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Vol.97「続・意匠の類否判断<対象を見つける検索の手法>」

前号では、類似するかもしれないとして検出した登録意匠(先行意匠)との類否判断の手法を<対比する形を言葉にしてみる>とした解説でお届けしました。 本稿では、同じ著者に、類否判断の対比対象とした「先行意匠」をJ-PlatPatを使って見つける検索手法を、「効率よく、更に見落とすことの無いように」との視点で、前号の知識を踏まえ基本のポイントを押さえた簡潔なルートを教えていただきます。
著者のナビゲートで、J-PlatPatを探検し、目標に迫る醍醐味を味わっていただけましたら幸いです。

(2017年11月15日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山和子)

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情報発信

特許庁公報検索/登録意匠調査の検索手法
青木覚史 弁理士 特許業務法人三枝国際特許事務所

前号のVol.96(※)では、実際の審決例を題材に、<意匠調査で検出された先行登録意匠との類否判断>について解説しました。本稿では、類否判断の対比対象として該当する「登録意匠」をJ-PlatPatを使って見つけていきます。
(※)Vol.96「意匠の類否判断<形を言葉で表現してみよう>」
http://www.jpda.or.jp/rights_protection/vol-96

なお、ここでは、引用意匠を見つけることにポイントを絞り、簡単な説明とさせていただきますが、意匠調査の手法は、以下に詳しくまとめられています。

・Vo.94「J-PlatPat検索の手引き(その1)基本」
http://www.jpda.or.jp/rights_protection/vol-94
・Vo.95「J-PlatPat検索の手引き(その2)一般的な手順」
http://www.jpda.or.jp/rights_protection/vol-95

<意匠調査の検索手法>
J-PlatPatの意匠検索ツールには、「意匠公報テキスト検索」と「日本意匠分類・Dターム検索」があります。以下、それぞれの特徴を簡単に説明します。

1. 意匠公報テキスト検索

「意匠公報テキスト検索」は、「意匠に係る物品」「登録日」「出願人/権利者」などの検索項目を選択し、検索したいキーワードを入力して使用します。

キーワードを入力するだけで検索できるため、例えば最近の登録意匠をチェックしたり、ある特定の権利者の登録意匠をチェックする場合には非常に便利です。 一方、本稿のように、類似の先行登録意匠の有無を調査するには、やや不十分な面があります。

というのも、この「意匠公報テキスト検索」では、検索するキーワードと「完全同一(部分一致を含む)」に係る先行登録意匠しか検出されません。 例えば、意匠に係る物品「包装用容器」で検索すると、「包装用容器」「菓子包装用容器」「包装用容器の蓋」等は検出されるものの、「包装容器」「包装用瓶」「包装用缶」等は検出されません。

このように、「意匠公報テキスト検索」は、実質的には同じ物品であっても、表記が少し異なる先行登録意匠について、調査漏れが生じる可能性があります。
したがって、先行登録意匠の有無を調査する場合には、以下の「日本意匠分類・Dターム検索」による検索をおすすめします。

また、「包装用容器」で検索すると、上の図のとおり、検索結果が2万件を越えてしますが、この2万件の中には、食品盛り付け用の「包装用容器」や化粧品クリーム用の「包装用容器」等、ありとあらゆる包装用容器が含まれますので、効率良く調査をするという観点からも、次の「日本意匠分類・Dターム検索」がおすすめです。

2. 日本意匠分類・Dターム検索

(1)日本意匠分類の確認
収録されている先行登録意匠には、それぞれの物品の性質と大まかな形状に応じて、「日本意匠分類」が付与されています。パッケージ関連の意匠は「F4」で始まり、中でも、本件のように「円柱状で細めの口部が突出している包装用容器」は「F4-731」に属します。

「日本意匠分類」を確認する方法はいくつかありますが、以下の手順がおすすめです。
①「意匠公報テキスト検索」で、直近に登録された「包装用容器」の意匠を検索する
②調査対象意匠と大まかに形状が共通する登録意匠を広めにピックアップし、その「日本意匠分類」を確認する

