委員会外JPDA会員2名、弁理士会から3名、計14名でした。
※(掲載写真撮影/デザイン保護委員会 委員:吉田 晃永)

(会場風景)徳岡委員長から勉強会開催にあたっての挨拶

フォントワークス株式会社 マーケティング部 プロダクトセールスグループから、マネージャー岡田茂久氏と安藤貴文氏、Monotype株式会社 シニアセールスマネージャー青木俊之氏を迎え、11月6日(火) 18時30分から勉強会が開始され、20時30分に閉会となりました。

(会場風景)講義後の質疑応答&講師との意見交換

講義は、前半<日本語と中国語のフォントについて>・後半<欧文フォントについて>を、それぞれの背景についての講義に続き、「フォント使用時のトラブル回避について」が取り上げられ、更にフォントを作成するデザイン作業の実際について触れられました。

<ご提供いただいた主な資料>
■フォントワークス社より
・フォントカタログ2017
・筑紫書体2018
・年間定額制フォントサービスカタログ「LETS」、「Monotype LETS」
■Monotype社より
・たづかね角ゴシック、たづかね角ゴシックInfo
・カスタムフォント(企業制定書体)展開事例

(配布資料の一部)

 

<今回のテーマ設定の目的>
デザイン保護委員会 委員長:徳岡 健

デザイナーにとってフォントは、たいへん身近な存在です。商品名やキャッチコピーにどのフォントを選ぶかでデザインの見え方や印象はぜんぜん違う物になってしまいます。パッケージに必要な表示をUDフォントや読みやすいフォントを用いて組むということも日常当たり前のように行っています。文字デザインにくわしく、こだわりのあるデザイナーは多くいらっしゃると思います。しかし、そのフォントの権利や使用許諾の範囲などの条件をあまり気にせず使用している方も多いのではないでしょうか。

今回の勉強会は、既存のフォントを使用してデザインしたパッケージの商品名やロゴが、クライアントに納品し自分の手を離れた後、商標や意匠として登録される場合の権利関係は大丈夫なの?と疑問に思ったことが開催のきっかけです。

フォントワークス社の岡田様、安藤様にはフォントのタイプフェイスデザインの知的財産権(著作権)の保護についてのお話から、ロゴでの使用、映像やWebでの使用の注意点、また中国でのフォントの取り扱いについて丁寧に解説、ご説明いただきました。
Monotype社の青木様には欧文の歴史や読みやすさや、ブランドイメージを統一するためのフォントの導入事例、企業向けのカスタムフォントなど「フォント愛!」を感じるお話を聞かせていただきました。
フォントの流通数は6000種類以上、フリーフォントを入れるとさらにたくさんの種類があるそうです。数多くあるフォントメーカーの規約はそれぞれ条件等が違います。それらをきちんと理解して使用することの重要性を改めて認識する勉強会となりました。3名の講師の方々ありがとうございました。

デザイン保護委員会では以前から、委員の知財についての勉強、スキルアップを目的とした勉強会を不定期で開催しています。この勉強会をきっかけにセミナーに発展したケースもあります。今回の「フォントについて」は会員の皆様も興味あるテーマではないかと思っていますので次に展開できればと考えています。

 

<受講しての感想-1>
クリエイティブディレクター:JPDA会員 岡部 恭典 氏/(株)YAOデザインインターナショナル

今回、勉強会の目的としてフォントを使用したロゴの商標・意匠登録に制限を設ける事に対するフォントメーカーの見解が知りたいと思い参加させて頂きました。

結論としてフォントワークス社では「文字は利用されて、はじめて存在価値が生まれるもの」であり、多くの人が利用できるよう利便性の良さを考えると、フォントワークス社のフォントを使って作成したロゴの商標登録に関して制限は設けないという見解でした。
私はこれに賛同した一方で、利便性の良さは、誰もが効率的にクオリティの高いデザインを作れる一面もありますが、フォントに限らずフリーの写真やイラスト、デザイン素材など容易に手に入る一億層クリエーターの時代に、デザイナーとして危機感も持ちました。

