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Vol.75 「ストックフォト活用法」

周囲にあふれる様々なデザイン素材を安易に使用することで、デザインを貶めてしまった事件が、つい最近ありました。利用する素材が自分以外の誰かの手によるものだとしたら、そこには他者の権利があることを常に意識する必要があります。

同時に、このように意識することは創作を委縮させることに繋がるかもしれないとする、短絡的な意見が一方で出てきています。しかし、それは創作性に対する誤った捉え方であり、それを証明できるのはデザインすることを業務とするデザイナー自身に他なりません。

2016年最初のレポートは、デザイン制作における素材との向き合い方について、「ストックフォト・レンタルフォト・フリー素材等」の実際のコンサルティングにおける知識をもとに、素材を提供する側と利用する側との双方が意識して確認しなければならないことを整理していただき、「如何にしたら、トラブルに巻き込まれないか」を、トラブルを起こす前の注意すべきこととして提言いただきました。

創作する行為に価値を認めることが、デザイン保護の基本に流れる思想だと考えています。デザイン制作に係る私たちが、オリジナル性を重要なものとして捉えていかなければ、「デザインすること」が無意味なものになりかねません。今年もデザイン保護委員会は、知財としてのデザインを様々な角度から捉え・学び・伝えてまいります。

(2016年1月18日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

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 情報発信

ストックフォト 活用法 -安全な使い方と落とし穴-

弁理士/知的財産アナリスト 永沼よう子

vol.75_image1Photo by Ryosuke Yagi

その写真、使っても大丈夫?
私たちが生活していく中で、ふと目にするCM、中刷り広告、新聞、雑誌広告、商品パッケージで使われている写真、Tシャツのデザイン・・・その中では実に多くの「ストックフォト」が使用されている事をご存知でしょうか。

●例えば、20種類の材料を用いて作られる食品のパッケージデザインがあるとします。その素材を全て撮影するとなると、手間もコストもかかります。季節柄入手困難な材料もあるかもしれません。
●人物写真が欲しい時も、わざわざモデルさんに頼まずともイメージぴったりの写真をストックフォトの中から安価で購入出来るのであれば、経費削減、納期の短縮にもつながるでしょう。
●このようにストックフォトは、作り手側にとってとても便利なものです。デザインやクリエイティブな作業に関わる方にとっては尚更ストックフォトの存在は身近であるだろうと思います。
●しかし身近であるが故に、陥りがちな問題や、巻き込まれる可能性のあるトラブルへの認識があいまいになっていませんか。

いくつかの項目に分けてご説明しますので、必要な箇所をご活用ください。

Photo by Atsuhiko Sudo

ストックフォトには、どんなものがあるの?その歴史と種類
ストックフォトは、その名の通り予め用意された(ストックされた)素材のことです。

ストックフォト会社では、永年のデータの蓄積から、良く使われるであろう シチュエーションを想定し撮影したものを数多く準備しています。上手に付き合えば経費の削減、作業効率アップなどのメリットがあります。
ストックフォトの歴史は長く、以前は「レンタルフォト」等と呼ばれておりました。
ポジフィルムそのものを業者とやりとりしていた方も多いと思います。しかし現在では、購入から納品迄ほぼ全てがインターネット上で行われます。
気軽にダウンロードが出来てしまう半面、写真の「出所」が管理しづらく、気づいたら思わぬトラブルに巻き込まれていた、なんていう事も起こりやすくなりました。

ストックフォトの種類
ストックフォトの契約形態には大きく分けて二つの分類があります。

●ロイヤリティフリー素材
一度購入すると基本的に追加の使用料を支払うことなく何度でも利用できます。価格は必要な画像サイズによって決まります。

注意:ロイヤリティフリーは、著作権フリーとは違います。正当な著作権使用料がカメラマンに支払われており、その「使用許可」を購入するものです。
※ロイヤリティ&ロイヤルティ・・・契約の文言としては本来的には「ロイヤルティ」が正しいものと思われますが、ストックフォト業界では慣例として「ロイヤリティフリー」と表記するため、本文中には、こちらを使用しています。

●ライツマネージ素材
媒体や期間など、使用条件によって金額が算出されます。
ハイクオリティな素材が多く、また、「使用の履歴」が管理されますので、期間、業種などを指定して独占使用することもできる、というのが最大の特徴です。
必要に応じて素材選びをしてください。※素材によって最初から決まっている分類で、選ぶことはできません。

vol.75_image3Photo by Ryosuke Yagi

ストックフォト会社に良く寄せられる質問 Q&A
ここでは実際に日々、ストックフォト会社に寄せられる質問の例を見てみます。

Q:被写体からの撮影許可、広告への使用許可は取れているか
A:「モデルリリース」「プロパティリリース」という項目にて許可の有無に関する情報を提供しています。

Q:加工して使用しても良い?
A:多くの場合、改変する事も前提にした契約をカメラマンと締結しています。加工する事で使用条件が変わる場合もありますので、利用規約を必ず確認して下さい。

