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Vol.85 「警告書の対応&特許庁公報検索〈 J-PlatPat 〉セミナー速報」

Vol.63で、「他者の権利を侵害すると・・・」として、「ある日一枚の警告書が届いたら」をテーマに、制度の解説を中心にお届けしました。本号では同じ著者に、その続編として「不幸にして警告書を受け取った場合の最低限必要な検討事項と、その対処方針」についての解説をお願いし、簡潔にまとめていただきました。思わぬ事態に直面した時に、冷静に対処するための勘どころが押えられています。

活動報告は、「特許庁公報検索〈 J-PlatPat 〉を基本の手順から習得する」セミナーの速報です。
委員会ヒトコト通信は、「日本を包む」展の展示作品を、創作保全のため寄託したことの報告です。

(2016年11月29日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

◆このページに限らずVol.1〜これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。
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 情報発信

パッケージデザインの保護 ~それは1枚の警告書から始まった~

一般社団法人日本デザイン保護協会 専務理事 関口 剛

(以下は、平成28105日開催の「2016東京国際包装展」のパッケージデザインパビリオンにおいて行われたセミナーを再構成したものです。)

不幸にして警告書を受けた場合には、相手が法律に則って権利等(不競法を含む)を主張しているので、警告書を受けた側も法律に基づいて適切に対処することが求められます。デザインを保護する法律の概略程度は知っておくことが必要ですが、警告書が届いた場合に最低限必要な検討事項について簡単に説明致します。

 

まず、はじめに、警告書とは

警告書は、模倣により権利等を侵害されたと考える者が、その侵害の中止を求める書面です。内容的には、侵害の根拠となる権利等と侵害による不利益の中止と補償の要求が記載されています。例えば、「貴社が製造販売している包装用箱は、弊社の保有する意匠登録第○○○号に類似しているので、意匠法第23条に違反し、弊社意匠権を侵害しています。従って、貴社商品の製造販売行為の中止、在庫商品の廃棄、弊社の被った損害の賠償を求めます。」といった内容の書面です。

 

パッケージデザインを保護する法律と、各法律に適した活用方法・目的

パッケージデザインを保護する法律としては、産業財産権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)、著作権法、不正競争防止法(以下、不競法という)があります。各法律の目的が、それぞれ異なりますので、各法律に適した活用方法があります。

●特許法、実用新案法は技術的思想の創作と言われ、素材や製造方法などに関係します。
●意匠法は外観や模様、商標法はブランドです。
●著作権法は、キャラクターやイラストに関係します。
●不正競争防止法は、行為規制法ですので権利構成ではありませんが、競業秩序維持が目的とされています。
通称パッケージデザインと称されるデザインの保護は、主に意匠法と不競法が関係しています。

 

事実関係の確認

最初に、相手が主張している警告書の内容が事実なのかの確認が必要です。
製造販売の時期や数量、実際に模倣したものなのか否か等について、確認しておかなければなりません。
模倣の事実がなければ、産業財産権法以外の権利等では何ら問題ありません。ただし、それを客観的に証明する必要があります。
製造販売の時期や数量は、損害賠償金を払わなければならない事態になった場合に必要なデータとなります。
製造販売直後の警告書であって、わずかな数量しか販売していない段階ならば和解するということも選択肢の一つです。
しかしながら、理不尽な内容の警告書であれば、毅然とした態度で反論しなければなりません。このためには、警告書の内容が事実なのかどうかを確認しておくことがどうしても必要となります。

 

どんな法律に基づいた警告なのか

産業財産権に基づいた警告書の場合、模倣したものではなく独自に創作等したものである旨の反論は原則としてできません。
したがって、調査と証拠が必要ですが、類似していない旨の回答をすることになります。

なお、たとえ類似していたとしても先に実施していたという条件付きではありますが、継続して製造販売できる場合があります(先使用による通常実施権等については、特許法第79条、意匠法第29条、商標法第32条を参照)。当然、この条件に合致している旨の証拠が必要になります。

