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Vol.111「セミナー報告/ストック素材を安全に利用するための実践講座」

「デザインを保護する」とは、オリジナリティの価値と創作する行為の尊厳を守ることと考えています。
そのためには、創作する側のデザイナーと、そのデザインを利用する側が、それぞれの立場で、知的財産としてのデザインの在り方を認識し、デザインを取り巻く様々な法律を、デザイナーから離れた存在としてではなく、身近なものとして受け止めていくことが必要なのではと思います。

「デザインと法」、この両者の結びつきを、デザイナー自身が具体的に掴んでいくために、当デザイン保護委員会は、学ぶこと・発信することを活動の軸としています。
今回のセミナーは、ストック素材の利用とその注意点を、法的な視点を意識することをベースにして、多くの事例が紹介され、トラブルの芽の摘みとり方を具体的に解説いただきました。
本文に掲載しました、参加者と講師とのQ&Aからも会場の様子がお伝えできるかと思います。

(2019年3月14日 編集・文責:デザイン保護委員会 担当 丸山 和子)

◆このページに限らずVol.1~これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。

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情報発信&活動報告

ストック素材の利用・その注意点を事例を通して具体的に学ぶセミナーを実施しました

実施報告 : JPDAデザイン保護委員会

会場デジタルサイネージ(デザイン&写真撮影:委員/大谷 啓浩)

■セミナー概要

日 程: 2月7日(木) 18:00受付開始 18:30開講 20:30終了
講 師: 佐々木 孝行氏 株式会社アマナ(※注) 執行役員
会 場: DIC株式会社 本社2F 大会議室 /東京都中央区日本橋 3-7-20
参加者: 62名 (会員53名、一般4名、弁理士5名) + デザイン保護委員8名
実 施: JPDAデザイン保護委員会/協 力:JPDA事務局

(※注)社名表記について
先の「セミナーのお知らせ」でお伝えしました社名表記、「株式会社アマナイメージズ」を、セミナー開催時点での講師の所属に合わせ、上記「株式会社アマナ」としました。

■今回のセミナー開催までの流れ
担当理事/高田 知之

今回の知的財産基礎習得セミナーでは、題材として「ストック素材」を取り上げました。
ネットからダウンロードするだけで誰でも簡単に使用可能な「ストック素材」はその手軽さゆえ、多くの方が日常のデザイン業務で頻繁に使用されていると思います。その手軽さと裏腹に、使用上のルール・規定等が難解で、その確認も疎かにされているケースも多いのではないでしょうか。

そこで、この業界を代表する株式会社アマナ、佐々木様を講師にお招きして、ストック素材を安全に利用するための基本的なルールと、見過ごしがちなポイントについて解説をいただきました。当日は佐々木様の、初心者にも分かり易い語り口と豊富な事例紹介もあり、活気に満ちたセミナーとなり、質疑応答時間が足りないほど多数の意見交換が生まれました。デザイン保護委員会は、今後も、身近で役立つ題材を取り上げ、深く掘り下げるセミナーを企画・開催してまいりますので、よろしくお願いいたします。

■今回のセミナーテーマについて
委員長/徳岡 健

パッケージに限らず、グラフィック、Webサイトなどのデザインをする時、一度は利用したことのあるストック素材、ストックフォトをテーマにしたセミナーを企画・実施しました。
デザイン保護委員会では前々から開催したいと思っていたテーマで、委員会主催のセミナーアンケートにも「ストック素材について取り上げてほしい」というご意見が多数寄せられていて、委員会内部の勉強会も実施し温めていたテーマです。今回、会場をDIC株式会社様にご提供いただき、講師に株式会社アマナ、執行役員佐々木孝行様をお招きしました。

「事例で学ぶ、ストック素材利用の落とし穴」のタイトルの通り、流通のしくみや以外と知らない利用のルールなど、たくさんの事例をまじえて解説をしていただきました。RF(ロイヤリティフリー)とRM(ライツマネージド)の違いから、それぞれの注意点、建物写真のリスクについては具体的な建物名も教えていただき、セミナー参加者のみが聞ける「ここだけの話」も聞かせていただきました。
「確認」をすることでトラブルを未然に防ぎ「安心」につながるという、プロとしてデザインを行う際の基本について「ストック素材」を通して改めて認識するセミナーになったのではないかと思います。