以前はオリジナルでロゴを作ることで、競合商品と差別化し、商品に個性を出すことがデザイナーの腕の見せどころだったと思います。今はフォントを活用して作ることが多くなり、同じフォントで作られた商品名が競合同士で店頭に並ぶことも珍しくなく、一見どこのメーカーの商品か区別できない事もあります。
フォントの使用規定に制限を設けることは、利便性が悪いと感じる一方で、本来デザイナーとしてやるべき仕事を見直すきっかけになりました。

企業として利便性や汎用性を重視する考えと権利を守る考え。それは相反する考えなのか?それとも互いに同調できる考えなのか?フォントメーカーそれぞれ考えがあると思います。
次回、それぞれの考えを学べる機会がある事に期待して止みません。

 

<受講しての感想-2>
弁理士:川本 篤 氏 /しろくま特許事務所

フォント会社がクライアントから頻繁に受ける質問や使用許諾の具体的な内容など、実務上の注意点についてお話し頂きました。

フォント(タイプフェイス)は意匠法の法的保護の対象に含まれません。また、著作物性が認められる場合も非常に限定的です(※注)。パソコン等の電子機器が普及した昨今ではプログラムの著作物として一定程度の保護が認められているものの、十分な保護が与えられていないのが現状です。

このように法的保護が乏しい状況ではあるものの、近年ではサブスクリプション方式による使用許諾を採り、開発者は適切に資本を回収しつつ、ユーザーは使用し易いという、双方にとってメリットを感じることができる使用許諾方法もあるとのことで、サブスクリプション方式の波は音楽業界や映画業界にとどまらず、フォント業界にまで及んでいるのだと時代を感じました。

フォント会社やフォントデザイナーとしては、フォントの法的保護を手厚くしてほしいという要望はあるようですが、一番の望みはフォントを多くの人に使用してもらいたいということであり、過度な保護によりフォントが使いにくくなってしまう状況は避けたいといった葛藤があるようです。仮に保護を手厚くする場合、一体どの範囲まで保護を与えるべきか、これはフォントに限った話ではありませんが、そのバランスは非常に難しい判断になると再認識しました。

※注: タイプフェイス事件 「最高裁 平成10年(受)第332号 平成12年9月7日判決」

 

<受講後の感想>
デザイン保護委員会 委員:斎藤 郁夫

今日社内の回覧で読んでいた業界誌に、まさに先日の勉強会でお名前の挙がっていた、Monotype社 小林 章氏の寄稿文が掲載されていました。

それが以前から自分の中で引っ掛かっていた「なぜパッケージってこんなに重要なのになかなか評価されないんだろう?」といった疑問に簡潔に答えた文章に出会ったので抜粋してご紹介します。

「パッケージは、それ自体が主役ではないが、主役である内容物をできるだけ変質させずに受け手に届けるものである。そう考えるとフォントとパッケージはよく似ている。・・ 中略 ・・一般の人にとって、文字のデザインや文字情報のレイアウトが気になる時というのが、たいてい困った状況を経験した場合である。・・・公共サインを頼りに移動中、行き先を見失ったとき、「もっと分かりやすく書いてくれよ!!」と恨みたくなる。でも、逆に分かりやすい場合、「分かりやすくデザインしてくれてありがとう!」と感謝されることは少ない。
なんのストレスも感じないで目的地に到着したら、案内サインの存在など忘れてしまう。それでいい。良いデザインは印象に残らないのだ。

 ( 『印刷技術』 2018年11月号 日本包装技術協会 )

どうやって開封したか覚えていないキャップ、なぜ手を伸ばしたか意識せずに買物カゴに入れている商品、はきっとよくできた包装設計、パッケージデザインなんだと思います。

 

委員会ヒトコト通信

タイプフェイス事件 「最高裁 平成10年(受)第332号 平成12年9月7日判決」

本文<受講しての感想-2>の(注)にありました<タイプフェイス事件>について、その判決の読み解きと解説を次々号(Vol.110)でお届けします。書体の著作性について判示されたものです。
もう一つの事例に、<海賊版フォント搭載PC販売事件> 「大阪地裁 平成15年(ワ)第2552号 平成16年5月13日判決」を取り上げます。(編集記)

引き続き、記事へのご質問・ご意見・ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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