以下で具体的に見ていきます。
①まず、先程の「意匠公報テキスト検索」を使って、直近に登録された「包装用容器」の意匠を検索します。
例えば2017年1月1日から現在までの登録意匠を検索する場合は、「検索キーワード」に「20170101:」を入力します。

②次に、調査対象意匠と大まかに形状が共通する登録意匠を広めにピックアップし、その「日本意匠分類」を確認します。
本件では、「口部が突出した円柱状の包装用容器」をピックアップします。


例えば、上記「一覧表示」をクリックすると、1ページ目の下方に以下の登録意匠が掲載されています。 赤枠の登録意匠はすべて「口部が突出した円柱状の包装用容器」です。

実際に左上の登録第1587508号をクリックすると、「日本意匠分類」が「F4-731」であるとわかります。

1,000件程度であれば、確認にそれほど時間はかかりませんので、円柱状でないものについても、要素が共通するものがあれば、その「日本意匠分類」を確認しておいてください。
なお、筆者が先行登録意匠の調査を行う際には、上記方法によって「意匠分類」に目星をつけ、さらに「分類表」や「定義カード」で漏れがないかを確認し、広めに調査するようにしています。 例えば、四角柱状の包装容器であっても、容器表面の形状や模様に新規な特徴があれば、意匠の骨組みを越えて類似になる場合があるからです。

とはいえ、意匠の基本的構成態様(骨組み)が変われば、原則非類似ですので、まずはメインの分類を見つけ、その部分についてしっかりと調査できれば十分と考えます。

(2)件数の絞り込み
さて、対象意匠の日本意匠分類が確認できたところで、次は実際に「日本意匠分類・Dターム検索」を使用してみます。

まず、検索式に「F4731」(ハイフン無し)を入力します。すると、2,732件ヒットしました(2017年10月10日現在)。
システム上、1,000件を超えると検索結果が表示されませんので、2,732件を登録日等で区切って分割して見ていく必要があります。

◆本件では、検索する文献の登録日を以下の3つのグループに分けて絞り込みそれぞれ1、000件以内に収めました。
・1回目:登録日「20140101~」(2014年1月1日以降)
・2回目:登録日「20110101~20140101」(2011年1月1日から2014年1月1日まで)
・3回目:登録日「~20110101」(2011年1月1日以前)

上の画面は1回目(登録日「20140101~」)の検索結果です。一覧表示ボタンをクリックし、902件の登録意匠を順に見ていきます。

先行登録意匠をチェックする際は、調査対象となる意匠のおおまかな構成態様に加え、特徴となりそうな部分に着目しながら、チェックしていきます。本件では、以下の2点を目安に先行登録意匠を見ていけば足りると考えます。
a.肩部に台形状の凹部を有する点
b.胴部が複数の環状溝によって区切られている点

この段階では、どの部分がありふれた態様で、どの部分が新規な態様かが必ずしも明確でないので、細かな類否は検討せずに、広めにピックアップします。
同じ要領で、2回目、3回目も検索結果を確認していきます。

◆3回目で引用商標(登録第1275283号)が見つかりました。

ちなみに、左右の登録意匠も、同じ権利者の登録意匠です。これらはすべて、本意匠(登録第1274633号)の関連意匠として登録されています。
審査では、本意匠を含む4つの登録意匠のうち、本願意匠に最も類似する意匠として、本件引用意匠が選ばれていますが、環状溝の本数、肩部に占める台形状凹部の大きさなどが総合的に考慮され、本願意匠に最も近い意匠と判断されたものと思われます。

既に引用意匠にたどり着きましたが、「日本意匠分類・Dターム検索」で、もう一つ知っておいていただきたいことがありますので、もう少しだけお付き合いください。

(3)現行分類と旧分類
先程3回に分けて「F7431」に属する先行登録意匠を確認しましたが、「F7431」は「現行分類」と呼ばれるもので、出願日が2005年以降の登録意匠に付されています。
つまり、「現行分類」では出願日が2004年以前の登録意匠を調査できず、2004年以前のものについては別途「旧分類」で調査する必要があります。

以下にその手順を説明します。

まず、先程と同じように、分類指定を「現行分類・Dターム」のままにしておき、検索式に「F4731」を入力した状態で、以下の変換ボタンをクリックします。すると、現行分類が旧分類に変換されてあらわれます。