写真1.講義風景(写真撮影1.2.共:委員/高林 めぐみ)

写真2.終わりの挨拶/高田理事 (左/徳岡委員長、右/佐々木講師)

■参加しての感想
一般参加:弁理士/安立 卓司 (三好内外国特許事務所)

<「事例で学ぶストックフォト素材利用の落とし穴」受講しての感想>

仕事柄、「この写真素材を商品に使用して大丈夫か?」「あの写真の使用を止めさせたい」などの法的相談を受けることがありますので、佐々木氏のお話、大変興味深く聞かせて頂きました。アマナ社は、国内最古の写真素材エージェンシーで、数多のトラブル処理をされています。ここでは詳しく書けませんが、その経験を踏まえた貴重なお話をたくさん聞くことができました。

素材データのデジタル化や権利意識の高まりによって、「ストックフォト素材利用の落とし穴」は、かつてないほど大きくなっていると実感しました。
写真がデジタルデータであるということは、トリミングなどの画像処理が容易であるということ。便利である反面、建物だけをトリミングしたりすれば、建物所有者との間でトラブルになりかねない。
しかも、エージェンシーが扱う素材数は年々増える一方とのことで、チェックも物理的に間に合わない。適法を白、違法を黒とするならば、グレー事案は同時多発的に、加速度的に増えているといいます。

そんな中、デザイナー、そしてデザイナーが創作したデザインを利用する企業は、グレー事案にどう向き合うべきなのか。

「グレーならよし」とするのか、「グレーでもだめだ」とするのかによって、事案への向き合い方、対応の仕方は180度変わるのでしょう。しかし、対応するためには、そもそも目の前の事案がグレーであることに気付かなければなりません。そのために、デザイナーや企業はどうすべきなのか。法律家はどのようなお手伝いができるのか。今後も、デザイナーや企業の皆様と一緒に、考えていきたいと思います。

■質疑応答部分まとめ
委員/斎藤 郁夫

Q1) 今日のプレゼンで使用した写真は、どのような許可取りを行なった素材ですか。有料プレゼンで使用する際に気を付けた方がよいことはありますか。
A1) 基本的にはamanaimage.com のものを使用している。
プレゼンに使用する写真については、そのプレゼンが有料か無料かにかかわらず、正規のライセンスを得た写真を使わないと危険が伴う。
関係者だけのドメスティックな会議の場合、そこまで気にする必要はないが、資料をデータで渡してしまった場合など、そのデータが誤ってネット上に流出するリスクも考えられる。大規模なプレゼンの場合(東京オリンピックのエンブレム問題を例に上げ)さらにそのリスクは高まるので注意が必要。

Q2) ある美術館からのクレームで、写真のとり扱いをやめたとのお話があったが、それ以前に使ってしまった場合どうしたらよいか。
A2) まず建物側への事前の申請が基本。仮に申請をしないまま、すでに使ってしまった場合、アマナイメージズとしてはお客様と一緒になって先方の説得にあたるようにしている。

Q3) ストックフォトを使用する場合、依頼主が契約するのか、それとも制作者(デザイナーや広告代理店)が契約するべきなのか。
A3) 契約上は写真を購入した会社と(ストックフォトの)エージェンシーが契約を結ぶことになる。ライツマネージドの場合、画像の管理が煩わしく、管理責任が問われるので、途中からスポンサー側に貸出先を変更することがある。
但し煩わしい管理を代行することで制作会社とスポンサーの関係が築かれていることもあるため、そこは会社としての営業判断。

Q4) デザイン事務所がストックフォトを購入し印刷会社に渡す場合、第三者譲渡にならないのか。
A4) 問題ない。印刷の業務を委託しているにすぎず画像の譲渡にはあたらない。
もちろん印刷会社がデザイナーからの画像データを無断でコピーして利用したら大きな問題になる。

Q5) エッフェル塔の夜景の写真を使用するのに、パリ市への申請が必要とのお話だったが、もう一度説明してほしい。
A5) ライトアップの表現に芸術性が認められるのでパリ市が権利保護の対象にしている。よってどんな角度で撮ったものでもライトアップされたものは申請が必要。