著作権法や不競法に基づいた警告書の場合、独自に創作したものである旨の反論が可能です。また、相手の商品等にはアクセスしていないまたは依拠していないことを示すことによって独自に創作したものであると反論することができます。ただし、客観的に証明する必要があります。

 

権利が有効に存続しているか

産業財産権の場合、相手の権利が有効に存在しているのか確認する必要があります。
産業財産権は、特許庁の審査を経て登録され、権利が発生しているのですが、審査の過程で何らかの瑕疵があることもあり得ます。その場合は、特許庁に無効審判を請求することができます。つまり、相手の権利を無効にすることができます。
商標権に基づく警告書の場合には、継続して3年以上その商標が使用されていないときは、その商標登録を取り消す審判を請求することもできます。
無効審判請求は、警告書を受け取った場合の対抗手段として、警告の根拠となっている権利を潰そうとしてよく活用されています。

また、特許庁に毎年登録料(年金と称される権利維持料)を払っているかどうかの確認も必要です。登録料を支払っていない場合は、権利存続期間内であっても権利が消滅します。
ただし、権利が消滅したと思っても、6月以内であれば割増料金を払えば存続(復活)させることができますので注意が必要です(特許法第112条、意匠法第44条、商標法第20条)。

著作権に基づいた警告書の場合は、著作権がいつ発生したのかの確認とともに、相手の創作物が著作物に該当するかどうかの確認が必要です。
創作物が工業製品である場合は著作物性がないとされていますので、この場合は、著作権がない旨の主張をすることができます。

また、不競法に基づく警告書の場合、相手の商品が広く知られているかどうか、著名な商品かどうかの吟味が必要です。広く知られていない場合には不正な競争ではない旨の反論が可能です。さらに、相手の商品が販売後3年以上経過している場合には、不正な競争には当たらない旨の主張ができます。

 

類似しているかどうか

商品等が相互に類似しているか否かも調査する必要があります。
産業財産権の場合の調査は、独立行政法人工業所有権情報・研修館のJ-PlatPatの活用をお勧め致します。調査作業は、主観的になりやすいので、客観性に注意する必要があります。
産業財産権の場合には、特許庁に類似しているかどうかの判定を請求することができます。この判定は、特許庁の類否に関する見解が表明されたものであり、客観性が高いとされ一定の効力はありますが、裁判時に採用されるかどうかはケースバイケースです。
また、弁理士に鑑定を求めることもできます。弁理士の鑑定は法律的には効力はありませんが、専門家の見解として裁判時に参酌される場合もあります。

 

総合的判断

警告書が届いている以上、相手は訴訟を提起しようと考えているので、上記のことを総合的に判断して回答書を作成するとともに、訴訟の準備を始めなければなりません。どのような客観的証拠を提出できるかなど様々な観点から検討し、場合によっては、和解も選択肢の一つとして考慮する必要があるかも知れません。
(以上)

 

 活動報告

「特許庁公報検索〈 J-PlatPat 〉を基本の手順から習得する」セミナー・実施速報

JPDAデザイン保護委員会が1114日(月)に実施しました、「各自が実習に必要なノートパソコン等を持ち込む、“体験型セミナー” 商標・意匠を自分で調べてみよう!」の速報をお届けします。
12月公開予定の次号では、参加者からお答えいただいたアンケートの集計結果を踏まえて委員会としてのセミナー実施のまとめを予定しています。

セミナー当日は、会場(DIC株式会社 本社2F 大会議室/東京都中央区日本橋 3-7-20)のビル1F正面玄関前に設置されたデジタルサイネージが参加者を迎えました。

(デジタルサイネージデザイン:委員/徳岡 健、会場写真撮影:委員/山口 哲雄)