Q:不正使用は本当に見つかるか?
A:不正使用を自動で見つけられるよう、監視システムを採用している会社もあります。発覚した場合、損害賠償を請求される事もあります。

Q:街頭写真について。特徴的な建物や、広告が入っている箇所は消してしまえば全く問題ない?
A:一見問題なさそうですが、クレーム内容は実に様々で、「本来 あるべき場所に広告がなかった(有料スペースに掲載している広告主より)」というクレームがある場合も。心配な時は画像販売元に相談してから加工して下さい。

Q:ストックフォトサイトを見ていて良い構図の写真を見つけた。その構図をそのままに別のモデルをたてて撮影すれば、写真は購入しなくても良い?
A:写真を購入する必要があります。構図そのものに著作権が認められた判例があります。※注(参照:判例_スイカ事件)

Q:ストックフォトの写真を元に、CGやイラストを作成した。参考にしただけなので購入する必要はない?
A:購入する必要があります。※注(参照:判例_祇園祭写真無断使用事件)

Q:トレースはしてはいけない?
A:実際に購入した写真であればトレースして使用する事は問題ありません。未購入の写真をトレースしてはいけない、という事なのです。

フリー素材・自分で撮影した素材使用の落とし穴
フリー素材と聞くとかなり自由度の高い素材であると認識される方は多いようです。
しかしながら、必ずしも著作権もフリーという意味ではない、という一例をあげたいと思います。

パリのエッフェル塔は、パブリックドメイン(注)です。しかし、夜間の「ライトアップしたエッフェル塔」については、現在パリ市が著作権を持っています。そのため、エッフェル塔のライトアップ写真を入手しても、パリ市の許可が得られていないまま商用利用等をすれば、著作権法違反と言われてしまいます。
知らずに使用をしていても、ある日突然使用差止の連絡がきた・・・なんていう事態になりかねないのです。
これはほんの一例に過ぎず、ヨーロッパの様々な建築物、日本でも六本木ヒルズなどが、権利を主張しています。知的財産の知識に絶対的な自信がある場合を除いては、著作物が被写体の場合には信頼出来るサイトに相談をしながら使用を検討するとよいでしょう。

権利処理についてのポリシーや、許可取りがされているか否か、についてきちんと書かれているサイトで写真を入手する事が望ましいと言えます。

いずれにしても・・

●利用規約には必ず目を通しましょう
●安易に入手した画像でクライアント企業名に傷をつけないよう、権利処理も視野に入れましょう。
●自分で撮影した写真に関しても同様です。一見、全ての権利を持つように感じるものですが、「被写体の権利」は別ですので、注意が必要です。

(※)パブリックドメイン
著作権の保護期間が既に過ぎており、公共の財産として自由に利用が出来る。この場合、エッフェル塔の昼間の外観写真は自由に利用ができるという事。

vol.75_image4Photo by Ryosuke Yagi

実際にあった・あり得るストックフォト事故例
ストックフォト使用時に、一番事故が起きる可能性があるのはこのような場合です。

1.「写真使用の権利」と「広告表現」は全くの別物である事を認識していない。
写真を使用する権利を正当に得たとしても、そこに載せる広告表現がおかしなものであれば、当然にトラブルが発生します。

こんな例を聞いた事があります。

屋外に恒常的に設置されている有名人の像。誰もが知っている偉人の像です。しかし、屋外に恒常的に設置されている美術の著作物はそもそも権利が制限されますので、写真に撮って使用する事が可能です。
ところが広告表現として、その偉人を滑稽に、おもしろおかしく見えるような台詞を話させ、一部侮辱ともとれるような広告を作成してしまったのです。

結果はというと・・根強い歴史ファンや、縁のある土地の団体などからクレームが入り、広告は打ち切りとなりました。ストックフォト会社は、この像を「使用」する権利までは補償している、あるいは相談に応じて権利処理を行います。
しかしその後、どんな使用をしてもいいわけではないという事はお分かり頂けると思います。広告表現は、あくまで自己責任で行いましょう。

次に、以下の場合です。

2.「写真使用の権利」と「被写体の権利」が別物であると理解していない。
フリー素材・自分で撮影した写真の項目でもお伝えしましたが、写真を入手しただけでは希望の用途に使えない場合があります。

カメラマンの権利(写真の著作権)はストックフォト会社が管理していても、そこに写っている被写体については別途権利処理が必要な場合があるためです。著名人の場合なんかが分かりやすいと思います。
モデルリリース・プロパティリリースといった表記で確認をする事も可能ですが、心配な場合はやはり直接相談する事をおすすめしています。
その際には、権利処理に関して何らかのポリシーを掲げている先が良いでしょう。利用規約の確認も忘れずに。