「検索ボタン」をクリックし、検索結果を表示します。
5,000件以上を見ていくのは少し大変なので絞り込みが必要かと思います。
なお、1,000件以下への絞り込みの方法は先程の手順と同様です。

旧分類で件数を絞り込む場合には「調査日から15年遡る」が一つの目安になります。

2017年10月10日現在、権利存続中の可能性がある登録意匠の中で最も古い登録意匠は、(実際に存在するかはさておき)登録日が2002年10月10日のものです。
2007年3月31日以前に出願された登録意匠の存続期間は「登録日から15年」です。
つまり、自社の製品が他人の意匠権侵害に当たらないかどうかを確認するための調査(いわゆる侵害調査)であれば、調査日から15年前の2002年分まで遡って調査すればよいので、これが一つの区切りになります。

ちなみに、2002年10月10日まで遡って調査したい場合は、以下のように入力します。

検索結果が1,000件以内なので、一覧表示をクリックして結果を確認します。

3. 意匠公報だけの検索で事足りるのか

最後に、先行登録意匠ではカバーできない部分についてお話させていただき、本稿の締めとさせていただきます。
筆者自身、「意匠登録出願をしたいので、登録可能か調査してほしい」といったご依頼をいただくことがあります。具体的には、出願前の「公知意匠」を調べる作業になりますが、この「公知意匠」には、これまでに見てきた意匠公報上の登録意匠のみならず、外国の意匠公報、国内外の特許公報、国内外の刊行物、カタログ、ウェブサイト等、「公に閲覧可能な、ありとあらゆる意匠」が含まれます。

これらを網羅することは事実上不可能であり、登録意匠以外の公知意匠については、残念ながら、「出願してみなければ分からない面がある」とお答えしなければならないのが心苦しいところです。
とはいえ、出願前に登録意匠を確認することで、少なくとも類似する先行登録意匠の有無は確認でき、また、その分野における傾向(どの部分がありふれた態様で、どの部分が需要者の注意を惹くところなのか等)をある程度掴むことができ、それに応じて、部分意匠、関連意匠等の戦略的な出願も検討できます。
様々なシチュエーションに応じて、J-PlatPatを積極的に活用していただけると幸いです。
(以上)

活動報告

D-8(デザイン8団体協議会)デザイン保護研究会 今年度第1回参加

2017年度第1回 D-8(デザイン8団体協議会)デザイン保護研究会が、10月12日(木)18:30~20:00、株式会社中川ケミカル CSデザインセンター 5F会議室に於いて開催されました。 今期(2017年度~2018年度)の幹事団体は、(SDA)公社日本サインデザイン協会となり、今年度の初回である10/12研究会は、各団体のD8デザイン保護研究会担当委員10名の参加により、8団体が揃ってのスタートとなりました。 継続しての参加委員と、今回からの新規委員との顔合わせのため自己紹介があり、各団体の担当部署が確認されました。以下に当日の参加状況を記載します。

・(一社)日本空間デザイン協会 DSA より1名。
・(公社)日本インダストリアルデザイナー協会 JIDA より1名。
・(公社)日本グラフィックデザイナー協会 JAGDA より1名。
・(公社)日本ジュエリーデザイナー協会 JJDA より2名。
・(公社)日本クラフトデザイン協会 JCDA より2名。
・(公社)日本パッケージデザイン協会 JPDA より1名。
・(公社)日本インテリアデザイナー協会 JID より1名。
・(公社)日本サインデザイン協会 SDA より1名。

<議事概要>
司会進行は、幹事団体SDAの指名を受け、前期委員長のJIDA委員が担当、前期からの継続委員が少ないため、これまでの活動についての報告と説明がされた。続けて今年度の活動について意見交換がなされ、活動方向については今回出された意見も含めて次回、新しい委員長のもとで検討することになった。新委員長の決定は次回に繰り延べられた。

<次回日程と予定会場>
12月6日(水)18:30~20:30
株式会社中川ケミカル CSデザインセンター5階会議室

(以上報告/JPDA丸山)

記事へのご質問・ご意見・ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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