講師は独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)知財情報部 小林佑二氏にご担当いただき、参加費無料の知財セミナーとして開催、参加申し込みについてはJPDA会員だけでなく、D-8(日本デザイン団体協議会)会員及び一般まで、JPDAHPから広くご案内しました。
参加申し込み者53名の内、キャンセル連絡が7名、結果として受講者46名で、およそ2時間のセミナーを実施することができました。

当日は以下の流れで講義・実習が進行しました。
1.意匠と商標の概要
2
.検索の流れのチャートの説明
3
.検索(1):実際の商品を検索対象として、分類等調査~スクリーニングを講師が実演
4.続いて、参加者と講師が同時に同じプロセスをトレースして確認
5.検索(2):提案デザインと位置付けた検索摸擬例を対象として検索実習
6.実習の解説
7
.質疑応答

受講者の検索実習がスムーズに進むかという、委員会が最も心配しました点は、山本典弘・清澤亮・三井直人の3名の弁理士の先生方に検索実習補助者として会場に詰めご対応いただき、大きな中断もなく実習を終了することができました。

講師:INPIT小林 佑二氏

検索実習風景

検索課題1)を検討する会場風景

講師と受講者

<委員会メンバーの声>
今回のセミナー実施にあたり、6月の委員会から検討を重ねてきました。現在、委員会は10名で構成しています。その中から4名のメンバーが、セミナーを終了して間もないこの時期の感想と意見を、それぞれの視点でまとめました。

“今回のセミナー体験から望むこと” 委員/川淵 満 
まず、弊社のデザイナーからのコメントをお伝えします。
2時間の体験型セミナーだったが、かなり難易度が高く、ほんの入り口を見たと言った程度の理解だった。セミナー受講者も首をかしげ、ついて行けない人が多くいたと思う。グーグル検索のように、もっと容易に検索できるシステムにならないのかと言う感想をもった。知財の検索は、仕事に係ることなので、もっと学んでいきたい。」

 私自身は、数年前の検索システムより、今回のJ-PlatPatのほうがわかりやすくなった感じはします。しかし、まだ複雑で時間が掛かり過ぎます。弊社デザイナーがコメントしたように、デザイン画をどこかに入れるだけで簡単に検索出来ればなと思いました。このような、体験型セミナーをもっと開催して、特許庁の方々にも、私たちがこんなにぎこちなく検索している様子を見て貰い、システムの改善に繋がればいいと思います。

“手を動かして学ぶデザイン保護” 委員/高林 めぐみ
年間2回の知財セミナーも回を重ねるごとに、参加者みなさんの意識の高さに引き上げられるように私自身も学ばせていただいています。
専門性の高い分野であるだけに専門用語でその先に進めなくなったり、商標・意匠どちらに関わる問題なのか、何を最重要と捉えて手を打つべきか、など、入口で戸惑う方もまだまだ多くいらっしゃると思います。
今回はまず「J-PlatPat」を知って「手を動かして使ってみる」。
今回ご参加の方々が職場に持ち帰って「J-PlatPat」を日常的に活用し、広めることがデザインに関わる方々の意識の向上と、デザインを保護することにつながっていくのだと思いました。最後まで自信を持ってプレゼンテーションするにはこういうツールも知っておくと安心だと思います。知財についてとっつきにくく思わずに、身近なこととして参加しやすいセミナーをこれからもご提案していきたいと思いました。