Q6) クライアント側からの提供画像を使用して、制作者側が問題になることはあるか。
A6) クライアント側が正しくライセンスの処理をしているのであれば問題になることはない。
制作会社としてのリスクヘッジとしては、事前にこの部分の確認をしておくとベスト。

Q7) アートリファレンスサービスにおいて、オリジナルの作家が分からない場合、探す方法はあるのか。
A7) 制作者が不明の写真はまれにある。そのような場合、Googleの画像検索などを頼りに調査や交渉を行なうことがある。

Q8) 食品のパッケージを制作していて料理の盛付け写真を撮るとき、食器に個性がある場合(例えばロイヤルコペンハーゲンの食器を使用するなど)、注意は必要か。
A8) 大量生産される工業製品は(有名ブランドであっても)「応用美術」と言われ、それを写真で自由に使っていいことになっている。
但しフリーライド(ロイヤルコペンハーゲンの皿のマークが目立っているなど)としてクレームになることがあるため、不安な場合は事前にロイヤルコペンハーゲン側に確認をとるとよい。(ヤブヘビになることもあるが)
食器が作家性の高い作品の場合は、クレームのリスクが高いので事前許可を取っておいた方がよい。

Q9) 料理の写真を仮にダミーで撮影しておき、あとで似せて撮る場合の権利はどうか。
A9) 料理の盛り付けなどは、美術作品として作られてものでない限り、どんなに工夫されたものであっても、法的には保護の対象にならない。ただ、クレームのリスクはある得る。

Q10) 「写真から無断でイラストを描き起こすと輪郭線のトレースを含め著作権侵害の可能性があるので必ず変形するか参考程度に留める」とあるが、どこまで変形したらよい、というのはあるのか。
A10) どの程度までならよいという明確なガイドラインはない。

Q11) ライツマネージドの写真をパッケージに使用し、期限が5年とした場合、作られたものが5年を過ぎて流通していた場合、申請を一つづつしなければいけないのか。
A11) アマナイメージズの場合、在庫分はOKとされる。
例えば、出版物は在庫が残っていることが多いが、再刷されていなければ問題ないとされている。

Q12) イメージ写真の背景に小物としてカメラや小皿が写りこんでいた場合、ロゴを隠したり、ぼかしたりすることがあるが、ロゴが分からなければ使ってもよいのか。
A12) そもそもロゴは隠す必要がない。
表現的にフリーライドに当たらないかは考慮する必要がある。洗車機の広告の例だが、写真の中に写っていた車が有名な高級車で、エンブレム部分が大変目立っていたため、そのエンブレム部分をぼかした上でメーカー側に確認をとったところ問題ないとされた。

Q13) 動画の必要な個所だけを切り取って使用する場合、どのような注意が必要か。
A13) 切り出されたものは写真としての取り扱いとまったく同じと考えてほしい。動画の方が動いている分、静止画に比べリスクが小さいといえる。

Q14) 繰り返し話にあがっていた「確認をとる」の確認のとり方はどのような方法がよいか。
A14) 言った言わないが問題になるため、「書面を残す」「メールの履歴を残す」など、なんらかの形でやりとりを残したほうがよい。

(以上)

■アンケート集計/結果分析(有効回答:57名)
委員/山本 典弘

 

委員会ヒトコト通信

このレポートページでは、以前にもストックフォト活用法のタイトルで、デザイン制作における素材との向き合い方について、「ストックフォト・レンタルフォト・フリー素材等」の実際のコンサルティングにおける知識をもとに、素材を提供する側と利用する側との双方が意識して確認しなければならないことを整理していただき、「如何にしたら、トラブルに巻き込まれないか」を、トラブルを起こす前の注意すべきこととして提言いただいています。

その中で、今回のセミナーでも取り上げられたパリのエッフェル塔について、<フリー素材・自分で撮影した素材使用の落とし穴>の小タイトルでのお話しがあります。
下記のURLからご覧いただけます。(編集記)

Vol.75 「ストックフォト活用法」 http://www.jpda.or.jp/rights_protection/vol-75/

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