Japanese English

Vol.55「デザイン契約の用語 考察-3」

引き続き、契約についての考察を続けます。<考察-3>として、契約書の中に出てくる言葉の意味を、契約を取り交わす双方が正確に共有していけるように、使用される用語を解説していただきました。まず今回は、簡単な用語集として受け止めていただければと思います。次回に、特に重要な用語、気をつけるべき項目を取り上げ、もう少し詳しく説明されたものを予定しています。
活動報告では、D-8日本デザイン団体協議会による8団体合同実施 知財セミナー/IPDL勉強会の概要を掲載しました。
(2014年3月25日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

◆このページに限らずVol.1~これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。 無断転用・引用はお断りいたします。

 情報発信

デザイン業務に関する契約で使用される用語について
特許業務法人レガート知財事務所 弁理士 峯 唯夫

今回と次回の2回にわたり、デザイナーの方々が依頼者と取り交わす契約書で使用される用語について、解説をすることになりました。依頼者から提示される契約書を読むときの参考にしてください。
なお、パッケージの図柄のデザインが著作権法で保護される「著作物」なのか、ということはいろんな意見があります。プロダクトデザインよりも著作物と認められやすい分野なので、「著作物」であるという前提で契約に臨むことが必要です。

1 契約

約束のことです。口頭の約束も「契約」です。「申込」と「承諾」で成立します。
一番身近な契約は、お店で品物を購入することです。
Aさん 「ノートを100円で売ってください」(申込)
お店  「いいですよ」(承諾)。
この時点で、契約が成立します。
Aさんは「100円払う」という義務(債務)と「100円払えばノートが手に入る」という権利(債権)が発生します。他方お店には、「100円払ってもらえる」という権利(債権)と、「100円払ってもらったらノートを渡さなければならない」という義務(債務)が発生します。
そして、Aさんが100円払う、お店がノートを渡すということが「契約の履行」です。

2 契約書

契約は口約束で成立しますが、後でトラブルが生じたときに拠り所が必要です。そこで、当事者が合意した内容を書面に記録します。これが「契約書」です。

3 契約書と覚書

契約書も覚書も、どちらも約束した内容を記録する書面です。覚書というと契約書よりも格下の書面のように感じてしまいますが、共に「約束したことの記録」であり、法律上の効果は同じです。

4 委託契約

特定の業務を頼むという契約です。法律上の用語ではありません。契約の具体的な内容から、法律(民法)上の「委任契約」であるか「請負契約」であるかを判断することになります。

5 委任契約

特定の業務の処理を目的とする契約です。「完成」は要求されません。例えば、通常の場合、学習塾と受講生の親とは「受講生を指導する」ことを目的として契約し、目標とする学校に合格するという「完成」は契約の目的に含まれません。合格しなくても契約違反ではありません。

6 請負契約

契約した内容の完成を目的とする契約です。学習塾が「受講生を〇〇大学に合格させる」と約束して契約すれば、それは請負契約です。合格しなければ契約を履行していない(契約違反)ということになります。デザイン提案においては、具体的な「完成」が明確には定まらないので、純粋な請負契約にはなりにくいと思います。他方、依頼者が期待する程度の成果は必要なので、純粋な委任契約にもなりにくいと思います。委任契約か請負契約かということに拘るよりも、どの段階で業務が終了するのかということを明確にすることが重要だと思います。

7 契約の解除

契約を解消する手続の一つです。一度締結した契約は一存で解除することはできません。相手方に債務不履行があるとか、契約で定められた条件に該当する場合に限られます。

8 債務不履行

契約における債務不履行とは、契約で定められた義務を履行しないことです。例えば、デザインに必要な情報を提供すると規定されているにも拘わらず情報を提供しないとか、所定の期日までに対価が支払われない等です。
デザイナーが契約で決めた日までにデザインを提供しないことも、当然に債務不履行です。「売れるデザインを開発する」と契約して、結果としてそのデザインの商品が売れなかったとしたら、「債務不履行」と言われるおそれがあります。

