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Vol.65 「契約における秘密保持とは」

【秘密保持】「甲および乙は、契約した業務に関する情報の秘密保持と併せて、業務期間中に提出されたアイデア、コンセプトやデザイン等に関する双方の無断使用、無断出願を禁止し、これらの取り扱いに注意し、第三者に漏らしてはなりません。」
上記は、JPDAデザイン保護ハンドブック(改訂版)に掲載される条文です。

「秘密保持」については本レポートVol.56でもお伝えしましたが、今回は改めて、デザイン業務で取り交わす契約における「秘密保持」が必要な理由と、この条文を取り交わした時に認識しておくこと・実行しなければならないことを、解りやすく説明して頂きました。

Vol.56「デザイン契約の特に重要な用語 考察-4」も、是非ご参照ください。

20153月12日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

◆このページに限らずVol.1~これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。無断転用・引用はお断りいたします。

 

 情報発信

契約における「秘密保持」とは

特許業務法人レガート知財事務所 弁理士 峯 唯夫

1 秘密保持が必要な理由

デザイン業務に関する契約書には、必ず「秘密保持」に関する規定が盛り込まれています。発注者である企業とデザイナー双方の立場から考えてみます。

■発注者(企業)の立場

企業がデザイン業務を発注する場合、種々の秘密情報をデザイナーに提供する場合が多々あります。新規商品のデザインであれば、その商品を開発していること自体が重要な営業秘密であり、ネーミング情報、ターゲット情報、販路情報、パッケージのサイズ情報なども、外に漏れるとライバルを利することにもなりかねません。

パッケージのリニューアルの場合でも、リニューアルするという情報自体が重要な営業秘密です。

■デザイナーの立場

デザイナーが発注者に対して提供する情報には、最終デザインに到達するまでの工程において創られるコンセプトモデル、不採用デザイン案、デザイナーの業務に関する情報(ノウハウや営業秘密を含む)があります。特に、コンセプトモデルや不採用案が外部に漏れると、第三者がそのデザインを利用するおそれがあります。

また、契約においてコンセプトモデルや不採用案の取り扱いがきちんと決められていない場合、発注者が自由に利用するおそれもあります。

デザイナーの立場からも「秘密保持」は重要なのですが、契約書の中には発注者が提供する情報だけが「秘密保持」の対象となっているものがあるので、注意が必要です。

■不正競争防止法との関係

営業秘密は不正競争防止法(「不競法」)で保護されています。すなわち、営業秘密を不正に取得したり使用する行為は禁止されます。

不競法で営業秘密は次のように定義されています。

「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」

ここで重要なのは「秘密として管理されている」という要件です。「秘密として管理されている」というためには、秘密情報が特定されていること、秘密情報へのアクセスが特定の人に限定されていることが要求されます。

そこで、「秘密として管理されている」状態を確立するために、契約で「秘密保持」を規定する必要があるのです。

2 契約書の例

第65回秘密保持-図

■第10条

第10条は、発注者(甲)がデザイナー(乙)に提供する情報全ての取り扱いを定めたもので、直接秘密保持を規定するものではありませんが、第3項で「甲に返還する」とされている点は、秘密保持の実効を確保する意味もあります。なお、「善良なる管理者の注意」とは職業上通常期待される注意義務のことです。

■第11条

第1項の1行目に「相手方から得た一切の秘密情報」とあります。

情報が秘密として扱われるためには、「この情報は秘密である」と明示して相手方に提供する必要があります。
書面であれば㊙の表示、データであればパスワードの設定などが要求されます。
第2項に「秘密として管理する」とあります。すなわち、秘密情報であると特定し、アクセスを制限するということです。

デザイン事務所において複数のデザイナーがデザインを担当する場合、担当するデザイナーを特定し、各デザイナーに秘密保持義務を課す必要があります。その場合には、各デザイナーから秘密を保持する旨の誓約書をもらい、保管しておくとよいでしょう。
外注先に秘密情報を提供する必要がある場合も同様です。

第3項に「本契約終了後○年間存続する」とあります。
契約はデザインの完成で終了するとしても、その後○年間(通常3年とか5年)は秘密を保持しなければならない、ということです。

3 デザイナーとしての留意点

繰り返しになる部分もありますが、デザイナーとしての留意点を以下にまとめます。

■秘密情報の特定

秘密保持の対象とするためには、秘密情報を特定しなければなりません。先に㊙やパスワードと書きましたが、望ましくは「この情報は私が何時提供した秘密情報である」ことを明確にすることです。
そのために、提供する秘密情報には㊙やパスワードに加えて、作成者、作成年月日、提供年月日を記載(記録)するように努めてください。
また、これらの記載を補助するものとして「デザイン開発ノート」を用意し、提供した情報について発注者の確認印(サイン)をもらうとよいでしょう。

■秘密に管理

発注者から提供された秘密情報の事務所内での管理も大切です。
担当者に守秘義務を課したとしても、担当者以外の職員が情報に接することができる状態であっては「秘密に管理」とはいえません。
紙媒体で提供された情報であれば、コピーの管理や保管場所の選定にも注意が必要です。金庫に保管することが望ましいとされています。
データで提供された情報であれば、パスワードを外さないことは当然であり、パスワードが特定の者以外に知られないような管理も要求されます。

面倒くさいと思う方もいると思いますが、事務所における秘密管理体制が確立していることは、発注者との信頼関係の強化、事務所評価の向上につながることと思います。

(以上)

 活動報告

2014年度 第3回 D-8 デザイン保護研究会 2月5日(木)18302045 於:JIDA事務局(六本木・アクシスビル4F
参加者:敬称略
各協会デザイン保護担当委員: DSA/1名、JAGDA/1名、JCDA/欠席、JID/2名、JIDA/2名、JJDA/2名、JPDA/2名、SDA/1名

オブザーバー:経済産業省/1名、特許庁/1名 以上13
議長:(SDA
議題:
1.「意匠の国際登録制度に関する説明会」について

・概要と要点の説明があり、その後質疑応答がなされた。
・制度の説明会が全国で開かれているので、各協会会員に向けて参加のご案内をお願いしたい旨の申し出があった。
◆[配布資料] ハーグ協定に基づく国際的なデザイン保護制度

2.「契約・報酬ガイドライン」について
1.)委員会としての今後の取り組み方の方向が話し合われた。
◆[配布資料]JID から、JID 報酬基準ガイドライン 改訂(素案)

3.「D-8創作証」について
具体的検討は、時間切れのため次回に持ち越しとなった。
・検討事項外として、D-8HPのトップ画面から、直接創作証の頁に進めるよう、広報委員会に依頼することとなった。

4.D-8運営会議の報告

5.その他
1)特許庁より「特許情報プラットフォーム」の件の報告があった。
公開広報の検索システムの変更について説明があり、現在の「特許電子図書館・IPDL」から、「特許情報プラットフォーム・J-Plat Pat」にサービスが移行される。
◆[配布資料]特許情報プラットフォーム/呼称 J-Plat Pat 2015/03/23~サービス開始
2)次回研究会4月16日(木)18:3020:30

引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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