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Vol.92「侵害事例から知財を学ぶ」セミナー実施報告

デザイン保護委員会では、知財の基礎的な知識を学ぶセミナーの実施を重ねてきましたが、デザイン制作者側からの「他者を侵害しないための具体的な知識を得たい」との要望に応えて、デザイン実務に役立つ、実践的な講義内容のセミナーを6月1日に開催しました。

講義では、知財法の基礎として侵害事件に向かい合うための適切な法律は何かを学び、実際の侵害事例から、その法律との関係が具体的に解説され、侵害の有無が、それぞれの場合に、どのように判断されたのかを、ポイントを押さえて解りやすく話されました。続いて、複数の登録意匠、登録商標を見ながら、侵害事件に発展させないための対策が紹介されました。

また、今回のセミナーで特筆すべきことは、申し込みいただいた方の割合です。会員に対して非会員(一般)からの申し込みが全体の23%にも及びました。デザインと知的財産権の関わりについての知識を、JPDA内に留めず、広く一般の方々と共有することが「真のデザイン保護」につながるとの思いで活動している私たちにとってうれしい数字でした。JIDA、JJDA(※注)からのご参加もあり、デザイン他団体とのつながりで、デザイン保護意識の連携が、このような機会で広がっていくことは願ってもないことです。

当初の予定枠を拡大変更してお迎えした大勢の参加者の皆様、セミナー目的に合わせて講義を組み立ててくださいました講師の松井弁理士、快適な環境を提供いただいたDIC株式会社様、設備・機材面でのサポートのため長時間のお付き合いを頂きましたDICご担当者様のおかげで、盛況のうちに終了することができましたことを、ここで改めて感謝いたします。

(※注)JIDA(公社日本インダストリアルデザイナー協会)、
JJDA(公社日本ジュエリーデザイナー協会)

(2017年6月30日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

◆このページに限らずVol.1〜これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。
無断転用はお断りいたします。引用の場合は引用部分を明確にし、出所の明示をお願いいたします。

 情報発信&活動報告 “だいじょうぶかな?!の前に。「侵害事例から学ぶ知財のいろいろ」”
6月1日知財セミナー 実施報告:JPDAデザイン保護委員会

日 程:6月1日(木)18:00受付開始 18:30開講 20:30終了
講 師:松井宏記弁理士 レクシア特許法律事務所 代表パートナー
会 場:DIC株式会社 本社2F 大会議室 (東京都中央区日本橋 3-7-20 )
参加者:84名(会員57名、非会員17名、デザイン保護委員9名、及び関係者1名)

・案内パネル(デザイン:デザイン保護委員会委員/徳岡健)
・会場風景撮影:デザイン保護委員会委員/徳岡健、高林めぐみ

―知的財産権を護るには、護りたい目的に合わせた法律を知ることが重要―

<松井講師作成6月1日セミナーテキストより転載>



講義では、パッケージデザインに関係の深い知的財産権として、まず、「デザインを護る意匠権」、「ブランドを護る商標権」を取り上げ、侵害事例について、原告と被告側がどのような報告で主張し、戦ったのかが具体的に解説されました。


意匠権では、特に関連意匠での確実な権利の取り方によって侵害を避けることができるとして、本意匠と、それを取り囲む関連意匠の組み合わせ方について多くの事例紹介があり、実際の事件を次々、比較して検討され、各事例の意匠の要部が護られている出願テクニックが示されました。
商標権では、「デザインとブランドのリンク」、「立体商標」、「新しいタイプの商標」等の侵害についてと、権利としての価値の置き方で注目すべき要素の扱い方が、ここでも多くの事例として紹介されました。
また、不正競争防止法での護り方もあることが、原告商品と被告商品の対比で説明されました。



<司会の山口委員からセミナー開始の案内>
<加藤理事長 挨拶>
<松井講師 挨拶>
<講義風景:日本の意匠制度の特徴>
<講義風景:侵害事例/パッケージ意匠より>
<講義風景:侵害事例/Graphical User Interfaceより>
<講義風景:侵害事例/シュリンク包装用
フィルム材の意匠>