9 契約の期間

契約が有効な期間です。特則がなければ、期間の経過により契約は消滅します。しばしば自動更新という規定が置かれます。その場合は、当事者から解約の意思表示がない限り、契約は有効に存続することになります。
また、秘密保持条項などにおいて契約終了後も有効」という規定が置かれることがあります。その場合は、契約が終了しても特定の条項に関しては「契約(約束)が続いている」ことになります。

10 捺印者

依頼者から提示される契約書において、末尾の「当事者の表示」の欄に、会社の代表者ではなく部長名が記載されていることがあると思います。部長名、そして部長の捺印であっても、「〇〇株式会社 △△部部長***」と会社名が記載されていれば、その契約は原則として有効です。部長が会社の代理人として捺印したと理解されます。

11 知的財産権

主として、特許、実用新案、意匠、商標、著作物に関する権利、不正競争防止法で保護される権利の総称です。

12 産業財産権

特許庁が管轄する特許、実用新案、意匠、商標に関する権利の総称です。これらは、特許庁に出願し、審査を経て(実用新案を除く)、権利が発生します。

13 意匠登録(特許、実用新案登録)を受ける権利

意匠を創作すると「意匠登録を受ける権利」が、発明や考案などの技術的な工夫をすると「特許を受ける権利」「実用新案登録を受ける権利」が発明者・創作者に発生します。依頼者が意匠権などを取得しようとするときは、この「受ける権利」の譲渡を受ける必要があります。

14 著作者人格権

著作者が持つ権利で、譲渡できない一身専属的な権利です。公表権(公表するかどうかを決定する権利)、氏名表示権(著作物に氏名を表示するかどうかを決定する権利)、同一性保持権(著作物の改変を受けない権利)が含まれます。
多くの契約書で「著作者人格権を行使しない」という規定が置かれるのは、依頼者が著作者人格権の制約を受けることなく、自由に著作物を利用するためです。

15 著作権法27条及び28条に規定する権利

著作権の譲渡契約において、しばしば「著作権法27条及び28条に規定する権利を含む」という表現があります。これは著作権法の規定で、契約において単に「著作権全部を譲渡する」と記載しても、上掲の権利は譲渡対象に含まれないことになっているためです。
著作権法27条の権利とは、翻訳権、翻案権などであり、28条に規定する権利とは二次的著作物の利用に関する権利です。

16 翻案権

原著作物に改変を加えることに関する権利です。パッケージデザインでいえば、色彩を変更したり、文字の配置を変更したりということが改変にあたります。
著作者、著作権者の許諾を得ずにこれらの行為を行うと、翻案権の侵害であり、かつ同一性保持権の侵害にもなります。そこで、前項のような規定を置き、自由な利用を図っているのです。

17 二次的著作物

原著作物に基づいて新たに作られた著作物をいいます。例えば、イラストに基づいて創作されたアニメです。著作権法28条は、二次的著作物の利用には原著作物の著作権の効力が及ぶことを規定しています。

18 権利侵害でないことの保証

依頼者から提案される契約書で、「保証」というタイトルの条項があると思います。その多くは、
① 他人の著作権を侵害していないこと
② 他人の特許権、実用新案件、意匠権、商標権(産業財産権)を侵害していないこと
を保証する規定になっているでしょう。

「保証する」ということは、もし違っていたらその責任は全て私が負います」ということです。
①は受けざるを得ません。しかし、②を請けるためには種々の条件が必要です。この点は次回にお話しします。

19 担保責任

デザイナーが依頼者に対して提供したデザインに「瑕疵」(不具合な点)がある場合に、デザイナーが依頼者に対して負う責任です。例えば、デザイナーの提案が依頼者が要求する要件を満たしていないとき、デザイナーはそのことにより依頼者に発生した損失を補償しなければならなくなります。

20 瑕疵担保責任

「担保責任」はデザイナーが分かっている、又は分かるはずだった瑕疵についての規定です。「瑕疵担保責任」というのは、分かってない瑕疵についても責任を持て、というものです。パッケージでは、パッケージの構造を提案したところ、製品化したら構造的に無理があり、使い物にならなかった。こんな時に問題となる規定です。
 