“今回の検索テーマを提案するに至った背景” 委員/斎藤 郁夫 
パッケージデザインに関わる側として日頃注意しなければいけないのが、出来上がったデザインが他社(他者)のデザインに似てしまっていないか、権利を侵害していないか、このまま世に出して法的問題が起きないかです。そのためには制作の過程で、商標や意匠などの先願の有無について常に意識しておく必要があります。
パッケージデザインと一言でいっても、その要素は「商品名」「キャッチコピー」「容器形状」「色」「モチーフやパターン」など多岐に渡ります。それに加え、販売する(または今後横展開するであろう)カテゴリー(清涼飲料、ヨーグルト、スープなど)によっても保護されている権利の範囲が変わってきます。
そのため、もれのないよう先願の有無を確認するには、さまざまな角度から検索してみる必要があります。
今回、J-PlatPatを使った検索実習をセミナーに取り上げるにあたり、限られた時間内に、大勢の皆さまに基本の手順を知っていただけるよう、あえて共通のゴール設定をし、講師の方の実演と同時進行で、実際にPCやタブレット端末を操作することで、「商標」や「分類コード」からの検索や、さまざまな検索キーを使ったスクリーニング手法などを体験していただこうと考えました。

“当日の検索実習補助をして” 委員/山本 典弘
今回、後ろの方で講師のサポートをさせて頂きました。普段も使っておられると思われる方から初めての方まで、思ったより進み具合が様々でした。また、MACの動作保証をしていないサイトのせいかフリーズがたまに生じていました。ただ、MACでサクサク使っている友人も多いですので、“原因不明”です(新しいバージョンのOSの方が、エラーが出易いという説もあります)。
また、講師も説明されていましたが、いつもネット検索で使われるブラウザの賢さに較べると、“ひょっとしたらこちらでは?”との気づかいもなく、入力そのままに冷たく(?)エラーを返してくる検索サイトです。

受講生の方々がつまずかれた点として、
①半角、全角、全角カナなど検索項目(意匠分類、出願人会社名など)で入力形式が統一されていない点、
②商標の検索で「称呼(しょうこ)」でも「2.商標出願・登録情報」と「3.称呼検索」で入力形式が違っている点、が多かったように感じました。逆に、このへんに慣れて頂ければ、情報収集ツールとして役に立つと思います。今回は、検索サイトでデータベースに触って頂いたという状況かと思います。検索手順に正解は無いですので、どんどん使ってみてください。
※「称呼(しょうこ)」とは、商標の「読み方」「呼ばれ方」のことです。

<マニュアルとガイドブック>
参加者には講義テキストとは別に、セミナー受講後に参考書として使用いただけるINPIT作成のマニュアルとガイドブックをお持ち帰りいただきました。

<会場のご提供に対して>
末尾になりましたがDIC株式会社様には会場のご提供をいただき、ご担当者様には今回のような内容のセミナーに対して細やかにご対応いただけましたことに感謝いたします。
(速報まとめ、文:委員長/丸山 和子)

 

委員会ヒトコト通信

「日本を包む」展の展示作品を、創作保全のため寄託しました

下記の展覧会に出品された112名のパッケージデザイナーが表現した創作物を、創作保全のために、「一般社団法人日本デザイン保護協会の寄託制度」を利用して、2016913日に<カタログ寄託>をしました。
このことによって、①カタログの名称、②カタログの発行者、③2016913日にカタログが公開されていたことが証明できます。

「日本を包む」展
主 催:公益社団法人 日本パッケージデザイン協会 JPDA展覧会委員会
東京展:2016. 9.14-9.26 渋谷ヒカリエ8/CUBE 渋谷区渋谷2-21-1
大阪展:2016. 12.26-2017. 1.11 BREEZE BREEZE (ブリーゼブリーゼ) 大阪市北区梅田2-4-9

カタログ寄託をした後に意匠出願をする場合でも、公開から6カ月以内であれば新規性喪失の例外規定の適用を受け出願することができます。(申請により、公知日証明書が発行されます。)
寄託のカタログは、特許庁へ審査資料として提供されますので、寄託・公開後に他人がした意匠登録出願に係る意匠(カタログ掲載の製品デザインと同一または類似の意匠等)の権利化を防止することができます。
●カタログ寄託申請者は「公益社団法人 日本パッケージデザイン協会」(申請担当部署は「JPDAデザイン保護委員会」)となります。証明書が必要な場合は、まず、JPDA事務局にお問い合わせください。

引き続きご意見、ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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