・講義には、JPDAデザイン保護ハンドブック(※)も併用されました。
(※詳細は本レポートページVol.64をご覧ください。)
http://www.jpda.or.jp/rights_protection/vol-64/



■JPDAデザイン保護委員会セミナーに参加して
 JPDA(公社)日本パッケージデザイン協会理事長  加藤芳夫


-知財を学び新しいクリエイションにつなげる-   
普段は気がつかない、空気のような存在。それが知財です。新しいモノを創り出すクリエイターにとって、法律問題はとてもややこしそうで、遠い存在にしておきたいと思いがちです。自分の仕事で、目の前の問題が立ち上がってきたとき、それが知財トラブルであったとき、初めて後悔するのです。「しまった!もっと早く知っておけば、こんなことにならなかったのに!!」と。

僕も昔、知財事故を起こしたことがあります。当時、昔の図柄だったら意匠権はないだろうと、たかをくくり安易に進めてしまったのです。パッケージデザインはポスターなどと違って、中味の入った商品です。販売差し止め請求をされ、製品を回収ということになれば、大変な損失になります。小さな図柄ひとつで全部だめになってしまう!!ということもあるのです。

また、こうした商標、意匠の知財権などは、一度学んだら大丈夫だと思いがちですが、世界動向、社会の変化と同じように、法律も年々変更がなされています。立体商標、色彩商標、位置商標、音の商標、動きの商標など、思ってもみないような知財権の変化も出てきています。 私たちJPDAは、個人と法人からなるデザイン団体です。この知財の世界のなかでは、微妙に異なる立場にもなりますが、両者の立場をこえ、パッケージデザイン価値の基盤としての、知的財産権を学ぶことが大切です。

さまざまな関係性をあきらかにする考え方は、デザイン創造性の重要な知恵となります。社会とクリエイションの関係性を、知財の視点で考え学ぶということは、アイデアを出し、新しく価値創出する大きなクリエイティブにつながる仕事にもなるのです。



■今回のセミナーについて

JPDAデザイン保護委員会担当理事  小川亮

デザイン保護委員会主催により、レクシア特許法律事務所の松井代表パートナーと、DIC株式会社様のご協力をいただきまして、「侵害事例から学ぶ知財のいろいろ」をテーマにしたセミナーを開催しました。

締め切りの2週間前には、既に70人近い応募があり、多くの方の関心の高さを感じました。当日は、申し込まれて参加された加藤理事長のご挨拶からはじまり、わかりやすい事例満載の先生のお話に、あっという間の90分でした。渡邊事務局長や桑理事、佐野理事のご参加もあり、JPDAとしても力のこもったセミナーになりました。
ご参加された多くの方にとって、日々の仕事に生かせる気づきがあったのではないでしょうか。

当日は20分の質疑応答の時間が設けられましたが、次々と質問がよせられ、時間いっぱい質疑応答が活発に行われました。参加された方にとって興味深く、わかりやすい内容だったのではないでしょうか。
会場の提供をいただきましたDIC株式会社様、講義をご担当くださいました松井先生、丸山委員長はじめ委員の皆さま、本当にありがとうございました。



■進行・司会を担当して

JPDAデザイン保護委員会委員  山口哲雄

今回も大勢の皆さんがセミナーにご参加くださり、業種としてはデザイン会社・メーカーでほとんどを占め、職能がデザイナー系でとびぬけて、経験では、キャリア10年以上の参加が多かったことは、やはり意匠権・商標権について、知りたい・学びたいという意識が職業柄強いのだと理解しました。

講師のスライド実例と滑舌の良い説明とが、とてもわかりやすく講義内容が充実していたと思います。質問時間では、質問者はかなり突っ込んだ質問をされ、やはり知財セミナーを継続することで皆さんの質問内容も、的を射て来ているなあと思いました。