21 秘密保持

秘密を守る、ということです。具体的には、デザイン開発において依頼者から提供される情報を他人に漏らしてはいけない、ということです。

※次号に続きます。

 活動報告

D-8 日本デザイン団体協議会・8団体合同セミナー
「特許電子図書館を利用した先行意匠の調査について」

日時:2014年2月18日(火) 18:00-20:00
会場:港区赤坂 ミッドタウン・タワー5F デザインハブ内インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
主催:D-8日本デザイン団体協議会 デザイン保護研究会
参加申込者数は66名(各協会の内訳は以下になります。)
DSA 14名/JAGDA・5名/JCDA 1名/JID 5名/JIDA 16名/JJDA 5名/JPDA 18名/SDA 2名
当日の参加者実績数は63名でした。

vol55-1(写真提供/D-8デザイン保護研究会)

講師:特許庁 総務部総務課特許情報企画室 特許情報企画調査班 意匠計画係長 山永 滋氏
内容:講師作成資料に基づくパワーポイントによる説明後に参加者との質疑応答
その他の配布資料:特許電子図書館ガイドブック Industrial Property Digital Library Guidebook

vol55-2(写真提供/D-8デザイン保護研究会)

■ D-8デザイン保護研究会 特許庁IPDLセミナーに参加して-1
(公社)JPDA 東日本個人会員 時田 秀久 JPDAデザイン保護委員会 委員

2月18日に実施されました特許庁IPDLセミナーに参加させていただきました。
私はパッケージデザインの中でもコンストラクションデザイン(メカ・機能・カタチetc.)を主たるジャンルとしており、日常業務においても常に他者権利への抵触等には注意をはらって参りました。特に特許・意匠については、どこに他者権利が存在している可能性があるのかを注意深く検証してきました。

常に市場を見て、どのようなものが上市されているのか、そしてそのものに権利性はあるのかをいつも気に掛けています。そして自分が手掛けたデザインに少しでも疑問が生じた時には、専門のセクションに調査を依頼し、確認をとった上で業務を進行してきました。しかしそれなりの調査には時間もかかり、業務の実態とそぐわない面も多々あります。

IPDLの存在は以前より認識しておりましたが、今回セミナーを受け、本来の開発目的からは外れるかもしれませんが、一つのことに気付きました。それは、デザイン業務に入る前にIPDLの該当ジャンルを見てみるという使い方です。自分がこれからやろうとしているジャンルに、先人たちが一体どのようなことを考えていたのだろうということを確認することです。「インスパイア」でもなく「発想の視野を狭めること」でもなく、“これから進んでいこうとするところにどのような足跡があるのだろうか?”を見極めることに使えるのではないかということです。
IPDLを活用して自分の権利が他者侵害をしていないかということを確認することは勿論とても大切なことですが、ちょっとした時間を見つけてIPDLの画面をこのように眺めてみるだけでも逆に新しい発想が浮かんでくるのではと思っております。セミナーでお話しを伺って、「判断」に使うのではなく「発想のフィールドを確認」するために使う、こんな可能性も充分にあるのではと思いました。

お忙しいなか、お時間を割いてくださった特許庁の山永さま ありがとうございました。

■ D-8デザイン保護研究会 特許庁IPDLセミナーに参加して-2
(株)YAOデザインインターナショナル ディレクター 徳岡 健 JPDAデザイン保護委員会 委員

2月18日に行われたD-8日本デザイン団体協議会・デザイン保護研究会主催の特許庁IPDL(特許電子図書館)セミナーに参加しました。
普段の仕事の中ではあまり使用することがないIPDLでしたが、検索する時の「利用のコツ」など初心者の私でもわかりやすく、短時間でしたが充実した内容のセミナーとなりました。
今回のセミナーは初めての8団体合同のセミナーということで心配な部分も有りましたが、多くの方に参加いただきました。特にJPDAではセミナー案内後すぐに定員になり、会員の方の関心の高さがうかがえました。
講師の特許庁山永様ありがとうございました。

※D-8デザイン保護研究会の活動報告は下記URLでご覧いただけます。
http://www.d-eight.jp/protection.html

引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

最近のレポート