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Vol.76 「パッケージデザイン保護に新風!-新しい商標-」

企業のブランド戦略の多様化を支援することを目的として、昨年、商標法が改正され、従来の文字や図形に加え、5タイプの新しい商標の登録が可能になりました。申請受付開始から、これまでに1,000件を超える出願が受け付けられ、順次、審査が進められているようです。平成271027日の公表によれば43件の登録査定がありました。
新しいタイプの商標は、言語を超えたブランド発信手段として、企業のブランド戦略に大きな役割を果たすことが期待されると経済産業省のウェブサイトにもあります。

本号では、この「新しい商標」とパッケージデザインとの係りは、どのようなところにあるのかに焦点を当て、事例と共に具体的に解説していただきました。

●活動報告では、委員会内部勉強会の2回目として「新しい商標」をテーマに選び、そのレポートをしています。

Vol.75でお知らせしました【日本弁理士会・意匠委員会主催の参加費無料「意匠活用セミナー」】について、広島会場(2/19)への応募が無かったため、広島での開催中止が決定されました。
次の日本弁理士会のHPでも公表されましたので、お伝えします。
http://www.jpaa.or.jp/activity/seminar_support/event/designseminar20160114.pdf

(2016年2月15日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

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 情報発信

パッケージデザイン保護に新風!「新しい商標」

弁理士 松井宏記 レクシア特許法律事務所

1.新しい商標

2015年4月1日から、新しい商標(以下、「新商標」)の商標出願受付が特許庁で始まっています。欧米等で新商標の登録は進んでいましたが、日本もいよいよ導入したということになります。
ところで、今回は、「新商標って何?」、「新商標ってパッケージの保護に使えるの?」という、みなさんの素朴な疑問に答えていきたいと思います。

新商標には、「音」「色彩」「位置」「動き」「ホログラム」があります。
商標法改正との関係で、それぞれの新商標は、以下のような内容と導入方法になっています。(資料1)。

【資料1】vol.76_image001このうち、パッケージの保護に関係してくるのは、主に「色彩」「位置」と思われますので、これらについて解説します。

2.色彩商標

色彩商標とは、単色または複数の色彩の組み合わせの商標です。
いままでの商標もロゴに色を付けることはできましたが、形のない色のみを登録することはできませんでした。新商標の色彩商標では、「単色(一色)」または「複数色」のみを登録して保護することができます。

そこで、欧米での登録事例や、日本での出願事例を見てみましょう。

ヨーロッパにおいて、以下のような単色商標の事例があります(資料2)。
黄色一色の商標で、指定商品は「第16類 Self-stick note」他です。これは付箋紙の色彩についての商標と思われます。また、黄色についてはPantoneの色番号で指定がされています。
付箋紙について指定の色番号の黄色を独占するための商標登録ということです。

【資料2】vol.76_image002欧米での複数色の商標について、以下のような事例があります。(資料3)。

【資料3】vol.76_image003

農業用・ガーデン用トラクターに関する色彩商標です。
左のアメリカ商標登録では、座席が黄色、ボディーが緑色のトラクターという権利になっています。トラクターの形状は破線で描かれており、形状自体は権利を要求していません。
権利が要求されているのは、「座席が黄色、ボディーが緑色」のトラクターということです。
右のヨーロッパ商標登録は、同様の商品において、「ボディーが緑色、車輪が黄色」を権利としています。
また、各緑色や黄色についてはマンセル表色系で番号を指定しています。

以下の事例は、ノンアルコール飲料のパッケージのヨーロッパでの登録例です。(資料4)。

【資料4】vol.76_image004

青色と銀色の複数色を登録しています。各色についてはPantoneの色番号を指定しています。
このように、缶の形状を特定せず、色彩の組み合わせと色番号で商標権が発生しています。

日本でも、上記で紹介したような方法で色彩商標の登録が可能です。
パッケージの色彩は共通しているが表面に付されているロゴや文字が違っているために、今までは権利行使ができなかったような場合でも、人を惹きつける色彩が共通していればロゴや文字が違っても権利行使できる可能性がありますので、パッケージ保護には強力なツールと言えそうです。

しかし、色彩商標を登録するにあたっては、大きなハードルがあります。それは、その色彩を見ただけで、どの会社の色彩か、多くの日本国民が認識できる必要があるということです。
具体的には、色彩は、本来的には自他商品識別力が無いと取り扱われていますので、今までの使用実績を主張立証することによって、出願された色彩が、その商品サービス分野で、日本全国の需要者に、どの会社の色彩かを認識されていることを、特許庁に認めてもらう必要があるのです。この著名性のレベルは特許庁の審査実例が出ていない以上、まだ明確ではないですが、かなり高度な著名性が求められると考えられます。
2015年4月に多数の色彩商標が出願されましたが、2016年1月の時点において日本で登録されている色彩商標はまだありません。