だいぶ窮屈に感じる確認作業ですが、基本的にストックフォト会社は「使用をして頂きたい」という思いで素材を用意しています。そのため、さまざまな方法を準備しており、親身になってその使用についての方法を教えてくれると思います。ぜひ活用されると良いでしょう。
権利をクリアにすれば、著名人や有名建造物等、顧客吸引力のある被写体を使用しての広告づくりが可能になります。そしてそれは、やはり魅力的なことです。

vol.75_image5Photo by Ryosuke Yagi

免責補償/ライツ&クリアランス
実際にストックフォト会社が、どんな権利処理を行うかという事を少しご説明します。各社、様々な対応をしておりますが代表的なのはこの2つです。

1.免責補償サービス
何かトラブルがあった時に、ストックフォト会社が代わって対応するというものです。
サービス内容は
①元々画像に補償がついているタイプ(補償金額に上限がある場合も)
②一定の条件を満たした画像については無制限に補償するタイプ(使用態様の審査がある場合もあり)などがあります。
希望の素材はどのタイプかを見てみてください。

2.ライツ&クリアランス
有名人、有名建造物など権利所有者が明らかな場合は、その権利所有者から使用の承認を得ます。
いずれも、各社大量に情報の蓄積がありますから、まずは問い合わせをしてみる事をおすすめします。

まとめ

昔より簡単に写真が入手出来るようになっても、権利の問題がなくなったわけではない。

●トレース自体は悪ではない。購入した写真を元にしていれば。

●フリー素材・自分の撮影した写真を活用する場合にも、忘れてはいけない権利処理

●写真使用の権利と広告表現とは全く別の問題

●写真使用の権利と、被写体の問題とは分けて考える。

●問い合わせ窓口のあるサイトで購入、相談をすることが安心につながる。トラブルも未然に防げる。

(以上)

※委員会より・・判例_スイカ事件、判例_祇園祭写真無断使用事件については、後日このレポートページで解説いたします。

 

 活動報告

2015年度 第3 D-8 デザイン保護研究会 12月3(木)18:3020:30

於:新宿パークタワー・リビングデザインセンターOZONE 8階 (JID事務局隣会議室)

参加者:11名
各協会デザイン保護担当委員:DSA/1名、JAGDA1名、JCDA1名、JID2名、JIDA2名、JJDA/1名、JPDA/1名、SDA1
オブザーバー:デザイン保護協会/1名

議事内容(概要のみ)
1.)今後の研究テーマについて
①健全な事業環境構築のために五年前との事業環境変化
(デザイン作業のデジタル化、デザイン料の低迷、クラウドソーシングについて)
②創作証
創作者の権利内容、著作権法の問題点、意匠法の問題点、創作証の理論化(規定・創作とはなにか?等)、デザイナー(創作者)目線での発言強化の手段としても考えていく。

・上記につき 各団体より現状の説明(所感等)
デザイン料の変化、デザイン範囲の拡大、デザインデータの扱い、簡単ソフトの導入による仕事の変化、協会員の高齢化、総合サービス業的存在化 等
「ランサーズ」のデザインの登録性。

※次回までの宿題
「クラウドソーシング」について、各団体の意見をまとめる。
以上
(議事録概要:D-8研究会委員/JPDA時田)

 

委員会ヒトコト通信 A

-デザイン素材のチェックポイント・その権利は誰のもの-

デザインの制作において、身近に、すぐ手に入る素材があふれている状況の中でも、デザイン素材には知的財産権の様々が関係しています。利用時の不注意からトラブルを起こさないよう、権利の所在の確認が必要です。
・ロゴ(社名/商品名/タイトル/マーク/キャッチコピー)・写真・イラスト・書き文字・フォント・形状・構造(紙・プラスティック等すべての素材)等の素材に関するチェックポイン・トリストが、≪改訂版JPDAデザイン保護ハンドブック≫巻末に収録されています。ぜひご利用ください。

 

委員会ヒトコト通信 B

「意匠活用セミナー -知的財産の戦略的活用のために-」

日本弁理士会・意匠委員会主催の参加費無料セミナーのご案内です。「意匠活用セミナー」を札幌、仙台、金沢、広島、福岡で開催します。詳細・お問い合わせ・申し込みは、以下でご確認ください。

http://www.jpaa.or.jp/activity/seminar_support/event/designseminar20160114.pdf

また、下記掲載の専用アドレス(isyou-event@jpaa.or.jp)でも受け付けられます。

2016年2月日本弁理士会意匠委員会地方セミナー周知用チラシ

 

引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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