ただ、「どうやったら似ないように、または訴えられないように出来ますか?」は、相手任せでなく、最新の知財周辺の知識・情報を積極的に受け入れ、類似問題に関する詳しい内容を自分自身が習得して行かなければ、望むようなアドバイスを受けることは出来ないように感じています。

今回の質問の内容から見て、セミナー候補としては、例えば、アイデア段階の具体的なスケッチ数点で類似判定を行うのも有りかと思いますが、デザインの新規性や法的根拠の主張が出来る人たちの出席があると、より効果的なセミナーになりそうです。

デザイン会社所属のデザイナーからの質問にありました、メーカーとデザイン事務所との制作におけるオリジナルデザインの著作権・意匠権・商標権等の権利と責任の問題は、まだまだ請負業務としての、出す側有利の暗黙の取り決めが多いと思われます。制作イコール買取り、さらに第三者から訴訟が起こされた場合の責任と賠償に於ける立場など、どう見ても平等に権利と責任の話し合いの上の契約書になっていない現実、法務部など賠償責任でデザイン会社などが潰れること承知の契約の現状。デザイン会社に法務部などないのです。先進国で下請けに対する見解の最も遅れている日本の現状。「国家とし加工業でなく急いで知財立国にならなければ」で、すでに30年経ちました。デザインが関わるビジネスに対する保護・権利の確立は、デザイン団体としても、時間がかかるけれども向き合っていかなければならないことです。



■アンケート集計報告

74名の参加者から、アンケート用紙57枚が回収できました。これまでの当委員会のセミナーアンケートの回収率は100%に近いものでしたので残念な数字ではありますが、セミナーが遅い時間での設定で、速やかな退室・退館が必要だったこと、また、終了まで質疑応答が続いたためアンケートにご記入いただく時間が、改めては取れなかったことが原因であれば、これからの工夫が必要なことがわかりました。 以下が集計結果となります。



Q1-1 あなたの仕事、役割などについてお聞きします。【業種】(複数回答可)


Q1-2 あなたの仕事、役割などについてお聞きします。【職能】(複数回答可)


Q1-3 あなたの仕事、役割などについてお聞きします。【経験】

Q2 「侵害事例から学ぶ知財のいろいろ」の講義内容はいかがでしたでしょうか。


Q3 日頃の業務で、提案デザインに対して、知財関係で大丈夫かな?!と思われたことはありますか。


Q4 「あります」と答えた方にお聞きします。その時の対応はいかがでしたか。


Q5 ご自身又は周囲で、デザイン知財トラブルが起こった、
あるいは起こりそうになったことがありますか。



Q6 「はい」と答えた方にお聞きします。以下のどの分野に関係しましたか。(複数回答可)


■当日の質問から

講義終了後の質疑応答では、積極的に手を上げていただけ、次のような質問がありました。



質問1.意匠出願は白黒の図面が望ましいとの説明がありましたが、事例では白黒でないものが紹介されていました。カラー図面で登録出願した理由は?

質問2.関連意匠で出願する場合、重要と思われるデザインが複数あった場合、全部は出願できないので、優先順位を決める方法は?

質問3.企業の知財として護りたいものとして、法務部門とデザイン部門とで違いがあるように感じている。創作性を護るためのデザイナーとしての向かい合い方は?

質問4.画面の意匠権では縦横比が評価されると聞いているが、どういうことか?

質問5.(講義での具体例を示して)このような場合、それぞれ本意匠として独立して出願するか、あるいは関連意匠とする方が良いのかは、どう判断するのか?

質問6.関連する意匠が複数ある場合、どれを本意匠にするか?

質問7.部署に届け出る前に調査依頼のスケジュールが取れない場合、事故に合わないために安全性を自分でチェックするにはどうしたら良いか?

質問8.メーカーに提案をしたデザインを利用した製品が他社の権利を侵していた場合、デザイン提案会社の責任はどうなるのか?
(以上)

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