 日本で出願中の色彩商標には、以下のようなものがあります。(資料5および6)。

【資料5】vol.76_image005

【資料6】vol.76_image006

日本の特許庁では、色彩商標の出願に関して、以下のような出願方法を審査基準で例示しています(資料7−1、7−2)。
資料7のように、色彩が付けられる場所のみを特定し、形状を特定せずに出願することができますし、また、場所を特定せず色彩のみで出願することもできます。
①商標見本、②商標の詳細な説明、③指定商品または指定役務、を記載して出願することになります。

【資料7−1】vol.76_image007【資料7−2】vol.76_image008※色彩商標の色彩の特定は、(1) 色彩名、(2) 三原色(RGB)の配合率、または、色見本帳の番号、(3) 色彩の組合せ方(色彩を組み合わせた場合の各色の配置や割合等)等で成されます。

3.位置商標

位置商標もパッケージ保護には有効です。
位置商標とは、図形等が商品等に付される位置が特定される商標です。
文字では分かりづらいので、欧米での登録例を見てみましょう。

以下の資料8は、左側がボトルの首部にある上下矢印の部分が商標として権利がある部分です。

【資料8】vol.76_image009「ボトルにおいて首部に実線で示したような上下矢印がある商標」とでもいいましょうか。
ボトルの形状は破線ですので関係ありません。上下矢印の位置と形状が商標の要部と思われます。
また、資料8右側は靴の横に5つ黒色四角が略等間隔で並んでいる商標です。
黒色四角の位置と形状が商標の要部と思われます。

資料9は、容器の蓋周囲に設けられた模様の商標です。

 【資料9】vol.76_image010「蓋周囲に設けられた」という位置を特定した上で、「ライトグリーンとディープグリーンからなる模様」が特定されています。容器全体の形状は関係ありません。

このように、位置商標では、製品における位置と、その位置に付される形状や模様を特定した上で商標権が取得できます。

その形状や模様自体に特徴があれば(識別力があれば)、その形状や模様自体を通常の商標(図形商標等)で出願することができます。
位置商標として特に登録して有意義と思えるのが、特徴(識別力)が無さそうな形状や模様を製品の特定の位置に付けることで、特定の会社を認識できるという特徴を有している場合です。

例えば、日本では以下のような出願例(資料10)と登録例(資料11)があります。

 【資料10】vol.76_image011 【資料11】vol.76_image012

位置商標の出願も、今後の登録例を見ていくことによって、実務上の取り扱いが明確になっていくものと思われます。

4.日本での新商標の出願状況全般

2015年414日に、日本での新商標の公開商標公報が初めて発行されました。各社の出願を見ることができますので、参考になると思います。

経済産業省「新しいタイプの商標の公開商標公報が発行されました」
http://www.meti.go.jp/press/2015/04/20150414001/20150414001.pdf

20151027日には、日本での新商標の初めての審査結果が発表されています。
色彩商標はまだ登録査定が出たものは無し。位置商標は5件の登録査定があります。

経済産業省「新しいタイプの商標について初めての審査結果を公表します」
http://www.meti.go.jp/press/2015/10/20151027004/20151027004.pdf

特許庁ウェブサイト「新しいタイプの商標の保護制度について」
https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/new_shouhyou.htm

 

新規なパッケージデザインについては、今後も、まずは意匠出願を検討すべきと思います。しかし、既に新規性を失っていて(公開や販売がされていて)、意匠権が取れないデザインについては、新商標を用いた商標権の取得を検討してはいかがでしょうか。

 

 活動報告

委員会内部勉強会 「新しい商標ってどんなもの?」

2016年114日(木)18:3020:00 於:(株)NICK会議室 (18:00~の委員会開催後に実施)

報告:JPDAデザイン保護委員会委員/川淵 満

私は、バブル時代にデザインの仕事をはじめて、マークやロゴタイプなど数多く手掛けてきました。ある日、デザインしたマークが大手メーカーのパッケージデザインに似ていると指摘を受けて、大変な目にあった事を覚えています。最近では、オリンピックマークの問題もあり、知財に関する知識は、デザイナーであっても大切であると思っています。
デザイン保護委員会に入って、まだ1年ほどですが、その間に2回の内部勉強会に参加しました。今までの経験の中から、疑問に思っていたことを講師の先生方に気軽に質問できて、とても解りやすい勉強会です。
今回は、昨年の4月からスタートした、5つの新しい商標について、松井先生に解説して頂きました。デザイナー目線で、解りやすい内容にまとめて頂き、松井先生にはとても感謝しています。今後の仕事に役立てて行きたいと思っております。
以上vol.76_image013撮影:デザイン保護委員/山口哲雄


委員会ヒトコト通信

質問・意見交換が気軽にできる勉強会

デザイン保護委員会では、委員自身の知財に対する知識の吸収を目的として、委員会内部勉強会を、今号掲載レポートの勉強会と合わせて2回実施しました。これからも不定期になりますが継続していきます。次回からは、内部に留めず委員以外でも興味のある方に参加していただけるよう、テーマが決まりましたら協会メルマガ等でご案内します。また、テーマに対するご提案も随時受け付けます。協会事務局(欄外メールアドレス)までお気軽にご連絡ください。

引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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